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▼ おめでとうマッチさん

※子供主

まるで迷路のような廃墟の街の中を、所々破けた靴を履いた足で歩く。転けないように気を付けながらキョロキョロと辺りを見渡すけど、探しものは見つからない。たまたま見かけた友達に尋ねても、欲しい情報は得られなくて。一体何処にいるんだろう。


一年前、私は此処ネルグに住み着くようになった。その原因は全てを失ったから。簡単に言えば両親に借金のかたとして売られたのだ。知らないおじさん達に足蹴にされパシりにされ、当然私は嫌になって逃げ出した。でも子供の足じゃ逃げられるはずもなく、あっという間に捕まってしまった。それでもどうにかして逃げたくて暴れたら、思いっきりお腹を蹴られた。もう抵抗する力なんてなくて、痛くて嫌で泣くことしかできなかった。嫌だ、もう止めてよ、私を自由にして。これからのことを考えて、恐怖で震えが止まらなかった。

そんな時だった。
私を捕まえた男の人が、突然倒れた。


「おいガキ、大丈夫か?」


そして傷だらけの知らない男の人が、私の前に現れた。
それがマッチさんとの出会いだった。


右も左も分からない私を、マッチさん達は優しく教えてくれた。そして友達ができて、私はやっと安心して生きていけるようになった。スラムでの生活だから、裕福ではないし危険もあるけど、マッチさん達がご飯をくれたり守ってくれたりしてくれるから、全然怖くなんてない。だからこうして一人で街を歩けるんだ。

と、ちらりと金色が視界に入った。

「何走ってんだー、名前」
「マッチさん!」

やっと探しものが見つかった。手にある物を後ろに隠しながらマッチさんの方へかけていく。グルメヤクザの副組長なんて肩書きを持っているけれど、彼は私達にはとても優しい。薄く笑みを浮かべながら、視線を私に合わせるためにしゃがんでくれた。

「なんかあったのか?」
「ううん、マッチさんを探してたの」
「オレ?何か用か?」
「うん」

隠していた花の冠を、マッチさんの頭に乗せる。

「はい、プレゼント」

そう言うと、マッチさんは何度も瞬きをして、それから理解したようで頭をかこうとして、冠があるのに気付いて手を止めた。代わりに眉間にその手を持っていき、吐き出すように言った。

「…シンか?」
「ううん、ラムさん」
「くっそ、ラムの奴め…」
「マッチさんに何かお礼したいって言ったら、教えてくれたの」


−なら明日、祝いの言葉でも言ってやれ。あの人の誕生日なんだ


「誕生日おめでとう、マッチさん」

こんなものしかあげられなくてごめんなさい。そう言ったら頭をがしがしと撫でられた。


「こんなものじゃねーだろ。ありがとな」


微笑むマッチさんを見て、何だか私がプレゼントを貰った気分になった。

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夢主の年齢は15とかそこら辺かと。

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