14日目


「過労だそうです。熱はもう下がりましたけど、念のため明日まで入院してください」


わかりました、と返事をしたら、看護婦さんは退出した。一人になって、更に気持ちが落ち込む。ゼブラさんに、迷惑をかけてしまった。私が無茶をしたのがわるいんだけども、ゼブラさんはきっと自分のせいだと思っているのかもしれない。いやいや、怒っているはずだ。結局私は監視としての役目を果たせずに、こうして病院のベッドの上にいるのだから。ゼブラさんに、どんな顔をして会えばいいのか。そもそも会ってもらえるのか。あれだけ自分勝手なことを言ったんだ。
嫌われて当然なんだ。




「あー…もうなんかなー」

「おいうるう大丈夫かっ!!?」

「っきゃああぁっ!?と、トリコさん!?」



ビックリしたー!いきなり扉を壊さんばかりに開けるんだから…って違う、そこじゃない



「トリコさん、此処病院ですから静かにしてください」

「ゼブラのやつからお前がぶっ倒れたって聞いてよー、でも無事そうだな!」

「だからトリコさん、声、声っ」


悪い悪いと全然悪びれた様子を見せないトリコさんに思わず溜息。溜息すると幸せが逃げるぞ、というトリコさんはお見舞い品としてキューティクルベリーを手渡してきた。サニーさんが好きそうだな、と思わず考えてしまう。そういえば最近会ってないな。まあゼブラさんと会おうとしてくれないからしょうがないんだけども


「んで、何で倒れたんだよ。まさか貧血じゃねーよな?」

「いえ、熱とその…過労が原因だそうです」

「へえー。やっぱゼブラについていくのは大変だったか」



ヒヤ リ
心臓にナイフの先をあてられているような感じがした



「そ、そんな訳じゃないですよ、ただちょっと私が無茶しちゃって」

「いいんだって。オレ等ですらたまについていけねーときもあるし…」

「……ぅ」

「だからと言って、倒れるほどの疲労は見逃せませんね」

「えっ…え、えええあ、」

「…あー、レイ所長」



何時の間に入ってきたんですか!?
そう喉から飛び出てきそうになったけど、どうにかして抑えた。病室で大声なんて非常識だ。まったく気付かなかった!トリコさんの方は、気付いてはいたけど特に反応していなかっただけのようだ。嗅覚凄いからな、トリコさん。でもどうしてレイ所長がいるのかが分からない。私は特にレイ所長と関わったことがない。IGOの人でならマンサム所長が一番長く私といた。だから、お見舞いならてっきりマンサム所長が来てくれるのかと思ったのに。


「ああ、私はただ報告しにきただけですのでお気になさらずに。お二人の邪魔をする気はありません」

「?邪魔って一体何の」

「わあああっ!そ、それより報告ってなんだよ」

「トリコさん、だから此処病院ですってば」

「しかも過労で倒れた人の目の前ですよ。貴方悪化させたいんですか」

「……悪い」

「あ、いえ、気を付けてさえくれればいいですよ」

「うるうさん」

「は、はい」

「今までゼブラの監視員として働いてくださり有難うございます」



、え?



「もう少しで条件を満たします…指名手配犯を半殺しに、というのはまぁ大目に見て、もうゼブラは監視しなくても大丈夫でしょう」



問題は起こしていないようですしね、と言うレイ所長の声が、どこか遠くから聞こえてくるような気がした。視界には何も映ってこない。だって、つまりそれって





「貴女の役目は終わりました。退院してからは、以前の生活に戻ってください」




「……………は、い」



私にとって、それは死刑宣告にも似た言葉だった。