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▼ ゼブラとお正月(連載主)

まだ眠い顔を擦り大きめのスリッパを履いて扉を開けて外へと飛び出した。其処等に生えている植物が朝露で濡れ。キラキラと輝く様に目を細める。東の山から顔を覗かす初日の出が足元を照らしてくれる。いつもよりも綺麗だと思うのは気のせいだろうか。吐いた息は白く色付き、空へと溶けていく。
普段は空っぽのポストを覗き込めば、幾つもの葉書が入っていた。それらを適当に束にして取り出し、足早に元来た道を引き返す。

「ゼブラさん、年賀状沢山きてますよっ」

それとスリッパをお借りしたことを、ソファに腰を下ろした大きな背中に伝える。返事には期待していなかったが。予想通りもごもごと咀嚼する音しか聞こえてこなかった。
机の上に並べた特性巨大御節は、既に半分程食いつくされていた。美味しくないものはまずいと食べない彼がこうもガツガツと食べているということは、お気に召したということだろう。頬がだらしなく緩みそうになるのを慌てて引き締める。調子に乗っては駄目だ、私の料理の腕はまだまだなのだから。
寝起きだからか食欲はそれほど湧かない。それに、御節は彼に全て食べてもらいたい。彼の横に腰を下ろし、手にした年賀状に視線を向ける。宛名の多くは「ゼブラ、うるう」と一括りにされていて、何だか少しくすぐったい。
トリコさんの年賀状は、この間ハントに行った時の写真なのだろう、小松さんと二人でこんがりと焼かれた肉を手にし満面の笑みを浮かべていた。涎が滝のように流れている点を除けば、素敵なんだけれど。「今年もよろしくな!」と簡潔に書かれたメッセージがなんとも彼らしい。
ココさんの年賀状は、サルが彫られた芋判子だった。丁寧に彫り込まれていて、彼の器用さを改めて知る。「今年もよろしくね。暇な時に遊びにおいで」と丁寧な字で書かれているのを見て、兄がいたらこんな感じなのだろうかとぼんやりと考えた。
サニーさんの年賀状はリンちゃんと共同制作なようで、何だろうか、不協和音というか、互いの個性が喧嘩しているというか…詳しく言うのは止めよう。悪口は言いたくない。
他にもIGO関係から、ラブ所長や節乃さんといろんな人からも年賀状がきていた。一つだけ、あまりにも字が汚くて読めない年賀状があったけれど、これは一体誰が書いたんだろう。確認しようにも送り主の名前すら読めないのだからしょうがない。ココさんに見てもらえば、送り主が誰なのか特定できないだろうか。
そう考えながら最後の年賀状を手に取る。筆で書かれた達筆な字に感嘆の息を洩らす。こんな年賀状をくれる方なんていたかな、と宛名を見て仰天する。

「ぜっ、ゼブラさんゼブラさんっ!」
「あ?何だよ」
「一龍会長から年賀状来てますよ!」

食事を中断されて嫌そうな声を上げるゼブラさんに、一龍と書かれた裏面を見せると興味を持ったのかそれを手にとる。

「親父がこんなもんをなぁ…」
「会長は字が綺麗なんですね。羨ましいです」
「……おい、名前」
「?はい」
「これなんて書いてあるんだ」

ああ、書き崩してあるせいで読めないのか。横から葉書を覗き込むと、油が所々に滲んでいた。
…そう言えば、彼は食事中だった。せめて手をタオルで拭かせてから渡せばよかった。少し後悔しつつ、文章を読んでいく。

「えーっと…」
「どうした」
「…読めません」
「ああ?嘘ついてんじゃねぇぞ」
「むっ無理です、私には読めませんん!!」



(今年も二人で仲睦まじく暮らしなさいよ)
……
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