ログ2 | ナノ
▼ トミーに抱きつかれる

前方に見慣れた、小柄な後ろ姿を発見。どうやらボクには気付いてないようだ。ちょっとイタズラがしたくなって、こっそりと素早く距離を詰める。手を伸ばせば届くくらいに近付いても、まだ気付かない。…チャーンス!
 
「名前──っ♪」
 
名前の全部をすっぽり覆うように飛び付くと、高くて短い悲鳴があがった。初だなぁ、カワイイ。反射的に振り払おうと体を捻ってくるケド、そんなの無駄な抵抗。首に回した腕に力を込めて更に密着する。目の前にある髪に顔を寄せると、なんだか甘い匂いが鼻を擽った。花の蜜みたいに、別に強くないのに惹かれるような匂い。
諦めたのか、それとも本気で抵抗する気はないのか。何にせよ名前は大人しくボクの腕の中に収まった。


「突然どうしたんですか、トミー様?」
「ねぇ聞いてよー!料理長ったらさ、ボクが折角見つけた昆虫の卵、料理しちゃった!酷いと思わない?」
「そうなんですか?それは残念でしたね」
「せめてボクの中に卵を宿らせてくれたら、交配したりしてからちゃんと倍にしてアゲタのに」
「…その場合、卵をトミー様の体内から回収することになりますよね。それが嫌だったんじゃないですか?」
「どーせ殻は使わないんだからいーじゃん。あー、サイアク」


珍しくて強くて、そこら辺の雑魚より数倍は使えそうな虫。どれくらい使えるのか、どんな奴と交配させるか、どんな姿で産まれるのか。そんな事を考えながらワクワクして持ち帰ったのに、料理長はそんなボクの心境を知らずに「其れも食料になる、寄越せ」って。酷いったらありゃしない。そりゃボスの食欲が底知らずで、食料がいつも不足してるのは知ってるよ。でもだからといって、ボクが個人的に獲ってきた卵まで奪うのはあんまりだ。それならセドルの目玉コレクションでも回収してよって話。ま、駄々捏ねる程子供じゃないし、何といってもボスの為だしね。素直に卵を渡してさっさと厨房から出て行ってったよ。仕事?調理?しないよ。だってボク、傷心してるもん。折角の楽しみがなくなったから。だから今はこうして癒されたいのサ。


「あ、あのトミー様、放してくれませんか?」
「ヤダ」


更に腕に力を込める。


「名前をギューってすると、すっごく癒されるんだよネ。ホラ、柔らかいし」


女の子特有の柔らかさってゆーの?それに加えていい匂いがするし、本当に癒される。辛さとか疲れとかがじわじわなくなっていくのが分かる。もうずーっとこうしてたいなぁ。でも、癒されるのは女の子だからってのじゃなくて、名前だからな気がする。他の女を抱きしめたってこんな気持ちになるとは思えないし、そもそも抱きつく気にもならない。なんか気持ち悪い。


「名前は癒されないの?」
「私は少し硬いです。トミー様筋肉付いてますし」
「あ、そっか」


名前のことを考えてなかった。ボクが感じてるのと名前のとは違うんだ。そりゃ普段から鍛えてるボクの体が名前みたいに柔らかくて気持ちいいわけがない。
んー、別に名前に嫌がらせしたいわけじゃないからなぁ。もう十分に癒されたし、この辺にしとこ。ちょっと名残惜しいけど、首に回していた腕を放そうとした、すると、今度は逆に腕を掴まれた。
 
「ン?」
「…やっぱり、もうちょっとお願いします」
 

ああもう可愛い!
……
←back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -