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▼ ゼブラに食べられた

明るい光に囲まれて目を覚ます。
光の差し込む窓からは綺麗な青空が覗いている。すっかり朝は逃してしまったようだ。
周りを確認したいのだけれど、体が痛いわ怠いわで指一本動かすこともできない。


「ぜ、ぶら」


昨夜酷使した喉を使い、掠れた声で名前を呼ぶ。
ベッドの中で静かに耳を澄ますけど、返事はない。それどころか物音一つも聞こえてこない。あの地獄耳のゼブラが音玉で返事すらしてこないということは、ゼブラは私の声が聞こえない場所にいるということだ。

つまり、この家の中にいるのは私だけ。

ゼブラの事だから、恐らく朝食がてらに狩りに出掛けたのだろう。眠っていたとはいえ、私に何も言わずに出ていくなんて。
昨夜は散々私を好き勝手に食い荒らしておきながら、朝になった途端これか。何て酷い奴だ。自分勝手な奴だとは知っていたけどさ。
ふうと大きなため息を一つ吐いた。



「…食い逃げか」

(ああ?誰が逃げたって?)


いきなり耳に飛び込んできた低音に、反射的に上半身をベッドから起き上がらせた。途端に鈍い痛みが全身を襲い、再びベッドの上に体を倒す。
枕に顔を押し付けて唸っている私を嘲笑う声が部屋に響き渡る。


(クク、たったあんだけでへばったのかよ)

「っ……あ、あんだけって…」


一晩中やったのがゼブラにとって「あれだけ」なのか。信じられない。どんだけ体力お化けなんだ。


「…獲物とれたの?」

(おう、旨そうなでっけぇ奴が一匹な。今そっちに向かってる途中だ。精々ベッドの上で待ってやがれ)

「え、来るの?」

(たりめーだろ、まともに動けねぇお前を置いていけるか)


その言葉に、思わずどきりとした。

あのゼブラにこんなことを言われるとは思ってもいなかった。別にゼブラが極悪非道な奴だとは思っていたわけじゃない。ただ、普段の行動が自己中心的だから良い所よりも悪い所が目立ってしまってるだけだ。

こうして真っ直ぐに人を気遣う言葉を言えたんだ。



(今日ぐらいは俺が調理してやるよ。帰ってくるまでに、その煩ぇ心音どうにかしとけ)



その言葉を最後に、声はプツリと途切れた。静寂が室内を包み込む。
重い体を何とか反転させて寝返りをうつ。枕に押し当てた耳からは、バクバクと煩い心音が聞こえてくる。
深呼吸を繰り返すけれど、頬に集まった熱は一向に引く気配はない。

果たしてゼブラが帰ってくるまでに落ち着かせられるだろうか。
……
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