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▼ グリンパーチの部下は名前を間違える

フリリク:何だかんだで愛されてる天然主

ちょっと前に面白い奴を手に入れた。女だし戦闘に不向きだが、料理長からはヤケに気に入られているから色々と便利だ。サボリの連絡をこいつに頼めば、説教が短くなるしな。ただ、一つだけ困った点がある。いやそこが面白いんだがなー。


「会議サボるっつっといてくれや、名前」
「了解しました、グリンピース様」




これだ。




「…あのなぁ、何度も言うがオレはグリンパーチ。ピースじゃなくてパーチな」
「はい」
「何で間違えんだよ、お前」
「さあ。そんなことより早くしないと料理長もしくはストロー様が様子を見にいらっしゃいますよグリンピース様」


やっぱ変わらねぇ。

困った点というのは、こいつは何度名前を教えても、必ず間違った覚え方をする。理由は知らん。この呼び名のお陰でトミーから「バンダナ緑だし、あながち間違ってないネ、ププ」と散々馬鹿にされるはめになった。まあでも、他の奴の名前も間違って覚えてて、それが面白いから許容範囲だ。因みにストローってのはスターのことな。トミーからは「ストローってグリンのことじゃん」と更に笑われていた。勿論オレもスターの奴を笑ってやった。そしたら名前の姿を見るたび逃げるようになりやがった。ひでぇ奴。そんなスターを更に笑ったトミーの奴は「トニーロンドン」と呼ばれている。当然それを訂正するが全く改善されない。ブチ切れようにも料理長のお気に入りだから迂闊に手が出せない。それにオレだって阻止する。オレにまで被害が及んでいるのが難点だが、それ以外なら面白いし気に入っているからな〜。
廊下から、少し早いテンポの足音が聞こえてきた。さっさとずらかるか。


「じゃ、後はよろしくな〜」


外に待機させていたジャックの背中に飛び乗り、その場を後にした。料理長の怒号が聞こえた気がしたが、気のせいだろ。






本部が見えないところまで来て、一息つく。さーて、どこ行こっかなー。ぶっちゃけ会議サボれればよかったから、何にも考えてなかった。ここら辺特に何もないし、行きたいところもねぇしなー。適当にブラブラ飛んでもらって、なんか面白そうなもんがないか探してみるか。ジャックにそう伝えようとしたら、何か様子がおかしい。別に周りには何もいねぇんだが。何だ、変なもんでも食ったか?顔を覗こうと身を乗り出すと、長い鼻が右前脚の影を示していた。


ジャックの足に、見慣れたモノがしがみついてやがる。


見間違いだと思ってその物体にストローの先を向けて思いっきり吸うと、飛んできたのは……見間違いであってほしかったぜ。



「…何でいるんだよ名前」
「ごめんなさい、お邪魔でしたか?」
「いや、邪魔とかじゃなくてよぉ…お前料理長に伝えた?」
「メモに書いて扉に貼り付けておきました」


伝えろっつったじゃん。何でメモにしたんだバカ、いや間違っちゃいないんだろうけどよー。


「せっかくなので、グリンピース様とご一緒に出掛けたかったんです」


…ま、今更悔やんでも仕方ねぇな。悪い気はしないし。名前違うけど。


何処に行きたいかと聞くと「グリンピース様がいる所でしたら何処でも」と真顔で言われた。だったら此処から動かなくてもよくね?と思ったが、流石にそれだとつまんねーから、小腹が空いたし適当に食えそうな猛獣がいるところを探した。で、丁度ただっ広い草原にパープル・ホーンの群れを見つけた。うめぇんだよなー、こいつら。名前は戦闘要員じゃねぇから、ジャックの上で留守番させてオレ一人でその群れの中に飛び降りた。
他にもちらほらと食えそうな奴がいたから、片っ端から吸い込んだ。
暫くすると粗方食い尽くしちまったようで、辺りを見渡すが、もう一匹もめぼしい物は見当たらない。まだ食い足りねぇのに残念。中途半端に食ったから、腹が本格的に空いてきた。別のところに移動するかな。それとも流石に帰ったほうがいいか?
確認を取ろうとジャックの上の方に向けて声をかける。「おーい名前、まだ時間大丈夫かぁ〜?」「……」「?おぉ〜い」「……」返事がない。声が聞こえてないのか?それとも、とジャックの上に飛び乗ると、案の定名前は寝てやがった。これだったらオレに付いてこなくても良かったじゃねぇか。ほっといたオレもオレだが。


「おら、さっさと起きろ」
「んー…まだー…」
「まだー、じゃねぇよ」


これ以上寝ると夜眠れねぇぞ。肩を揺らすが、全く目を開けようとしない。本格的に眠ってどうすんだ。強めに何度も揺らしてもぼやっとした寝言しか言わない。どうせ困るのはオレじゃねぇしいいや。もうこのまま寝かしとこ。


「…グリン、パースさまー…」


ん……ん!?

いや違うか。
いつもの呼び名じゃないから思わず反応したが、やっぱ間違ってやがる。ったく、本当にこいつは名前を覚えねぇな。



「……チ、な」
「…はぁい…」
「分かってねぇだろお前」


頬を抓ると案の定「やめてください…グリンピース様ぁ…」と呼ばれた。

……
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