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▼ 報われないココ

ボクの思い人は週に一度、多いときには三度ほど訪れる。あるときは笑顔、あるとき泣き顔。毎回会う度に様々な表情をしている。それは誰にでもあることなんだけど、どうしてかボクは彼女のころころと変わる表情に惹かれてしまった。




「ココさん聞いてください!」


今日は、真剣そのものの表情でボクの所へとやってきた。一体どうしたんだと身構えれば「昨日、五分もサニーさんと会話したんです!」……反応に困る。「も」と言えるほどの時間ではないと思うんだけど。
いつもは一声二声だけだったのに昨日はどういうわけかサニーさんの方からあいさつをくださったかと思えば丁度お時間が空いていたのか話をふっていただけて何喋ったのかイマイチ覚えてないんですけど……。気持ちが荒ぶるままに一気に捲し立てられ、相槌を打つだけでもうお腹いっぱいだ。本題はそれじゃないだろうに。それを指摘しないのは、他ならぬ自分自身のため。例え話題が他の誰かだとしても、話を聞いていたいと願ってしまう。なんて情けない。


「その時サニーさんに『女なんだから美しさを追求しろ』と言われちゃって……」
「ああ、サニーは美しいものが好きだからね。言われても仕方ないさ」
「……ココさん」
「ごめんごめん」


でも君は十分可愛いよ。
その言葉を紅茶と一緒に呑み込んだ。温かい液体が、やけに喉につっかえた。我ながら何て恥ずかしいことを思うものだ。
素直なのは彼女の良いところでもあるけど、今はそれが少し仇になっている。サニーから言われたことをそのまま受け止めて、自分がサニーに相応しくないんだと感じているんだろう。サニーもサニーだ。もっとちゃんと伝えてあげればいいのに、簡潔に纏めてしまうからこういった誤解を生むんだ。



「……サニーは君を貶したわけじゃないと思うな」


不安そうな彼女に、あくまで「予想」を伝えた。


「最近化粧の仕方や服装を変えただろう?」
「あっはい。その、サニーさんに見てもらいたくて」


世間に疎いボクでも知っている、最近流行しているワンピース。胸元を大胆に開けているそれは、確かに眩しいけども、彼女には正直似合っているとは思えない。化粧だって、少しばかり派手で彼女の良さが損なわれているように感じられる。


「化粧や服を流行りのものにすればいいってわけじゃないんだよ。サニーは調和を大事にしている奴だから、君には合ってないからそう言ったんじゃないかな」


こうやって敵に塩を送るような真似をするなんて、我ながら情けなく惨めだ。いっそ嘘をついて二人の関係を壊してしまいたくなる。でも自分の感情の為だけに昔馴染みを、そして何より思い人を騙すだなんて。そんなことがどうしてできるだろうか。相手がサニーじゃなければよかったのに。そうしたら遠慮なく関係を壊せた。


「ココさん、ありがとうございます!早速研究してこようと思います!」
「うん、頑張って。それでも駄目だったら慰めてあげる」
「…その時はお願いします」







ボクが思いを告げる日は来ない。

だってほら。




「こ、コココさんっ!!」
「コが多いっつの、落ち着け」


今日の彼女は、涙を少し堪えながらも笑顔で。その隣にいるのは昔馴染みで。



「私達、付き合うことになりました!」



今まで本当にありがとうございました!そう幸せそうに笑うものだから、ボクは「おめでとう」と言うしかなかった。



(ボクと彼女が結ばれる可能性は三%もなかった)
……
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