春の訪れは幸せをも運んできて
>>> Rin side.


「チッ、教室かよ」

忘れ物を取りに教室へ戻る俺の胸には
桜の造花が飾られてあって
今日卒業する生徒の胸を彩っている

「おい、」
「あ?...って遥かよ」
「卒業証書、教室に忘れてたから持ってきた。ほらよ」
「おー、さんきゅ
.......もう、卒業なんだよな、」
「すずのことは、いいのか」

"すず"、その名前を聞いたとたん、心が苦しくなった

「、なんのことだよ」
「お前はそれでいいのか
俺には無理矢理、理由をつけて逃げてるようにしか見えなかった」
「そんなのお前に関係ねぇだろっ!!!!!!
わかるわけねぇんだよ俺の気持ちは.....っ、」
「あぁ、わからない
凛の気持ちなんだ、自分しかわかるわけがない
でもな、大好きなやつ、嫌いになんかなれねぇよ絶対」

「.....っ、でも俺....っ!」

目から勝手に涙がでる
痛いくらいに泣く俺は本当に格好悪いと思う
だけど、流れてくるものは涙だけじゃなくて
アイツとの思い出も一緒に溢れだした

「嫌いになんか、なれるわけなかったんだよ....っ
俺は逃げてばっかで、あいつは、すずは何も悪くねぇのにっ...!」
「俺に言ってもわからない
...........すずなら、お前等2人の場所にいる」

その言葉にはっ、とする。
アイツと約束した場所なら.....





「...っ、はぁっ、はぁ......っ」

思い出せば、
いつも
いつだって
すずのことばっかり考えてた

「ここ曲がったらすぐ、...っ!!!」

夏にすずに案内されて来た場所、
おばあちゃんからもらった土地とかなんとかで
白がベースの少し汚れた小さな家があった、前までは

「な、んだよこれ...」

俺が今見ているのは
綺麗に丁寧に色が塗り直されていて
雑草も1つもなく色とりどりの花が咲き
絵本に出てくるような、アイツの好きそうな、
2人で住むのにぴったりな、とても綺麗な家だった

おそるおそる、中へ入ってみる

「、すず.....」
『...っ!?え、...り、凛....?』

いきなり入ってきた俺にびっくりしているすず
久々に見たアイツは少し痩せているけど、変わらずそのままだった

「これ、もしかして全部お前が.....」
『.....だって、凛と約束したんだもん
ここで2人で住もうって....っ』

さっき泣いたばっかなのに目頭がカッと熱くなる
俺はバカだ、どうしようもなくバカだ

『どれだけ嫌われたって...っ、避けられたって、逃げられたって、
.....私、凛のこと大好きだもん、っ!!!!!』

こんな素直で可愛いやつ、嫌いになれるはずないんだ

「、....すずっ!!」
『、りんっ.....凛っ!!』

俺はすずを力一杯抱き締めた
痛い痛いって呻いてるのを無視して目の前の存在を確かめた

「ごめんなっ....ほんとに、っ」
『いいの、いいのっ
凛を信じれなかった私も悪いの、』

体を少し離して顔を見ればすずも泣いていた
俺の服の裾を握って震えるこいつをどうしようもなく愛おしく思った

『今からだって遅くない、?』
「あぁ、」
『また、やり直せる?』
「あぁ...」
『好き、って言ってもいい、?』
「、あぁ.....っ」

好き、好き好き、

壊れたように呟くすずをもう1度抱き締めた

「すず、好きだ
.....お前が卒業したら、ここで暮らそう」
『、.....うんっ』



初めて好きなやつと交わしたキスは

涙の味がしたけど1番、幸せだった。




End.




prev next

bkm back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -