人間は悲しいと思った。さみしくて、どうしようもない。私と同じ人間は五万といるのだ。


わたしの哀歌



彼は私の話をたくさん聞いてくれて、とても優しくしてくれた。安心とほのかな希望をもった私は、彼を頼った。私がとても愛した人。愛してくれた人。幸せ。


「私の話を聞いて」

「いいよ」


私はあまり自分のことを話さなかった。話したくなかった。自分をさらけ出して、あれこれと憶測されることも助言をもらうことも好まなかった。本当に知ってほしいことも、本当に知られたくないことも一緒だった。


「すっきりしたよ」

「それはよかったわ」

「ありがとう」


だから私は他人の話を聞いた。私は友人に依存されても、その手を振り払わなかった。だんだんそれが重荷になった。それでも感謝されたから、嬉しかった。


「泣かないで」


私の話を聞いてくれる友人はいなかった。聞いてほしいと頼んだこともないから、当然のことだ。自分で選んだことなのに、どうしてかつらかった。人前では泣いたら心配かけてしまうから、いつも家で膝を抱えて涙を拭いていた。とてもつらい時は、彼を頼った。彼は私の話を聞いてくれた。


「友達でよかった」


彼との関係が、ただの友情に戻った時、私はわかっていなかった。そして彼も。お互いに、何も変わらないのだと思っていた。だから大丈夫。でも、話をしながら彼の目を見た時、もう違うのだとわかった。やはり、私に向ける愛情は変わっていた。もう、1番に愛されてはいないのだ。


「好きだ」


かなしくて、さみしい。鬱々としている自分が嫌だ。諦めていた。自分が欲しいように、私の求めるものはないのだ。本当に誰かがそばにいてほしい時は、誰もいない。期待してはいけない。求めてはいけない。だけど、だから、相手が欲しいものを、私はあげたい。


「お前は悲しいな」

「どうしてそう思うの?」


暗い車内で、跡部は口を開いた。リムジンから見える夜の街は、暗闇の中でギラギラと人工的な光がある。星は見えない夜の街。
私は悲しいと感じるけど、何故他人が"私は悲しくて可哀相な人"と思うのだろう。どこをどう見て、可哀相なの。みんなだって悲しくてさみしくて、可哀相なこといっぱいあるでしょう。誰だって苦しんでいるんでしょう。だって、求めた通りの答えが返ってくるとばかり期待していた人間は、上手くいかなかったらいつも大袈裟に騒ぐでしょう。


「悲観的になんねぇで、もっと期待しろよ」


傷つかないように期待しない。そう言いつつ、1番期待しているわ。どうせどうせと泣きながら、私は汚く貪欲だった。その矛盾を悟られないように、いつも人の良い笑顔を作る。模範的な返事を、求められた行動をとりたかったの。いつか私に優しくしてくれる人が現れるのを待って。エゴイスティックな私の、唯一の。



あなたの愛歌



「ほら、こっちこい」

「いやだ」


顔を背ける私の身体を引き寄せる跡部は無表情。そう簡単には信じない。いくら頼りがいのある、あなたでも。


「やっぱりお前が1番だな」


哀し愛されて最期は鎮魂歌が欲しい