「丸井」

「……」

「〜っ!丸井!」

「ンだようっせえな」

「…昨日は言い過ぎてごめん」

「………」

「丸井のために作ったんだけど、食べる?」

「…………………食べる」


なんだその間は!まぁちょっと機嫌直したらしいし良しとする。丸井はじーっと私を見つめながらむしゃむしゃカップケーキを食べている。


「…なあに?」

「お前このカップケーキ手作りなんだよなぁ?」

「…うん」

「本当だよな?マジお前信じるからな?」

「………」

「俺の舌をナメんなよ」


うっわーバレたよね確実!手作りとか急には無理に決まってんじゃん市販のカップケーキをラッピングしただけです。というわけで丸井の怒りのバロメータはうなぎ登りに。


「マジ信じらんねえ最低だな」

「…だって丸井怒ってると思ったんだもん」

「怒ってはいない。呆れてんだよ」

「………」


ムカつくぅうあああ!!ンだよこっちが下手に出たら!つーか私まだ納得してないしね!丸井意味わかんない。なんで赤也と付き合ったくらいで怒るの。器小さすぎ背も小さすぎその割にはデブじゃんばーかばーか!と心の中でお恨み申していると仁王が登場。仁王は私の隣に座るとぐでんと寄り掛かってきた。マジで頼むから空気読めよ重いし!丸井はギラギラと仁王を睨みつける。仁王はその視線に気付きながらもスルー。…ある意味ソンケー。


「まぁまぁそんなに睨みなさんな。結衣も反省して丸井のためにカップケーキ買ったんじゃし」

「…おう」

「ごめんね、丸井」

「…ん、」


さすが仁王。なんとなく仲直り出来たみたいでよかった。仁王に目配せすると、薄く笑ってる。ああこの顔、なんかたかられそうだな。丸井に昨日置いていったカーディガンを渡すと、さっそく着て「やっぱこん中で1番俺が似合うな」とか笑ってるのでご機嫌らしい。でも仁王が持ってきたポッキーを一袋奪って私にあーんって強制させるのはすごく迷惑だ。


「なんで自分で食べないの!」

「赤也に負けるとかムカつくし」

「俺はやってくれんの?」

「「仁王おめー彼女いるだろ」」

「…なんじゃあ二人して今度は俺をハブするんか」

「てめーリア充だろ、俺ら非リアだから」

「あれっ丸井フリーなんだ」

「最近いねえし」


へー、新事実。仁王も丸井もけっこう回転早く恋人作るタイプだけど、丸井が今いないとは意外だな。この前隣のクラスのEカップが丸井に告白したらしいから、実はいちゃこらあんあんしてるのかと思ってた。しばらく仁王の彼女の話だとか、恋バナをしていた。


「で、結衣は?」

「はっ?」

「だーから、赤也とどこまでいったん?」

「あー…」


まさか自分に話が振られるとは。私、他人の話を聞く分には楽しめるけど、あんまりこういう話自分からするの苦手なんだよね。恥ずかしいし。言葉を濁していると、仁王はニヤニヤ丸井はイライラしてる顔付き。そんな二人を前に話さなきゃ駄目かなぁめんどくさいなぁと思ってると、赤也がやってきた。


「あっ!赤也!」

「え、何スか」

「オイ赤也。結衣とどこまでいったん?」

「…ええ〜?!」

「赤也任せた」

「おうおう、初々しい反応じゃのう」

「…てゆーか丸井先輩、なんかめっちゃ睨んでるし」

「睨んでねえし早く話せ」

「えっと…初めて二人で帰った時に、手繋いで…」

「ああ、あん時異様に早く着替えてたのう」

「それでデートした時にキスして…」


こうして赤也は根掘り葉掘り仁王に聞かれていた。仁王ニヤニヤしてんじゃねえよばーか。恥ずかしいじゃんか。赤くなる私と赤也、ニヤつく仁王とは裏腹に丸井は終始ムスッとしている。まぁ、丸井はあんまり他人の恋バナとか好きそうじゃないのは前からだけど。


「…まぁ、そんな感じっス」

「ほーん」

「仁王ニヤニヤすんな!イラつく!」

「結衣、顔赤い」

「うるさいなマジ仁王黙れ」

「…結衣」


丸井の低い不機嫌そうな声が聞こえて、ビクリと肩を震わせながら振り返った。それから赤也が息を飲むような声と仁王の冷やかすような口笛が聞こえた。丸井のまつげが長いなぁなんて暢気なことを考えた。





パーソナリティ




丸井は私の後頭部と腕をガッシリ押さえつけていた。合わさった唇を感じて、お互いに目を見開いたままだった。あれ、キスしてる。丸井は私を見つめながら角度を変えながらキスを繰り返して、それから生温かい舌を侵入させた。丸井の視線から避けたくて目を閉じると、感覚がよりいっそう生々しい。しかも丸井、本格的に舌を絡めてくる。何なんだよお前。と思いつつもされっぱなしは性に合わない。余裕ぶっこいてる丸井にムカついて、私も丸井の舌を絡め取る。キス合戦が始まってお互いの喉に唾液が伝った時、どちらからともなく唇を離した。


「…なんっなのよ!」

「結衣だってノリノリじゃねえか」

「そんなんじゃないし!何でキスしたの!?」

「ムカつく」

「何が!」

「全部。お前も赤也も仁王も」

「何で!?」

「ちゃっかりお前とキスしちゃってる赤也もそれに浮かれちまう結衣も完全に面白がってる仁王も、全部ムカつくんだよ!」

「だからってキスする意味わかんないし」

「だってお前と赤也がキスしてると思うとイライラしてキスしたくなったんだもん」

「かわいこぶんなし」

「とにかく!俺は赤也に負けたくねえの!」


そうして丸井は私の携帯を奪って操作し始めた。呆然としばらく丸井を見つめていると、またもや頬に手を添えながらキスされる。うん、どうしてこうなった。仁王も赤也ももはや空気だ。ていうか赤也はいたたまれなくなったらしくどこかへ消えた。まぁしかたないよね、思春期で可愛い可愛い赤也は他人のディープキス目の前で繰り広げられたらトイレへGOだよね。しかも元カノと先輩っていうね。


「はい」

「ありがと…って丸井何した?」

「メアド変えた」

「ハァ!?…だいすきはいふんぶんた…ってお前マジふざけんなよ」

「俺ら恋人同士だから待ち受け俺じゃないと許さねえから」


いつ恋人同士になったんだよ!仁王はいつもつるんでる二人が恋人になるってことでブーブー文句言ってる。しかもメアドが@の前が、"daisuki-bunta-love"になってるんですけど。キモい。丸井付き合ったらこんなん強制させんの?


「結衣だけだって」


胡散臭すぎる。





続くかもしれない。
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渚さんへ
遅くなって申し訳ないです;
苦情感想承ります。

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