※ヒロインの性格注意
※下品
※いろいろ注意





カスカスカスカスカスこの男カス!!なんなの、意味わかんない。あーあだから嫌なんだよねすぐ調子乗る男。わたしアンタのこと好きなんて言ってないしむしろ相手にもしてないし。意味わかんね。つかメール即レスうっざ。この暇人が。だいたい毎朝おはようメールとかいらないしだからナンデスカ。メールぶちった理由わかれよ、返事が来ないのが返事なんだよわかれよカス。



「マジイライラするああああカスカスカス!!」

「荒れてんなァ」



わたしは足を組み直しながらカチカチと携帯を操り、もう片方でパックのカフェオレを持つ。イライラしてちゅーちゅー吸いまくってたらすぐに無くなった。投げると寝てた仁王の頭にぶつかる。どんまーい。丸井も丸井で携帯カチカチしてて、リアル更新してるみたい。相変わらずコイツのリアルはくだらないけど何でわたしのパンツの色書いてんの。変態。



「つーかマジないわ、お前」

「は?何?」

「男釣っては弄んでんじゃん」

「釣ってませんー釣れただけですー」

「お前性格カスだな顔良いけど」

「ハッ!性格カスでも顔とトークがちょっと良ければすぐに釣れる男たちの方がカスだよ」

「こえーなお前」



この世にはびこる出会い厨と精子脳に最初は優しくしてわたしに落ちたところをボロクソにダメ出しして説経して馬鹿みたいに欲望丸出しのメッセ送ったのを後悔させてやるのだ。わたしってば正義の味方〜☆なんちゃって。かっこわら。ぶっちゃけただの暇つぶしである。でもうざいモンはうざい。テラワロス〜wwってネタになるヤツは良いけどネタにもならないヤツはめんどくさい。つまらん。でも楽しければいい。



「そーゆうの快楽主義って言うんじゃね?」

「アンタもそうだよね」

「まぁな」

「男なんて特に、気持ち良ければいいんだから」







「さ な だ!」

「なっ、何だ」

「ん〜ん?何でもないよ?ただ…真田に会いたくって」

「ななな何を」



ブルブルブル。携帯のバイブ機能がスカートのポケットの中でわたしに着信を知らせる。チッうっせえな。あーもうハイハイあのガリガリね。アンタの経済力は魅力だけど他は興味ない。ちなみにコイツは直接会って3秒で鼻息荒くして告ってきた。女に飢えすぎキモすぎ汗かきすぎ。汗をかくなら爽やかに、そう、愛しのマイダーリンのようにかいてから出直せっての。わたしはダーリンの鎖骨あたりを指でなぞって、鍛えられた腹筋まで下降させる。



「ねーえ、さなだぁ」

「なっ何をする!やめんか!」

「顔真っ赤だぁ」



ははは自分気持ち悪い。何この可愛い声。もちろんマイダーリン専用。ていうかまだブルブルしてんだけど。しつこいんですけど。まぁ良い作戦Bに変更だな。風紀委員であるダーリンの目の前で携帯を出して電話を切った。



「お前!校内での携帯の使用は禁止されているぞ!」

「だってね、」

「前々から注意しようと思っていたところだ、来い!」

「ごめんなさい…」



よっしこれでシナリオ通りー!カス男Aも役に立つもんだ。本当はスキップしたいくらいだけど大人しく男らしい背中を視姦して、風紀委員がよく使う埃っぽい空き教室にたどり着いた。あああ興奮してきた。やばいやばいマジかっこいいよさすがマイダーリン!



「その携帯は没収だ、いいな?」



…えー!マジかよ!そこまですんの?今までやぎゅたんに捕まった時はテキトーに言い逃れてたからマジで没収するとは。なんてストイックなの惚れ直しました。とか思ってる間にもブルブルブル。今度はデブの方か。カラオケ行こう行こうってうざいんだよね。…もう良いや、この作戦上手くいったらカス男とは全員切るつもりだし、ちょっとマイダーリンの手を借りよう。



「さなだ…」

「む?どうした?」

「壊して、この携帯」

「…は?」

「わ、わたし…ストーカーに、ぐすっ、うわーん!」

「だ、大丈夫か!?」



えええこのバレバレな嘘泣きも信じちゃうピュアさ。嘘泣きしながら早口ででっちあげたストーカー話をする。「同級生のストーカーがしつこくて携帯にはすぐ出ないと殺すっておどしてきて!怖いの!助けて!愛して!壊して!ぐすっ、ううー!」……どさくさに紛れて言っちゃったけど可愛い可愛いマイダーリンはわたしが突然(嘘)泣き始めたので混乱してあたふたしている。



「そうか…今この着信もストーカー、なのか?」

「そう、なの…」

「しかし同級生ならばこやつも学校であろう、その腐れ切った性根を叩き直してやる!」



ピッ。

………えー…。出ちゃったよマイダーリン。まぁいいかとりあえずカス男Bは終われ。低い声で説経を始めるマイダーリンをじっと見つめていた。ああ、幸せ。







「ストーカーは解決したな」

「そうだね、さなだのおかげだよ…」

「な、泣くな…!」

「うん、ありがとう」



嘘の涙を指で拭いながら笑顔を向けるとマイダーリンは顔を真っ赤にさせた。男を落とすために考案されたこの笑顔。効果バツグン。わたしはマイダーリンにもう一度携帯を差し出した。



「ねぇ、やっぱり壊してほしいの。またストーカー、諦めないで電話してくるかもだし…」

「しかし、困らないのか?不便だろう」

「いいの、新しくするから」



ずいっと携帯を差し出した。バイバーイ、データちゃん。マイダーリンのたくましい筋肉が繰り出した携帯逆折りはもはや爽快さがあった。あーあ、これでカス男とはさようなら。こんにちはマイダーリンとの甘い生活。こっからが、勝負だ。



「……さなだ」

「なんだ」

「すき」

「…な、な、」

「さなだが好き、なの」



やっぱりマイダーリンに告白するのは緊張して、声が震えたけどもちろんそれもテクのひとつ。マイダーリンの腰に抱き着いて、女のやわらかい部分を押し付ける。あ、やっぱり顔真っ赤。



「はっ、離れんか!!」

「やだ、すき、すきなの…」

「ちょ、待っ」

「おっきくなってる」

「!?は、離れっ…!」

「声、だよ?」

「なっ、なん、で」

「ふふ、えっちなんだ、意外と」



マイダーリンはわたしに抱き着かれながら後ずさって自分から逃げ道なくしてる。まぁそっちの方がいいんだけどね。わたしはマイダーリンの下半身を撫で付ける。…マジで大きいどうしよう濡れる。



「どこをさわっ、触っとるんだ!馬鹿者!」

「えーと、ち」

「言わんでいい!!」



あーもうこんなんじゃわたしの目的達成されない。本当はムードとか欲しいしラブラブいちゃいちゃしたいけど手っ取り早くダーリンと繋がりたい。だってこんなのわたしの片思いだし。いつもふざけてるけど、ダーリンがわたしみたいな子がタイプじゃないことくらい知ってるし、でもわたしはダーリンに抱かれたいのだ。



「中山…」

「なっなに」

「手が…震えているぞ」

「別に、」



ダーリンのベルトに手をかけようとしていた手が確かに震えていた。ダーリンは優しいからわたしの震える手に大きな手を重ねた。暗黒の中学の時、あの時みたいだった。

わたしの父親はわたしが嫌うようなカス男で、ろくに働かないくせに顔は良いからいつも金持ち女の世話になっていて、わたしや母親は放置だった。いつもお金に苦しんでいて馬鹿なわたしは援交で金を稼いだ。しかもカス男がシャワーを浴びている間に金を盗んで逃げた。その繰り返し。ついにわたしはカス男から逃げ切れず刃物で刺されそうになったところを、ダーリンが助けてくれた。



「本当はこんなこと、慣れてないのだろう」



わたしは今学期で学校をやめる。わがままを言ってダーリンが通う立海高等部に編入した。でももうそれもおしまい。わたしが泣いてカスな父親に頼んでも、戻って来ることはないし、暮らしが楽になることもなかった。ダーリンが好きで好きで、世の中にいるカス男に絶望したわたしの、希望だった。卑怯なやり方だけど、理性をなくさせて抱かれたかった。わたしの1番大好きな、この世でカスじゃないダーリンに処女を奪われたかったの。そうすれば、何だか生きていける気がしたから。



「無理をしなくていい、自分を追い詰めるな」



零れた涙を拭ってくれた手が温かい。ダーリンの優しさは、決してわたしだけには向けられない。欲しい。でもそんな分け隔てのないところも好き。わたしの身体を離すと、頭を撫でてくれた。これも、お別れなんだ。



「…その、中山の言葉は、嬉しかった」



律義に返事をするダーリンの顔はやっぱりほんのり赤くて、困ったように眉を寄せていた。少し笑えた。やっぱり、好き。さようならマイダーリン。きっともう縁が無くなる。最後にありがとうと言いたかった。



「しかしこういうことは、急にやるのではなくて…」

「…その、どちらかの家で落ち着いて始めた方が、いいと思うのだが…」




………うん?





ハンカチを捨てた日





「げんいちろー!いってらっしゃい〜」

「うむ、いってくる」



愛しい愛しい、本当にマイダーリンになった弦一郎にいってらっしゃいのキスをする。
立海をやめ、わたしは真田家の居候となった。昼間は真田家の道場で働き、夜間は定時制の学校に行くようになった。わたしの母親とカスな…いや、駄目な父親に真田家に居候する話を伝える時に、プロポーズ紛いの宣言をしたのは記憶は懐かしい。わたしばかりが弦一郎のことが好きだと思っていたら、案外弦一郎もわたしのことが好きらしくて、やっぱり泣いた。



「結衣が泣いた時は、俺がその涙を拭うから、お前は安心して泣けばいい」



弦一郎は相変わらず分け隔てなく優しいし、厳しい。それは恋人になったわたしはもちろんそうだけれど、みんなと違うことが一つある。優しさ以上に欲しかったものはわたしのことを満たして、幸せにしてくれる。



「だいすき」



愛は目で見えないのにあなたから注がれるそれは何故こんなにわかりやすく感じられるんだろう。ずっと欲しがっていたものだから、今度はわたしがあげたい。少し大きくなったお腹を、そっと撫でた。


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