もったいないので惑星クレイパロ書きかけ投入。無駄に長い。



「敵襲です!竜が50体ほど、ドラゴンエンパイアのかげろう部隊と思われます!」
「何故、こんな突然…」
「ええい、考えても仕方がない事をゴチャゴチャ考える前に動け!彼らを城へと寄せつけるな!手の空いている者全てを防御にあたらせろ!」

騎士王の命がホールに響き、控えていた騎士達は風のように戦場へと駆けてゆく。あらかた人がいなくなった所で、アルフレッドはアイチの方を向いた。

「あまり休ませることも出来ずに申し訳ないが…行ってこれるか?」
「分かりました。でもアルフレッドも無茶しないで下さいね?何かあったらばーくがるに呼びに行かせますから」
「ああ。……お気をつけて、姫」

その言葉にアイチは苦笑し、「今はただの指揮官見習いですよ」と言い残して去った。



その場はもう戦場だった。敵味方が混ざり合って判らなくなっている中を、アイチはスターライト・ユニコーンに乗って駆ける。

「ギャラティンは向かって右方向、あのフレイムドラゴンと戦っている仲間の加勢をして!」

次々に指示を出し、自身の目で戦況を見る。それがアイチのやり方だ。

彼自身には剣を振るう技も、矢を射る腕力もない。しかし戦場の後方、安全な場所でのうのうとしてただ命令を出すだけという事は嫌だった。その結果、ユニコーンに乗り、ブラスター・ブレードを護衛に戦場を駆けながら指示し、身軽さを生かして時には相手を攪乱する、独特のスタイルとなった。――そのせいで、護衛の騎士(主にブラブレとゴードン)は毎回肝を冷やしまくっているが。

そしてこの様に指揮官が前線に立つのは色々と危険である。例えば、

「うわあっ!?」
「主ッ!?貴様、我が主に何をするっ!」

あっさり倒せると見たのかアイチに襲いかかった蛇の様な戦士(魔竜戦騎ラクシャ)を目にするや否や気合い一閃、ブラスター・ブレードが斬り飛ばした。

「た、助かった……ありがとう、ブラスター・ブレード…」
「……もう少し周囲に気を配って下さい、マイヴァンガード……」
「……ハイ、ごめんなさい………」

馬上の主に膝詰め説教。何とも言えない可笑しな光景だ。しかし、そうのんびりとはしていられない。

「オイそこ何ノンビリしている!?囲まれかけているぞブラスター・ブレード!!」

そう叫びながら、アイチ達を囲みかけていたかげろう兵達を蹴散らしやって来たのは真理の騎士・ゴードン。攻めにも守りにも大活躍な礼儀正しい騎士である。普段は。

「あっ、ゴードン!戦況は!?」
「ここはなんとか持ちこたえていますが、何故か南側からも襲撃を受けました!見張りによると、ドラゴンエンパイア所属ぬばたま忍軍であると思われます」
「分かりました、手すきのグレード3を何名か向かわせて!僕も行…「「お止め下さい、マイヴァンガード」」…ハイ……」

二人がかりで止められ、アイチは断念した。

「ああ、そういえばさっきそこでギガンテック・チャージャーを見かけました。どうやらまた迷った模様です」
「え、えええまた…?」
「まったく奴は敵を見かけたらすぐ正面突破しようとするから…」

だから迷うんだ、と溜息をつくブラブレ。

「ともかく、彼を南へ向かわせては?」
「あまり効果は無いと思われますが。相手はぬばたま。闇に住み、闇に生きる者達の集まりと聞き及んでいます」
「いえ、だからこそ彼を行かせてみましょう!逆に何か、思わぬ効果があるかも…」
「うーん…あの様な筋肉バカに相手ができるか不安ですが、ヴァンガードの御意志であるのなら」
「オイ、何気にヒドい言い方だなブラスター……」

その時背後から叫び声が上がり、かげろう軍のリザードランナー達をふっ飛ばしながら誰かがやってくるのが見えた。

「中央突破こそが我らの道!突貫!ギガントチャージ!」
「うわ、奴は迷ったのではなかったのか…?」
「噂をすれば何とやら、だな…」
「ちょっ、二人ともそんなのんきな事言ってないで!?あのまま来たら多分、ギガントチャージに巻き込まれるよ!?」

その直後破壊音がし、大地を割りながらこちらへ向かってくる青い光が見え、ブラスター・ブレードとゴードンはとっさに飛び退いた(アイチは既に退散していたため無事だった)。際どい所で通り過ぎ、後ろにいた別のリザードランナー達に当たったのを尻目に、「貴様、何をするかこの突貫バカ!」とブラスター・ブレードが怒鳴った。

「ああ、悪かった悪かった。それはとにかく、アイチ様ー!おられますかー!?」
「え、あっうん、どうしたの?」
「大変です!今度は北西方面から大軍が!遠目でハッキリとしませんでしたがアレは多分たちかぜの奴らです!」
「ええっ!?」
「なっ、こんな時に!?」
「見間違いではないんだな?」
「当たり前だ!トランペッターが報告してきたんだからな!」
「ああ、あの子か、ならばほぼ確実か」
「お前、オレの言う事が信用できないのか!?」
「まあ、突貫バカだしな」
「お前!!」

わーわー喧嘩しているブラブレとギガンテックには構わず、アイチは考え込みゴードンはその間敵をぶった切っていた。

「…確か、ブリジッドさんは戻っている、よね?」
「ええ、多分」
「なら彼を、たちかぜが現れたという所へ、あとはディナスさんが居てくれれば…」
「しかし彼は居りませんが…」
「なら、できるだけ攻撃力の高い人達を北へ、南側にはハイドッグ部隊を!その隙に指揮官を探し出して退却させることができたら…!」

ヴァンガードの指示を受け、ギガンテック・チャージャーは周りを吹っ飛ばしながら、たちかぜ部隊が現れたとみえる方向へ走っていった。そして戦闘は、尚も続く。



side:S
それを見つけたのは、偶然だった。竪琴の騎士、なんて気取った二つ名をつけている奴の攻撃を間一髪で避けた時、ナフド達の囲みが一瞬崩れ、青い髪がちらりと見えたのは。

「…あれか?」
「何を余所見しているッ!」

深く斬り込まれてきた剣を避け、相棒である竜に飛び乗る。考えが伝わったのか、彼はすぐさま飛び立ってくれた。

「なっ、貴様何処へ行く!まだ決着はついていない!」
「わりーが急用ができてね。ちょっとアンタと遊べなくなっちまってなー。まあ、コレで我慢してくれ!」

そして続けざまに5発撃ち込み、一直線に空を駆ける。

――目指すは、我らが先導者(ヴァンガード)の元。



side:K
戦闘を指揮し、さらに自らも戦っていた彼は、その報告を聞くと、その無表情に一欠片、笑みを浮かべた。そして。

「よくやった、サザーランド。俺をそこへ連れて行け」
「仰せのままに、我らが先導者(イエス・マイ・ヴァンガード)」



side:I
「ん?何アレ…?」

ざっ、と頭上を横切る、巨大な影。

「あれは…ドラゴニック・オーバーロード!?まさか…向こうの指揮官が出てきちゃったワケ!?」

止めなきゃ、とそこら辺に飛んでいたハイオウルに頼んで乗せてもらい、近づく。と、

「おーっと、ここから先は行かせねーぜ?」
「っ、何かまたチャラいのが出てきたわね…っ、えーいこのっ、退きなさい!」
「ところがそれは出来ないなぁ、こー見えても一応先導者を守っているんでね。どーしてもってんなら俺が相手になってやるぜ?」

上等だ。

「やってやろうじゃ、ないのよッ!」

気合いと共に、男に殴りかかる。

そして、最強の盾を持つ少女と銃使いの青年の戦いは始まった。



戦況は相変わらずであり、変化はない。が、

「ね、ねぇ…何か、押されてきてない…?」
「そういえば…マズい、兵が疲労してきています!」
「…ッ!」
「アルフレッドを呼びますか?」
「ま、待って!」

確かに騎士達の王、アルフレッドを呼び出せば戦況は幾分かマシになるだろう。しかし彼は、王を護る者達の主である。彼が出陣する事はすなわち、ユナイテッド・サンクチュアリ王家の最後の砦が無くなる事を意味する。という事は。

「もう少し、もう少しだけ、何とか抑え込んでみせる…!」

そう言って、戦線が崩壊しかけている所に歩を進めようとした時、突然強い風が巻き起こり、不意を突かれたアイチはユニコーンから転げ落ちた。
そして頭上を覆う、影。

「アイチ様!!」

ブラスター・ブレードやゴードンの叫び声に応えようとするが、再び強風に煽られ返事が出来なかった。
影はだんだん大きくなり、それにつれて吹きつけてくる風も強くなっていく。そして、その影の主は、アイチの目の前に降り立った。風が止んだのを知り、恐る恐る目を開けたアイチの目の前に飛び込んできたのは、禍々しい、紅。

「あれは…ッ…、ドラゴニック・オーバーロード!?」
「あの、黙示録の風とも呼ばれる、最強クラスの…?アイチ様っ、早くそこから逃げて下さいッ!!」

護衛の二人は何とかアイチの方へ近づこうとするが、周りにいた他の兵達が邪魔をして行けない。
動く事も出来ずに、ただ呆然と竜を見続ける中、その背から優雅に降り立ち、アイチの方へと近づく影があった。

色白の、顔立ちの良い男だった。その茶色の髪は勝手気ままに跳ね、厳しい表情をその顔に浮かべていた。
その、刺すまでの光を湛えた翡翠の眼に射抜かれ、アイチは動けなくなる。その前に立った彼はしばらくアイチを眺め、口を開いた。

「お前か、ロイヤルパラディンの先導者(ヴァンガード)は」

その言葉に、アイチの思考は停止する。バ、バレた!?マズい、僕もしかして殺されちゃう…!?

そんな混乱を、その表情から読み取ったのか、彼はフッと笑う。

「安心しろ、いくら敵方のヴァンガードだからといって、無闇に殺したりはしない」

そうなのか?とホッとしたのも一瞬。

「この戦闘を止めたくば――投降し、俺と共に来い」

つまり、アイチ一人が犠牲として捕虜となり、被害を食い止めるか、拒否し、この無益な戦争を続行し、ドラゴンエンパイア帝国の軍門に降るか、どちらかを選べと、――この男は言っているのだ。

「さあ、どうする?こちらとしては、このまま戦を続けても一向に構わないが」

アイチは、迷う。自分の命か、それとも仲間の命か。

「お止め下さい!この様な事の為に、貴方が犠牲になる必要など無いんです!」とブラスター・ブレードが叫ぶ。

「そうです、マイ・ヴァンガード。貴方を敵の手に渡すより、奴らと戦い命を落とした方がなんぼかマシです!」とゴードンも叫ぶ。それに呼応する様に、いつの間にかブラスター・ブレードの側に来ていたういんがるも吠えた。そんな二人と一匹の方を振り返り、「でも…」とアイチは呟く。しかしその先の言葉が紡がれる事はなかった。

「敵を前に余所見とは、戦士失格だな、お前は」

その言葉と同時に腹に衝撃がきて、何が起こったのか分からないまま前のめりに倒れる。薄れゆく意識の中でアイチが最後に見た物は、鋭くこちらを見つめる緑玉(エメラルド)の如き常磐色の瞳だった。



広い庭の片隅で、蒼い髪の子供が泣いている。アイチは、自分が夢を見ているのだと分かった。
大人達に散々注意され、時には詰られ、自信が無くなっていた頃。まだ、先導アイチとして、王子として暮らしていた、あの時。

暫く泣いていると、不意に近くの茂みがガサガサと揺れ、幼いアイチはビクッとする。
暫くガサゴソしていたかと思うと、突然茶色の頭が現れた。

「!?」

アイチは驚き、固まって動かなくなってしまう。茂みから現れた茶色の頭の持ち主はキョロキョロと辺りを見回し、アイチを見つけると、途端に笑顔を浮かべて駆け寄ってきた。目の前にやって来た顔は、逆光のせいでよく分からない。が、この辺りでは滅多に見ない、綺麗な碧の目をしていた。

「随分と汚いな、お前!こんな所で何やってんだ?」



目が覚めると、アイチは暗闇の中にいた。少しの間状況が把握出来ず呆然とする。周囲を探ろうと腕を動かすと、ちゃら、と重たい金属の音がした。手錠がかけられている。そして感触からしてここは石牢らしい。

「……もしかして僕、殺されちゃうのかなぁ……」

その可能性は高い。殺されないまでも、何しろ今現在交戦真っ最中の敵国の指揮官だ、拷問されるかもしれない。

ぐるぐると悪い方向にばかり考えが巡ってしまい、ますますナーバスになる。しかし、闇に目が慣れてくると、自分の上に窓が開いていて、光がうっすらと差し込んでいるのが分かった。

「もしかして、あそこから抜け出せるかも?」

何とか逃げ出そうと試みるも、結局窓に手が届かずあえなく失敗した。

「………何をしている」
「うん、はいいっ!?」

急に背後から声をかけられ、牢の壁をよじ登っている最中だったアイチは飛び上がり、そのまま転げ落ちた。ごっ、っ鈍い音がする。

「う……い、痛ぁ………」

打った頭を押さえながら涙目で声がした方を見る。そこには、アイチを連れ去った本人(だと思われる)が居た。

「え、あ、あわわわこ、これはその、……べ、別に脱走しようかとかなんて考えていたワケじゃなくて!」






ここで放置。『光を掴んだ日』の元々のお話。ここの話のゴタゴタが片付いて約一年後の話があれ。ちなみにこの後R-18入ります。ええ。しかも三和くんがゲスいですごめんよ三和くん。←
ところでこれ書いた紙の隅っこに『#33にて
もうちょっと デレて下さい 櫂トシキ(心の俳句)』って書いてあったんだけれどどういうこと
あと当初の予定では連れ去られるアイチは一回逃げ出そうとして(森に飛び降りようとした)失敗するってプロットだったのにどうしてこうなったしかも連れ去る時櫂くんキスしていたような気がしたんだけどさらにどういうこと

2012/04/03up

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