※色々捏造注意!例えばマサキの、ヒロトの呼び方とか
※多分冬
※時間軸が迷子
※タイトル詐欺←



「ねえ、ちょっと俺何のためにこんな所に来てんですかね?」
「ん?そりゃ俺が誘ったからだろ」
「あれを誘ったというんですか!?もはや脅しだろ!まんまと引っかかった俺も馬鹿だったけど、まさか、まさか、デートだとか聞いてねぇーー!!」
「狩屋ちょっとうるさいぞー」
話は前日に遡る。





現在ホーリーロード優勝目指して驀進中の雷門サッカー部に所属するDF、狩屋マサキは、その日も天馬ら他の一年と練習していた。信助の新DF技はすでに完成しているのだが、天馬もどうしてもやりたいらしく、他の練習の合間に試しているのだ。
そんな個人練習中、天馬がふと話しかけてきた。
「ねー狩屋、明日ヒマ?」
「んーまあ、ヒマっちゃあヒマだけど…」
「よかったー!あのさ、実は明日キャプテン家に来いって言われてんだけどさー、俺一人じゃ不安なんだ。だから狩屋も一緒に来ない?」
「あ、だったら僕も行きた…フガッ!?」
「いや、俺は遠慮しとくよ!」
慌てて信助の口を塞ぎ、首を横に振る。
俺だって命が惜しい、誰があんな魔窟に行くものか。そんな度胸ある奴がいるなら是非お目にかかりたいものだ、等と失礼な事を考える。
「大体さ、一人で来いって言われてんでしょ、どうせ」
「えっすごい、なんで分かったの狩屋!?」
「想像つくよそれくらいは……」
「そーなんだー、残念だなー。キャプテンの家見てみたかったのに…」
「すっごい大きいよ!まるでお城みたいなんだぜ!今度一緒に行けないかキャプテンに聞いてみるよ」
「もちろん狩屋も一緒だよねー?」
「俺も!?」


多分この会話が原因だろうか、家に帰った後、何故か霧野から来たメールには、『明日ちょっと付き合え』というものだった。
嫌ですよ、何でセンパイに付き合わなきゃいけないんすか面倒くさいなー、と送ったら、『いいから付き合え』と返ってくる。
何が悲しくてヤロー二人、しかもイヤミな先輩と行かなくてはならないのか、最終的には先輩命令、そして言うことを聞かないと狩屋の恥ずかしいあれやこれやを言っちゃうぞ等と送られてくる始末。もはや脅迫である。
仕方がなく渋々承諾、合流する時間などを確認した後すぐさま寝た狩屋であった。


翌日、いくら気にくわないとはいえ一応先輩だし、出かけるんだし、と言い訳しながら(誰に?)少ししゃれた私服を来て行った。断じて浮かれてなんかいない。
指定された場所へ行くと、もうすでに霧野が待っていた。近付いて来る狩屋に気づくと顔を上げ、それからふわり、と微笑む。不覚にもドキリとした。
「来てくれて良かったよ。来なかったらどうしようかと思ってた」
そう言って笑う霧野の顔は、一歩間違えれば完全に恋する乙女のそれである。そんな表情を見ても狩屋は気持ち悪い等とは思わず、むしろまた赤くなってしまった。
妙に恥ずかしいのを誤魔化すため、狩屋はそっぽを向いて、「そりゃあ、あんだけ脅されたら来るしかないでしょ」と憎まれ口を叩く。もう少し素直になればいいのにと思うが、それが彼の性格なのだから仕方がない。霧野も照れ隠しだと分かっているのか、特に気分を害した風もなくずっと微笑んでいる。
「んじゃ、とりあえず行こうか、狩屋?」
「うわちょ、手!んな所で手なんか繋ぐなぁぁぁぁっ」


絶対にこの人俺を騙した。狩屋はそう心の中で呟く。
確かに昨日のメールに書かれていた用事(例えば部内での必要物資の調達とか)は済ませた。そこまではいい。てっきりそのまま解散するのかと思っていたら(断じて寂しいなどとは思っていない)、急に霧野は人の悪い笑みを浮かべ、「本番はここからだぞ?」とのたまった。
物凄く怪訝な顔をする狩屋に、霧野はいっそすがすがしいまでに眩しい笑顔で「神童に頼まれた物も全て買ったし、それじゃ、デートするぞ!」と宣言した。
「えええええで、ででででデートぉぉぉ!?」
「そうだ、言っておくが今日来てくれた時点で、お前に拒否権はないからな!ホラ、行くぞ」
「ってちょっ、待てぇぇぇ!!!!」
普段悪ぶって憎まれ口を叩いている狩屋だが、こういう突発的な事態には弱いらしい。霧野に手を握られ、動揺しながら無理やり引きずられていった。
そして冒頭に戻るのである。


「ホラ、こんなの狩屋に似合うと思うけど、どうだ?」
「えー俺こんな趣味してないっすよー。むしろこっちの方が」
「待て待てそれはダサいって!そうかだからお前はユニフォームの裾ズボンに入れてんだな……」
「それは今関係ないだろ!?」
現在地、とあるデパート内の服飾店。ここにて霧野は保護者根性を発揮し、狩屋に似合う服をとっかえひっかえしている。
狩屋自身はまんざらでもなさそうだが、服の色やらデザインやらで時折霧野と口論にまで発展することも。お前らは女子か。
「よーし決めた、お前にはこれでいい!この俺が言うんだ、どっか出かける時はこれ着てけよ」
「ええええこんなダサいやつを…」
「いや待てその感性はどうみてもおかしい、部の奴ら全員に聞いてみろ、ダサいかダサくないかで言ったら14人中14人全員ダサくないって答えると思うぞ」
「えーでも剣城君とか天馬君とか意外とダサいって言いそうじゃないですかぁー?」
「……いや、それはない」
「何すかその間は」
やっと決まった服を購入し、店を出る。自分のものぐらい自分で持つと言ったが霧野はとりあってくれなかった。

メインストリートをぶらぶら歩いていると、ふとある一点を見て、狩屋が立ち止まった。つられて霧野の足も止まる。
「どうした、狩屋」
「…え、いや何でも」
勢いよくこちらを振り向く狩屋の頭の向こうに見えたのは、クレープ屋だった。
「…お前、あれ食べたいの?」
そう言うと狩屋は真っ赤になって「…別に」とそっぽを向いた。それに内心苦笑し、店へと近づく。
「え、ちょ、霧野先輩!?」
「奢ってやるよ。ホラ、どれがいいんだ?」
「だ、誰も食べたいとは…!」
「いーからいーから、俺が奢りたいの」
「…………じゃあそういう事にしといてあげますよ」
「ハイハイ」
まったく素直じゃない。でもそこが可愛いんだけど、とのろけた事を考えながら霧野は、口では「先輩てば強引なんだから…」とぼやきつつもとても嬉しそうに選ぶ狩屋を見守っていた。


ベンチに座って一休みする。狩屋は、奢ってもらったクレープを無心に頬張っている。
「いやーお前でも食べてる時は可愛いもんだなー」
「う、うるさい!か、可愛くなんか……」
「いや、可愛いからな?」
「ーー〜ッ、先輩の馬鹿ヤロー!」
顔を真っ赤にし、口元にクリームをつけたまま凄まれても、全然怖くもなんともない。「ハイハイ」と微笑みながら口元のクリームをすくい、ペロッと舐める。その瞬間、狩屋は思考停止してしまった。
「な、な、ななな…い、いいい今……!」
「ん、美味いな。俺も買えばよかったなー」
「何やってくれてんですかアンタはー!!」
わーぎゃーわめく狩屋だが、霧野は全然取り合わない。これが年上の余裕なのか。傍目からはどうみてもイチャついているようにしか見えない彼らに声をかけたのは、意外な人物だった。
「あれ、霧野と狩屋?お前らこんな所で何やってんだ?」
「え」
「円堂監督!?どうしてこんな所に…?」
「んーちょっと買い物になー。ところでお前らは?」
「え、えーとこれはその…」
「デートしてます」
「ちょっと先輩ぃぃぃぃぃ!!??」
さらっと言った霧野に、顔を真っ赤にして怒鳴る狩屋。
円堂はカラカラと笑って、「そーか、お前たちもか!」と言った。
「…ん?」
「お前たち“も”?」
「ああ、そうだ!俺の方もまあ、デートみたいなモンだな!」
「ええええ!?」
「にしては、相手の姿が見えないんですけど…」
素で驚く霧野である。一方狩屋は、以前天馬から聞いた、彼の奥さんの話を思い出していた。
「もしかして監督のお相手って、奥さんなんですかー?」
「夏未の事か?いや違う、今回は…」
円堂が説明しようとしたところで、不意に「円堂くーん!」という声が人混みの向こうから聞こえてきた。
「……ん?どっかで聞いた事あるような…」
狩屋が嫌な予感がすると同時に、その男は目の前に現れた。
「円堂くん、お待たせ!ごめんね遅くなっちゃって」
現れたメガネをかけた赤毛の男を見、狩屋は「げ……ヒロ兄なんでここにいんの……」と呟く。
「おーお帰りヒロト!どうだ、用事はもう済んだのか?」
「もちろん!ごめんね一人にさせちゃって……」
「なーに気にすんな!おかげでコイツらに会えたんだし!」
コイツらもデートしてんだって!と笑顔で指し示された方を向いたヒロトは、少し目を見開いた。
「あれ、マサキ、こんな所でどうしたんだい?」
「…………それはこっちのセリフだよ。なんでこんな所にヒロ兄がいるんだよ……」
結構見られたくない人に見られてしまった。駄目だこの義兄は後で絶対からかってくる。
「何ってそりゃ、円堂くんとデートだよ」
「見りゃ分かるわ!!さっき監督も言ってたし!そういうんじゃなくて、仮にも社長がンな事してていいのかよ!?社長だろうが、一応!」
「あははそんな事か、俺の事心配してくれるなんて、兄ちゃんは嬉しいよマサキ」
「別に心配してんじゃねぇよ!」
「仕事の事なら大丈夫、全部リュウジに押しつけたから」
「リュウジ兄ちゃんも可哀相だなオイ!?」
ヒロトの前ではついつい素に戻って一方的に突っかかるが、彼はのらりくらりとかわして爽やかな笑みを浮かべている。
あのメガネ人差し指と中指でパリンてしても誰も怒らないよな、と独り相撲状態でいい加減疲れてきた狩屋は半ば本気で考える。
「狩屋、何か楽しそうだな!」
「ええ、そうですね」
「誰も楽しくねえぇぇぇぇぇぇ!!!!」
しばらくは狩屋の叫び声が響いたという。


「ところで落ち着いたかい、マサキ?」
「だ、誰のせいだと……!!」
ぜいぜい息を切らせながらクールダウンした狩屋は、「奢りだ!」と円堂が買ってきたスポーツドリンクを一気に呷った。
「ったく、あーサイアク……よりによってヒロ兄に会うとか、どんだけ運がねぇんだよ俺……」
「まあまあ、よかったじゃないか楽しそうで」
「誰が楽しそうなんですか、誰が!」
「お前だよ、なんかいつになくイキイキとして見えたなー」
「んなモン目の錯覚ですよ……!!」
はあ、と溜息をつく狩屋に、霧野は更に爆弾を落とす。
「さっき円堂監督とも話してたんだけどさ、これから四人でまわんない?」
「何言ってんすか先輩!?」
途端に目を剥く狩屋。ヒロトは「いい考えだね、それ!」と言うし、円堂は笑顔である。
狩屋は断固反対したが、円堂の「もしかしてこれ、Wデートってやつになるのかな!」という一言で撃沈した。


「何故、こんな事に」
「と言いつつ実は結構楽しんでるでしょ、マサキは」
「はい、そうですね。俺もコイツがこんなに浮かれている所は初めて見ました」
「う、うるさいよそこ!!」
図星を指され、真っ赤になる。いくら狩屋がわめこうが、攻めな二人にとっては可愛いとしか見えてこない。
「ちょっと、円堂監督も何か言って下さいよ!」
「いや、ホント今の狩屋は新鮮だなーとしか言いようがないなあ」
「ちょっとぉぉぉぉぉぉ!?」
もうやだこいつら。ぶんむくれてしまった狩屋に、霧野は「すまんすまん」と謝る。
「いやーお前の反応が可愛いくてつい調子にのった。なんかまた奢ってやるからそうむくれるなよ」
「…………奢ってもらうよか先輩ともっと二人きりでいたい、です」
ボソッと思わず呟かれた声は、聞かれていないようにという狩屋の願いを裏切って、バッチリ霧野の耳に届いていた。まじまじと見つめてくる霧野の視線に我にかえり、ジワジワ赤くなっていく、頬。
「狩屋……」
「ッ、今のナシ!キレイさっぱり忘れて下さいぃぃぃぃぃ!!!!」
「…狩屋!」
「ってわあああ抱きつくなぁぁぁぁぁ!!!!」
ぎゃーやめろはなせー、とジタバタもがくが、霧野に力でかなうはずもなく。なんでこんな女みたいな顔してるくせに俺より力強いんだよ、理不尽すぎる。
「いやー、青春だなー」
「ふふ、よかったねマサキ」
「何がよかったねだよ恥ずいからやめろー!!」
昔を思い出しながらの円堂のコメントと共に、生暖かい目で見守るヒロトである。
このままでは話が一向に進まない。そう思った霧野はようやく狩屋を解放し、「じゃあなんか食べに行くか」と言った。
「え、お前ら昼まだなのか?」
「ええまあ」
「あ、だったら俺が奢るよ、からかったお詫びにね」
「おおっヒロト気前いいなあ!」
「ふふっ、もちろん円堂くんもだよ」
「やりぃ!サンキュなヒロト!」
「ヒロ兄奢ってくれるんなら思いっきり高いやつ頼もうっと」
「待て狩屋遠慮ってもんが…」
「いいんです、どうせあの人社長だし。絶対儲けてるだろ」
そんなこんなで四人はレストランへと向かったのだった。


食べてる最中、円堂とヒロトがカップルよろしく食べさせあいっこやら何やらやり、それに中てられた狩屋や便乗して「はい、あーん」と神童譲りの王子様ばりな笑顔でスプーンを差し出した霧野などバカップルな光景が繰り広げられたが、比較的和やかに食事は終わった。
周囲からは、彼らの行為を偶然見てしまった女子たちからの黄色い悲鳴が上がったとか上がっていないとか。(一部「萌え!」という声が上がっていたらしい)
「で、次はどこ行く?」
「あ、俺ゲーセン行ってみたいっす」
円堂の言葉に反応する狩屋。
「ああ、ゲーセンねぇ……俺達、そんな所にはなかなか行けないもんね」
どこか寂しげな表情で笑う。そんなヒロトを円堂は、そっと抱きしめた。
「そんな顔すんなよ。過去は過去、今は今、だろ?お前が責任感じる必要はないんだ、お前は精一杯やっているじゃないか」
「……うん、ありがとう、円堂くん」
「……まあ、別にあんたのせいじゃないし。こんなんでも俺は幸せだよ」
「マサキ……ごめんね?」
何の話をしているのか分からず、ついていけない霧野である。おそらく狩屋のプライベートな事なのであろう。余計な詮索はせず、いつか話してくれるまで待つ。
そんな彼の目に入ってきたのは、どこか見覚えのある、光沢のあるグレーの頭だった。見覚えのあるどころではない。先日自分に用事を押しつけた張本人の神童である。
「おい何で神童があんな所に…」
「え?キャプテンいるんすか?」
「あいつ…こっち来るんなら自分で買えよこんくらい……」
「あれ、でも天馬くん今日キャプテン家に行くって言ってましたけど?」
「は?……ああなる程ね、読めた」
ならば自分に用事を押しつけた事にも納得がいく。つまりあれだ、あいつは部内での仕事よりも後輩とのデートを優先したって事だ。仕事しろ。
「ん、霧野先輩、なんか天馬くん達の後ろに誰かいません?」
「え、何どこだ……って、何やってんだあいつら……」
デートしている天馬達の後方にいるのは、剣城やら倉間やら浜野やら速水やら。おそらく野次馬がてら尾行しているのであろう。
「あいつらもご苦労なことだなー…」
「ぶぷっ、これ写メって後で送りつけてやろーっと」
嬉々として携帯でその光景を写真に収める狩屋を、霧野は止めはしない。たまにはあいつら(主に神童)もキツいお灸が必要だろう。
「ん、どうしたんだ?」
「なに…って天馬くん?」
「え、ヒロ兄なんで天馬くん知ってんの!?」
「ん、まあちょっとね」
はぐらかされた。一体あの友人とこの義兄との間に何の関係があるのだろうか、首を傾げながらもゲームセンターへと向かう狩屋だった。


その後、ゲームセンターにて対戦型の筐体で本気の闘いになったり、アイスホッケーでまたしても本気の闘いになったり、UFOキャッチャーで霧野が思いもかけない特技を発揮したり、色々規格外な円堂の姿を見たり、挙げ句の果てにはヒロトが霧野と結託して強引に引っ張り込んでプリクラを撮ったり(主な被害者は狩屋)、各々はっちゃけていた。結構な時間が経ち、戦利品を手に店を出た時にはもう日が暮れていた。
「うっわ、もうこんな時間か」
やべーあんま遅くなると夏未に怒られる、とぼやく円堂に、「送っていくよ、円堂君」とヒロトが言う。
「俺も園に行くから、ちょっと待っててくれる、マサキ?」
「えーえーどうぞごゆっくりー」
じゃあ駅で待ち合わせね、と段々遠ざかる二人を見送り、言われた駅へ途中まで歩く。
「いやー、今日は楽しかったなー」
「俺は疲れましたよ、主に先輩の無茶振りとか無茶振りとか無茶振りとかで」
「まーたそんな事言って、本当はお前も楽しかったクセにー」
「ああもううるさいですね先輩は!」
ふいとそっぽを向く狩屋の顔が赤いのは、決して寒さのせいだけではないのだろう。言葉とは裏腹に、まんざらでもなさそうな顔でマフラーに顔をうずめる狩屋を見、ふといい事を思いついた。
「おーい狩屋、ちょっとこっち向けー」
「は?何すか先ぱ……!?」
こちらを向いた瞬間にちゅ、と音をたてて真っ赤になった頬にキスを落とす。何をされたのか把握した瞬間、狩屋の顔はこれ以上ないというくらいに真っ赤になった。
「あはは、狩屋すごい真っ赤だな」
「な、ななな……い、今…………!!」
「ん?それとも口の方がよかったか?」
「え、いや、ちげぇよ!!こ、ここここんな人通りのある所で………!!」
それ以上は、あまりの羞恥に言葉が詰まって言えない彼に霧野はまた笑い、乱暴に頭を撫でた。そして手を後頭部にやったまま自らの方に引き寄せ、囁く。
「今日は来てくれてありがとな……好きだよ」
急な愛の告白に、もはや何も言えず頬を紅潮させるしかない狩屋である。
脳のキャパシティがオーバーして動けないのをいい事に、霧野はもう一度、今度は唇にキスを落とした。


一方。
「いやー悪いな、わざわざ送ってもらっちまって!」
「別に大丈夫だよ、俺がしたくてしたことだし」
それにしても今日は楽しかったなぁ、と呟く。
「あの子も、なんだかんだ言って楽しそうだったし……」
「ヒロト、」
「なあに、円堂くん?」
振り返ってみると、円堂は、どこか寂しそうな笑顔だった。
「ごめんなヒロト、俺の我が儘に付き合わせてしまって」
「そんな事、」
「ないって言いたいんだろ、お前は優しいからな。俺、今まで、そんなお前の優しさにずっと甘えてた。でも、もう今日で終わりにする。」
「…円堂、くん、」
「俺もお前とは会わないようにするから。」
「円堂くん、」
「だから、俺の事なんか忘れて、お前もはやくいい人を見つけろよな、」
「円堂くん!」
そんな事言わないで、尚も言い続けようとする円堂の言葉を遮る様に、ヒロトは言う。
「ねえ、円堂くん、俺はこの先結婚するかもしれない。現に君だって、結婚しているしね。子供だって生まれるかもしれない。そうしてそのまま、孫ができて、老いて、奥さんや子供達と笑い合いながら死んでいくのかもしれない。でも、」
俯き震える円堂の頬にそっと手を添える。
「君が結婚していても、例え俺が結婚しても、いくら道を違えようと、そして死ぬまでも、死んだ後でも、いつまでも君の事を愛しているよ」
だから、心だけでもいいから、君の事愛させてよ、と言えば、円堂は、「……ああ、俺もだよ、ヒロト」と、泣きそうな笑顔で応えた。
許されないとは分かっている。けれど、せめて今だけは。
そう願いながら触れ合った唇は、甘くてほろ苦かった。




霧野は、ヒロトに言われた言葉を思い出す。
『例え何があっても、君は、君だけは、あの子の手を離さないであげてね。』
真剣味を帯びた眼差しに、無言で頷く。
『そして、あの子の傍にいてあげてね。ああ見えて結構寂しがり屋だから……』
『それは分かってますから大丈夫ですよ』
そして二人で笑い合ったのだった。


「ふふっ、」
「何ニヤついているんすか先輩ー」
「んー、ちょっとなー」
「そういえば先輩、さっきヒロ兄と何か話してませんでした?ねえ?」
「教えなーい。男同士の約束、だからな」
「何すかそれー!」
俺も男だろ!と憤慨する狩屋を軽く流し、霧野は笑う。
空には星が、瞬いていた。



その言葉は、自分たちは幸せにはなれないから、せめて子供たちだけは、という大人達の願いでもあったのかもしれない。







ぼくはきみにをする








最初に一言。
長くなりました、すみません!(ジャンピング土下座)
張り切った結果がこれだよ!←
璃愛様に捧げます、どうぞ煮るなり焼くなり好きにしてやって下さいましー。

璃愛様との会話で生まれた(?)ヒロ円蘭マサWデート話でしたー。といいつつヒロ円あんまり出ていませんが…すみません!
そして視点が分かりづらい……イカン精進せねば。あとタイトルに深い意味はありません。なんかもう、上手いタイトル出てこなかったので……
服のセンスがないのは私の方です、なのでそれっぽい描写がびた一文たりともございません。←

実は、途中までは、あのハイテンションなノリで突っ走ろうとしていたのですが、福/山/雅/治の「はつ恋」を聞いて、あれこれ10年後ヒロ→円じゃねって思ったら最後の方があんなどシリアスに……
だからあそこだけテンションがた落ちしているのです、でもあれが私の理想のヒロ円なのです、はい。
くそうヒロトめ……急に勝手に喋りだしやがって……でもそんな君がだいすきだよ!円堂くんラブ!なところとか!←

それでは、ここまで読んで下さりありがとうございました!
誤字脱字、書き直し受け付けますからね、璃愛様!←




忘れていたおまけ





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