ともだち【冒頭/試読】 「俺、美夜のこと好きなんだわ」 そう言った凌のにやけ顔を、大切な思い出のシミにしたくなんかなかった。 好きな人が誰かを先んじて言い出した奴は卑怯なほど有利だ。目の前にいる親友が恋敵に変わらないという保証は? 邪魔しないでいてくれるだろう、あわよくば応援すらしてくれるかもしれない、そんな自分に都合の良い考えはどこから来た? それともお前は僕の気持ちを分かっていながら牽制したのか。 「……知ってた」 体の中心から湧き出てくるタールのような感情を止められない。いつものように何でもないふりをしている親友の姿は裏返り、ねばねばとしたドス黒い人間が現れる。 「っあー、だよなぁ。俺ら三人いっつも一緒だからさ、旭なら気付いていると思ってた」 「だったら凌も気付いてただろう?」 「僕も好きなんだ。凌が、神田さんを好きになるずっと前から」 (続く) [ ] | [ ] ≪ 一覧 |