僕の目に映る彼女は、きっとみんなの目にする彼女とは違って見える。



もしくは、彼女の成分が人とは違うのか、僕にだけ反応させる因子があるかのどちらかだ。



そうでも思わないと、こんなにも彼女に引き寄せられる自分がわからなくなる。



だけど僕の好き、あぁ好き?言うと薄っぺらく感じるこの単語は、彼女への想いに対する正しい選択じゃない。



僕のそれは、優しくない。彼女を考えるときに優しくなんて、もうなれない。



***



放課後を告げる鐘が鳴った。図書室へ向かう途中、昇降口で座り込む彼女を見つけた。側には鞄が二つ、そして何故かブレザーの上にブレザーを掛けられていた。



「帰るの?」



しゃがみこんで顔を覗き込めば、真っ赤な顔。そうか、熱が。



「きょうは、おとなしく、かえるね。」



喋るのも辛そうな彼女を見ながら、別のことばかり思った。こんな、無防備な姿で現れられたら僕はどうしようもなくなるよ。



伸ばした手を、不思議そうに彼女が見ていた。



「秋、悪い遅くなった。」



誰かがこっちに走ってくる。来るなよ、放っておけよ、邪魔、するな。



「あれ、不破?見ててくれたのか、そいつ毎年GW前に体調崩すんだよ。」



僕の知らない彼女、実際はそんな彼女でいっぱいだ。クラスも違う、家だって離れてる。共通の友人もいなくて、交わす言葉も少ない。わかってたよ、わかってたけどしょうがないんだ。



彼女のことを僕以上に知ってるやつらが消えたらいいのに。



「穂村さん、お大事に。」
「ふわくん、ありがと。」



ばいばい、と力なく振られた手をずっと握りしめていたかった。彼女の手を簡単に取る相手を、殴りたかった。



自転車の後ろに座った彼女は、ダラリと相手に凭れていて、その場所も熱を受ける体も、自分ではないことにイラだった。



その日は、一頁も一行も一文字も頭には入らなかった。



彼女の熱が欲しかった。

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