◇The Little Prince(森山)

※息子(アラタくん、変換不可)が出てきます。苦手な方は申し訳ありませんがそのままお戻りくださいませ。
















目に入れても痛くないどころか入れられるものならコンタクトの様に嵌め込みたいし、スーツの内ポケットに仕舞えるなら奥さんとセットで収納して、仕事中でもいつでもどんなときでも愛でていたいと思っている俺の可愛い息子は、どうしたことか大人の男に対する警戒心がやたらめったら強い。奥さん曰く、警戒心じゃなくて子供にありがちな人見知りだと言う。正直人見知りの方が実の父親である俺には辛い現実だ…それもこれも、一年間に及ぶ海外勤務のせいだ商社この野郎。何が悲しくて2歳になったばかりの幼い息子と「お子さんがいるなんてとても思えない」って言うセリフがお世辞じゃなくて本当の驚嘆として出てくるウチのきっれーなお嫁さんを置いていかなきゃならなかったんだ。一年の長さを甘くみないでくれよ!!可愛い盛りの息子の一年間をペロペロ(文字通り)する機会を俺から奪いやがって…社畜は辛いねどこまでも…俺が抱っこした時の息子の固まり具合を思い出しては痛感してるよ…



だけどな!息子がやりたいことなら何でも、挑戦してみたいって言うなら出来るだけその芽を伸ばせるように、親としては支えてやりたいわけだ。そのための資金を俺は本日もガッポリ稼いできますともよ!!




「ほらアラタ。パパにいってらっしゃいは?」
「…ば、ばぃ、ばい…」
「アラタが手を振りながらばいばいしてくれるのは可愛いけど“パパ大好き!!行ってらっしゃい”って言ってくれないかな〜そうしたらパパ、今日もお仕事モリモリ頑張れるなぁ〜」



それでもな!馬力を出すために鼻先にチラつかせた人参が用いられるように、日々のモチベーションアップ・維持のためには各々必須要素があるわけだ。わかるだろ?アナタは何かな?ちなみに俺の場合は奥さんと息子が俺をデレデレに甘やかしてくれることだよ!



「アラタ、パパに行ってらっしゃい出来る?」
「で、出来る…!!」
「じゃあお耳貸して?」
「ぅん…、うん、言える、だいじょうぶ。」
「ママと一緒に言おうね。よし、せーの、」
「「パパ大好き!行ってらっしゃい!!」お、凄いねアラタ。」
「…パパ、パパ、頑張れる!!!!」
「はい、本当に行って来て下さいね、遅刻しますよ〜」
「もー泉ったらチョークール!!クールビューティー!!」
「アラタ、ばいばいしてあげて〜」


息子に大好きと言って貰い(言わせたとか言うなよそこ)、奥さんに冷静にあしらわれ(ご褒美です)二人揃ってパタパタと手を振ってくれた時の眼福ぶりといったらない。男の子は奥さんに似るって言うけど、見た目こそ親子だなぁって感じさせる二人が正反対の性格をしてるものだからまた美味しさ相乗効果と言うか。



そんな感じで毎朝俺は元気を注入して貰い、ルンタッタと小躍りスキップしかねない勢いで公道をズンズン進み、すし詰め状態の地下鉄も両手を挙げて耐え抜き、颯爽とデスク上のノートパソコンを開く俺を、向かいの席の宮地(何の因果か同期)が舌打ちをしながら毎朝の恒例行事の様にため息を大げさに吐いていた。



「ふふん、羨ましいだろう。」
「はいそうですねって言われてぇのかよ。」
「え、言ってくれるの!?」
「言うかよ…」
「幸せのおすそ分けさせてくれよ!!ほら見ろ、アラタくんのお写真様だぞ!!」



今日も元気にスマフォのアラタファイルを見せていたら険しい顔をしていた宮地が徐々に悲しそうな、俺をチラっと見ては憐れむような表情をするようになった。余談だが、俺は文句を言いながらもちゃんと写真を見てくれる宮地が割と好きだ。良いヤツだと思う。



「お前、嫌がられてるぞ…?」



前言撤回。さっきの言葉はぐしゃっと丸めて清掃公社のトラックに呑み込んで貰うことにする。もしくはシュレッターって言う文明の利器で粉砕しておこう。木端微塵決定。



「一年間の単身赴任が成せる罪だな。」
「俺は無実だ!!罪状を突きつける相手が違う!!」
「スカイプとか毎日してたんじゃねぇの?」
「あぁうん…画面越しの会話と、実際に家にいるかどうかっていうのは違うみたい…」
「子どもからしてみたら見知らぬデカい男が我が物顔で家に居座るようになったら恐怖だわ。しかもやたらウザい上に大好きな母親にもちょっかい出してくるときた。」
「お れ は 父 親 だ !!」
「息子がそう思うかどうかは別な。」



少しずつ慣れてきたとは思うものの、抱き上げて頬をすりすりすると“なんてことしやがる…”って顔をするし、泉と俺が二人で話してるだけで不安そうにそわそわする。君のママを独占したいとは思うけどそこまで余裕のないパパじゃありませんよーって顔してその都度そそくさと離れる様にしてる。本当は独占したいけど。最近じゃその嫌がる様すら可愛く思えてきて、そのことを試しに泉に言ったら“これ以上嫌がられてもいいならお好きにどうぞ”って宣告された。確かに、これじゃあ好きな女の子に意地悪する小学生と同じ心理だ。我が息子もこんな幼稚な父親でさぞびっくりしていることだろう。



「そのうち慣れるだろ?お互いに。」
「お互いに?俺はいつだってアラタ、ウェルカム!!状態なんですけど!?」
「あのさ、俺は結婚もしてないし子供もいないから想像でしかないけどな。ムスコがお前に緊張してるように、お前だって気づいてないだけで無理してんじゃねぇの?あっち行く前、そんなに毎日ハイテンションだったか?」
「いや?いやいや?」
「その“いや”はどっちのいやだよ。」
「宮地、お前は凄い!!さすが俺の親友!!」
「誰がだよ!!俺とお前はただの同僚だ!!」
「俺が戻ってきたときレアもの宮地スマイルタダでくれたじゃーん?」
「いや、いやいや笑ってねぇからあれは面倒なヤツが帰って来やがったっていう苦笑いだよ…!!」
「いいんだ宮地、素直になれない君も好きってね!!」
「俺の半径25m以内に入るな。」
「まさかのプール!!それ俺に仕事するなどころか課に入るなってこと!?」



目から鱗が落ちた。



そうだ、俺、けっこう緊張してた。パソコンやスマフォの画面越しから見える俺の子どもは、俺の知らないところでどんどん成長していく。言葉数もぐんと増えて、表情も豊かになって、まるで俺の知らない人間になっていく。家族がいるはずなのに側で見守れないことがこんなにも歯がゆく自分を独りにすることだとは思わなかった。俺のことを見る、アラタの不安そうな目が怖かった。親としてこの子を安心させられていないんだと突きつけられているようだったから。



「ま、あっち行く前はお前にべったりだったんだし、その内慣れるだろ。」
「そうかなぁ…」
「なんだよそこは自信溢れさせておけよ。メソメソジメジメして逆にウザいわ。」
「宮地っ…!!」
「マジでうっざ轢く、いや引くわ。これ以上構ってられねぇし取引先行ってくる。」
「そのデレツン振りも好きだ!!」



宮地に慰められ大いにけなされながら、俺は黙々と本日の業務に励む。時々、デスクに飾る写真を眺める。まだ俺に無償の信頼を預けてくれていた頃のアラタと、俺が側にいると笑顔が固くなる最近のアラタ。どっちも変わりなく可愛い俺の一人息子に違いはない。あと少し、俺が距離をグイッっと縮めてしまえばいいだけだ。待ってろよ、パパは今、何でも出来ちゃう気分なんだ!!



***



「くぁー、肩、凝った…」
「おっさんだな、宮地!」
「同い年なんだからお前もだろ。よぉおっさん。」
「俺はおっさんじゃない!!」



19時過ぎのフロアには、俺と宮地、後はパラパラと違う担務を受け持つ数人が残るばかりだった。ノー残デーのこの日にデスクに座っているのは仕事が佳境に追い込まれているか単に打ち合わせ帰りか、明日が休みの人間だけだ。



「森山、お前いつあがんの?」
「もーちょい。後確認のメール、何通か出したら店仕舞い!」
「プレゼン今月末だっけ。」
「そう。今のところ、順調かなー。」
「そいつはオメデトウ。ところでお前のスマフォ、さっきからすげー光ってんぞ。」
「え、気づかなかった。」
「ほら、着信。」
「あれー泉からだ。仕事中に電話は珍しいな…もっしもし、泉?どうしたー?」



愛しい奥さんからの電話に意気揚々と出たものの、反応が全く返ってこない。電話越しに何かが動く音はしているものの、声が聞こえない。これはもしかしなくても間違って押しちゃったパターンだろうか?大体この時間はアラタと食事中で、俺に電話を掛けてくる余裕もないはず。



「泉〜?間違いか〜切るぞー?」
「ぁ…ぱ、ぱ?」
「お?なになに、アラタ?アラタが電話してくれてるの?アラタ―!!パパだよー!!」
「ぱぱ?ぱぱ?」
「うん、どうしたの。ママの電話で遊んでるのかな?」
「パパ!!パパー!!」
「アラタ?…どうした、何かあったのか?」
「ま、ままが、ままが…!!」



その後のことは、写真で切り取ったように断片的に覚えてる。俺の様子から、家族に何かあったと察した宮地がタクシーを呼んでくれて、俺が超高速で身支度(メール送ってパソコン閉じて鞄に必要なものを突っ込むだけ)を終える頃には一緒に会社を後にした。あいつはもちろん地下鉄でいつも通りに帰って行ったけど、俺がタクシーに乗り込むのを確認しながら“人手が必要なら何時でも構わないから連絡寄越せ”と滅茶苦茶頼もしい捨て台詞を残していった。



「運転手さん、悪いけど急いで下さい!お願いします!」



俺の(滅多に出さない)気迫に押された運転手のおっさんが、華麗なるドライビングテクニックと長年の道路情報を披露しながら本当に最短ルートでマンションまで向かってくれた。その間、俺はずっとスマフォでアラタに声を掛け続けた。



「アラタ、パパね、もうすぐお家に着くよ!今、この間ママと一緒に来た大きな滑り台がある公園が見えたよ!覚えてる?一緒に何度も滑ったよなー。」
「うん、パパが、膝に乗せてくれて、ビューンって」
「そうだよな、凄い速かったよなぁ。またママと三人で一緒に遊びにこような。」
「今度は、ボート、乗る?」
「そうだな、乗ろうな!たくさん池にボートが浮かんでたなぁ、アラタは良く覚えてるなぁ。」
「パパ、まだお家着かない…?」
「もうすぐだからな!アラタ、パパの分もママのお手て握っててくれるかー?ママ、アラタが側にいてくれたらそれだけで元気になるからな。」
「ぎゅって、してる!!パパとアラタの分で、ママのお手てぎゅって。」
「アラタ、ありがとなぁ。」



最初は涙声で何を言っているのか正直要領を得なかったものの、泉が良くない状況にいることだけはアラタの様子から理解出来た。怖いだろう、心細いだろう、母親が呼びかけても自分の名前を呼んでくれないなんて耐えられないはずなんだ。それでもアラタは俺に助けを求めてくれた。必死に出来ることをしてくれた。



だからもう後は、全部俺がまるっと引き受けるんだ。



「アラタっ!!」
「パパ!!」
「アラタ、おいで。」



ガチャガチャと玄関を開けてリビングに飛び込めば、ソファに身体を埋める様にして目を閉じている泉と、彼女の片手を両手で一生懸命に握りしめているアラタがいた。たくさん泣いたんだろう、目を兎のように赤くさせたアラタがパタパタと駆け寄ってくる。俺も走ってアラタ抱きかかえるようにしてをギュっと抱き締めた。こんなに小さな存在が、それでも俺との約束を守って手を繋ぎ続けてくれていたんだ。



「アラタ、ママのこと守ってくれてありがとう。」
「ぱぱぁ…ぱぱぁ…!!」
「うん、うん…」



アラタを抱きしめたまま泉の顔色を確認すれば、まるで血の気が失せているようだった。ドタバタと入ってきた俺にも全く反応を示さないなんて普段の彼女ならまずあり得ない。



「アラタ、降ろすけど大丈夫か?パパな、ママの様子を確かめたいんだ。お手伝い、頼んでもいいかな。」
「うん…!!」
「うん、頼もしいぞアラタ。」
「が、がんばる。」
「…泉、待たせてごめんな。俺の声、聞こえるか?」
「…う、ん…」
「気持ち悪いのか?それともどこか痛みがあるのか?今、救急車呼ぶからな。」
「…アラタ、は?」
「俺の隣にいるよ。お前の手、ずっと握ってくれてたんだよ。」
「ん…、アラタ、」
「もう少しの辛抱だからな。」



努めて冷静な振りをして片手でアラタの手を握り、片手で泉の頬を撫でていた。サイレンが耳に入り始めた頃から、俺は自分の中で巻き起こった震えを内心収めるのに必死だった。アラタを不安がらせるようなことは出来なかった。でも、目の前で泉が苦しんでいる姿を見ているしか出来ない自分が情けなかった。声を掛けて手を握って汗を拭いて彼女の苦しみ拭ってやりたくても俺には無理な話だった。一年間、離れて過ごしている時でさえ、ここまでの恐怖感は抱かなかったのに。俺は今、こんなにも側にいるのに何一つ彼女にしてやれない。



「パパ。」
「…アラタ、どうした?」
「ん、ぎゅ。」



俺が考えても無駄な後悔を勝手に始めた瞬間、アラタが俺を、抱き締めてくれていた。抱き着いたんじゃない、回らない腕だけどしっかり俺を抱き締めてくれた。



「パパは、ママの手、両手でぎゅうってしてあげて。」
「アラタ…」



救急車が部屋に到着しても、一緒に乗り込んでも、泉が診察室に運ばれた後もアラタは俺から離れなかった。二人病院の廊下で、アラタは俺の膝に乗ったまま時々頭をカクカクさせ目を擦りながらもずっと泉の診察が終わるのを待ち続けた。



***



「で、俺はオメデトウって言やぁいいの?それとも昨日は大変でしたねって言やぁいいの?どっち?」
「明るいほうが良いな〜でへへ〜」
「…ウザさも極まるといっそ清々しいってこういうことか。」
「でへへ。」



泉を苦しめていたのは、つまり、そう“悪阻”だった!!


「泉のお腹に新しい命が宿ってるって思うと物凄く嬉しいんだけど、ほんとに辛そうでさぁ。」
「アラタの時はどうだったんだ?」
「それがアラタの時は全然なかったんだよね…ケロッとしててさ、だからってわけじゃないけど妊娠がわかったのも遅かったし。」
「まぁその時々によって違うんもんなんだろうな。」
「今週いっぱいは大事を取って入院することになったんだよね。食事が出来ないから、点滴。」
「そりゃー心配だな…アラタは?」
「むこうのお義母さんが日中預かってくれてる。病院にも連れてってくれてる。で、俺が仕事終わりにお見舞いに行って、そこで交代。」
「パパはエライナー。」
「まぁね!でも本当に偉いのはアラタだよ。俺が家に着くまでちゃーんと母親のこと守ろうとしてた。ちっちゃなナイトってああいう子のこと言うんだろうなぁ。」
「それはお前の息子とは思えない。良かったな、似なくて。」
「いや?いやいや!?まさしく俺に生き写しですけどもなにか!?」



診察室から看護師さんに呼ばれてアラタと二人手を繋いだまま向かい、先生に促されて椅子に座るまでは何を言われるのか聞くのが恐ろしかった。


「『おめでとうございます。』って、一瞬理解できなかったけど先生の顔見てたらジワジワきてさ。あれって誰に何回言われても嬉しいよなぁ。」
「はいはい、おめでとさん。」
「おー、ありがとな。」
「アラタも喜んだんじゃねぇ?弟か妹が出来んだし。」
「最初はポカンてしてそれも可愛かったけどね。お兄ちゃんになるんだよって俺と泉で説明したらパァアって表情輝いてた。アラタさ、毎日お祖母ちゃんとお兄ちゃんになる勉強してるんだって。」
「ぶっは!!んだよそれ、子どもって考えること面白れぇなぁ。」
「もう可愛い可愛い超可愛い。風呂入ってる時に報告してくれるんだよ。」
「ふーん、良かったなアラタと上手くいって。」
「はっ!!言われてみれば泉のピンチっていう危機を乗り越えて父子の絆が前以上に深まった気がする…これぞ世に言う荒療治!?」
「はいはい、おめでとさん。」



あれ以来、アラタが俺に全幅の信頼を寄せてくれるようになったのがわかる。俺の姿を見つけると本当に嬉しそうに一直線に走ってくるんだ。前しか見ないから転びそうになるんだけど、それでも俺に向かって、全速力で走ってきてくれる俺の息子がとても愛おしい。



「アラタは弟と妹と、どっちがいいのかなー?」
「ぼく…どっちも!!」
「そっかー、どっちもかー!!」
「どっちもだいじにする。」
「アラタ…!!ほんとに出来たお兄ちゃんなんだな…!!パパ、涙腺崩壊する!!」
「由孝さん落ち着いて。アラタはすっかり頼もしいお兄ちゃんだね。」
「でもね、まだまだ勉強足りないの。ぼく、お兄ちゃんになるんだもん。」
「聞いたか泉…!!」
「これはさすがの私でも微笑ましさと可愛らしさと頼もしさに涙が…」



退院の日、アラタに小さな花束を抱えさせ、そんなアラタを俺が抱きかかえて泉を迎えに行った。やっぱり痩せてしまったけれど、それでも倒れた日よりずっと顔色の良い彼女を見て俺もアラタも改めて笑顔になった。



「パパ、滑り台のある公園だ!!」



帰り道の車の中で、後ろの席からアラタと泉の楽しそうな声が聞こえてくる。その会話に聞き耳を立てていたら、いつの間にかあの時アラタと話していた公園を横目に通り過ぎるところだった。



「今度連れて来てやるからな〜ボート乗るんだろ?」
「うん!でも、まだいいの。」
「え?アラタ、あの公園大好きだったわよね?この間もパパと芝生でサッカーするんだーって言ってなかった?」
「うん、遊びたい。でも、楽しいことはみんなで、じゃないの?」
「パパと、ママと、アラタじゃダメなのか?」
「ダメ。」
「ねぇアラタ、どうして?」
「うんあのね、四人になったら行くんだ!!」



鏡越しにアラタが泉のお腹を撫でている様が見える。ハンドルを握る自分の手に思わず目を落とした。さっきまで俺と繋いでいた手は、掌に収まるサイズで。まだ君だってこんなに小さいのにな。それでもこんなにきちんと、お兄ちゃんになろうとしてくれてるんだな。



「由孝さん、涙で前が見えないとか止めてね?」
「泉、お前も声の震えが隠せてないぞ?」
「私たちの息子がこんなに可愛いのが悪いのよ!いったいどこの誰よこんな可愛い息子を生んだのは!!」
「息子って言ってる時点で自分だろ!!俺だって聞きたいよ!!」



俺たちの可愛い息子は、いつの間にか頼もしい小さな騎士になっていたようだ。



***



「アラタ〜、妹可愛いか〜?」
「か、かわいい!!ぎゅ!!」
「(可愛いが可愛いをぎゅってしてるやばい)か、可愛いよなぁあ!!」
「でもぼく…」
「なんだ?どうした?」
「ぼく、弟も欲しいの。」
「お、弟かぁ、そうかぁ…」
「欲しいの。」
「泉…」
「由孝さん、そんな目で見てもムリですからね。」
「欲しいの…!!」
「アラタのあの目に逆らえるか…!?」
「〜っ!!あ、あと、せめて一年後位でお願いします…」
「アラタ〜もしかしたら小学校に入る頃には、三人兄妹になってるかもしれないぞ?」
「うん!!」



我が家の小さな騎士は、同時に小さな王子様でもあるわけで。可愛い可愛いそんな王子様のお願いを、パパとママが無碍に出来るわけもないんだった。ま、どう転んだって幸せな毎日が目に見えてるんだけどな!





※森山由孝は良いパパになると思います。宮地さんは友情出演でした〜


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