あかんやつ | ナノ

 テニス日吉

ヤバい、チャイムが鳴ってしまった。いや正確に言えば鳴ってから既に10分以上は経っている。くそ、俺としたことが。先生に頼まれた「日直の仕事」をしていたらチャイムが鳴った、らしい。チャイムは聞こえなかった。時計も其処にはなかった。運が悪い、悪すぎる。
作業が終わり、一息ついてその場所から離れるといつもいるはずの沢山の生徒は一切居なかった。何の気なしに携帯を取り出し時間を見たら…ああ、運が悪い。

余りに心地が悪いからコートへ向かった。一度くらい授業をサボったって問題はないだろうし、次の授業しかサボるつもりはない。後で誰かからノートを借りれば良い。取り敢えず今をしのがなければいけない。

俺がそう考えながら部室に手をかけようとすると後ろから声が聞こえた。
「あれ、若くん?」
『…まゆこさん』
「やっぱり若くんだ!らしい人が見えたからもしかしてって思って来たんだけど、大正解だったね」
やっぱり愛の力かな?なんて言うとまゆこさんはにっこりと笑った。恥ずかしいことをよくさらりと言えたものだ。「珍しいね、サボりなんて。今授業中だよ?知らなかったなんてないでしょ?」
そう言いながらまゆこさんはコート近くのベンチに座って俺にも座るよう促した。

『まあ俺はサボったって何の問題もな
いんで。』
「うわ、生意気だなあ、」
にやりと笑ったまゆこさんは妙に綺麗だった。俺の顔が熱を持ったが、いや違う。これは今日が真夏日並みに暑いからだ。

「…若くん?顏真っ赤だよ、」
『今日は暑いんで、顔に熱くらい持ちますよ』
勢い良くベンチに腰掛けたがベンチは一切動かなかった。まゆこさんはまた生意気だなあ、と言った。

『…で、』
俺が言葉を発するとまゆこさんはん、とこちらを向いて微笑んだ。

『まゆこさんもサボりですか?良いんですか、もうすぐテストですよ』
「失礼な!あたしは余裕だよ!」
そう頬を膨らませた彼女が可愛いと思ったのは、きっと暑さのせい。まゆこさんは話を続けた。

「あたしが此処にいるのはねえ、さっき窓から若くん見えたから保健室行くって嘘ついて来ちゃった」
どうしても2人でお話したかったから、またまゆこさんはにっこりと笑った。
太陽の熱が更に俺の顏を熱くさせた。




(まゆこさんて恥ずかしい人ですね、)
(なんだよ、ほんと生意気)
(顔が暑いだけじゃない、心臓が煩い)


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