あかんやつ | ナノ

 テニス石田(鉄)

「ういっす」
「…おお!おはよう、井上!」
「あれ、もう朝練終わったの」
「いや、まだもう少しあるよ。今日は早いんだな」
「ん、まあ、ね」

いつも通りのつもり。ではあるけれど、凄く、凄く、ドキドキしてる。手が、体が震えているのは、寒いから、じゃ、ない。

今日は石田の誕生日だ。だから、いつも石田にはお世話になっているし、私は…うん…だから、石田にプレゼントを渡したくて。喜んで貰えるかは分からないけど、貰って困る物でもない筈の無難なものを選んだ。石田とどれくらい仲が良いかと聞かれたら、それなり、程度。きっと渡したら困惑するだろうな。クラスの人たちに見られたら恥ずかしいから、と、なるべく人が少ない時間を選んだ。ただ、人が少ないとそれはそれで、何だか恥ずかしさがある。
今渡して良いのかやっぱり放課後の方が良いのかああだこうだと悩んでる私のことは知ったこっちゃないのか石田は嬉しそうににこにこしている。

「井上、テニス部見に来たのか?」
「ん?んーまあ、まあ、そう、かな?」
「そうか!」
「何か、嬉しそうだね」
「うん、嬉しいよ」
ぱあっと効果音がつきそうな笑顔から、微笑んでいる、はにかんでいる、と言えば良いのか、そんな笑顔に変わった。この笑顔が、私は好きだ。

「井上は、誰を見に来たんだ?アキラ?深司?」
「………ん?」
「誰か、見に来たんだろ?」
「あー、うん。まあ」
「だから、やっぱりアキラとか、深司かなあって」
「あの人たちそんな人気なんだ?」
「うん。結構ね」
「へえ……ピンと来ないけどな」

じゃあ違うのか、と言って次々と部員の名前を挙げていく。全員否定すると誰だろう、と真剣に考え出した石田。うん、目当ては君だよ。と言っちゃいたいけど。

「………分からない?」
「うん、……うん?」
「どうしたの?」
「いや、……ううん、まさか、ね」

一瞬固まって、それから赤くなって、まさかまさかと繰り返す。もしかして気付いたかな。

「なに、急に」
「いや、あの…」

はあっと軽くため息をつく石田。

「自分で言うのも恥ずかしいけどさ」
「うん」
「俺、今日誕生日なんだよね」
「うん、知ってる」
「だから井上が俺に…って、え!?」
「はい、これ」
「…!ははっ」





あ、またその笑顔





(嬉しそうだね)
(嬉しいに決まってるじゃないか)

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