盛夏


今日はとても暑かった。立っていても座っていても頭がぼうっとしてくらくらしてしまうくらい暑かった。ただじっとしているだけでも充分暑いのに、監督は人使いが荒い。練習中ずっと同じ場所にいるなんて皆無に近かった。そのせいで一宮先輩を見る暇も無かった。今日は私は占いで絶好調のはずだったのに…マダムなんちゃらの意地悪…余計に頭がくらくらしてしまう。

『…い、おーい、』
「っ…!せ、んぱ…」
『何ぼーっと突っ立ってんの、お前帰らないわけ?』

一宮先輩の一言に気付いた頃にはグラウンドに人は私と一宮先輩だけだった。2人きり…じゃなくて!先輩もうユニフォームじゃない!早く着替えに行かないと…!なんて私がわたわたしていると先輩が大きな声で笑い出した。私は目を丸くさせて先輩を見てるだけ。

『慌てんなって、待っててやるから早く準備してこい、』

そう言って先輩は私の頭に手をぽん、と乗せてわしゃわしゃ撫でた(のかな?)笑顔、カッコいい、な。ああもう!ずるい!ばか!イケメン!メガネ!…って、更衣室にも誰もいないじゃん…皆帰るの早いよ!声かけてくれたって良かったのに…でも、まあ一宮先輩に頭撫でられたから良いかな、うん。人前じゃ絶対やってくれないもんね!先輩の彼女なのに、さ…ま、まあ其処が可愛らしくて良いんだけどね!


着替え終わって外に出ると先輩は参考書?を読んでいた。そうか、もう、受験生、だから、先輩、夏、終わったら、引退、しちゃう、先輩、先輩、先輩、先輩…

『…い、おい!』
「せんぱ…!」
『どうしたんだよ、何泣いてんだよ…』
「や、何でも、な、い…です」
『何でもなくないだろ!…言ってみ?』
先輩、優しい、大好き。

「だって、先輩、夏が終わったら、引退…」
『…ああ、引退、な』
「そしたら、受験生だし、もう会えな…」

そのまま俯いていると溜め息が聞こえてきて、そして、先輩の顔が近付いて、視界が先輩の顔でいっぱいに、なって、先輩の顔が離れ、て、先輩、顔真っ赤…

『俺は会いたい!お前は?』
「会いた、い、です…」

私の返事を聞いた先輩は優しく笑って私にこう言った。

『じゃあいつでも会えるよ、』





それは夕日が落ちる前のこと





(マダムありがとう、)
(今日の占い大正解でした)






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