ずるい人
昼休み、屋上にいた。俺以外は誰もいなかった。珍しく持ってきた弁当とお茶を出して食べようとしたら、ドアが勢い良く開いた。
「いた、」
『あ…ちっす』
まゆこ先輩だ。野球部のマネージャー的な人で、俺の
「隣、いーい?」
『ああ、はい。どうぞ』
少しだけ自分の位置をずらす。
「あ、今日はお弁当なのね」
『は、い』
「ふむ…まあ、でも野球部だし男の子だから」
はい、とビニール袋を渡された。中を見ると牛乳とパン、それからお菓子が大量に入っていた。
『先輩、これ』
「今日誕生日でしょ?」
『覚えてて…』
「当たり前じゃない!」
きっとマネージャーだからなんだろうけど。満面の笑みを浮かべて言う先輩にどきどきする。
『ありがとう、ございます』
「いえいえ!むしろこれだけで申し訳ないわ」
『いや!これだけで充分嬉しいです!先輩のな…』
ら、何でも…と言いかけて固まる。俺は何を言おうとしてんだ。
「ほんとに?」
にやりと悪戯に笑う先輩がまた可愛くて、綺麗で。俺は目を逸らして小さく返事をするのが限界だった。
「でもなあ…武くんが良いって言っても私がなあ…」
『いや、ほんと、に』
先輩が立ち上がって背伸びをしたかと思えばずい、と近付いてそれから俺の唇に柔らかいものが当たった。
「うん、これで良いかな。」
「私の誕生日期待してるよ、武くん」
先輩はそう言って校舎の中へと行ってしまった。
あの人は確信犯
(やられたのな…)
(武くんは私が本気って分かってるかしら)
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