「頑張ってるじゃん」 『…先輩!』 「久し振りー」 『お久し振りです』 ランニングの休憩に公園のベンチで休んでいたら顔の横から缶ジュースが出てきたので其方を向くと井上先輩がいた。 「爽やかになっちゃってまあ」 そう言って先輩は俺の頭を撫でた。汗が背中を流れてぞくぞくする。普段は頭を撫でる方なので、人に撫でられるのは馴れない。体が強張る。 『ほ、ほんとに、久し振り、ですね』 「そうね、私がこっちに来てからだから」 『一年、二年ぐらいでしょうか』 「そのぐらいかも。橘くんがこっちにいるって聞いたときはびっくりした!」 くすくすと笑う先輩は上品で、とても綺麗だった。 「それにしても頑張ってるね」 『全国大会が近付いてますからね!』 「なるほどね」 先輩は嬉しそうに笑って、それから両手を真っ直ぐ上に上げて大きく伸びをした。 「そろそろ行かないと、」 『あ…』 「もっとお話したかったけどなー…バイトの時間だ」 先輩のその言葉に、じわりじわりと体が熱くなっていく。いや、まさか、な… 「あーあ、橘くんと学年が一緒だったら良かったのにな」 『え…』 「そしたら今頃私、不動峰のマネージャーやってたのに」 『…はは、先輩だったら歓迎してましたね』 軽く笑い合ってから、先輩が手を口に当ててて俺の耳元に近付く。鼓動が、早くなる。あのね、と囁くように先輩が言う。背筋がぞくぞくとした。 出来れば、君専属に (え…!?) (迷惑、かな…) (いえ、全然!むしろ…ッ) |