先輩は手が大きい。まさにゴールキーパーって感じに大きい。便りがいのある、何でも包み込んでくれそうな大きい手。私はその手が好きだ。

『…まゆこ?』
「……」
『あの、さ、何で、』
「……」
『俺の手……』
「…ッ…!すいません、つい」

気付いたら私は反対側に座っていた源田先輩の手を握っていた。まわりの人達がにやにやしている。うわ、恥ずかし……

「じゃー俺達は先帰るから」
「戸締り頼んだぞ、二人とも」

佐久間先輩と辺見先輩が言った。……二人、とも?私と、

『ああ、分かった』
「え、」

源田、先輩?何故、わざわざ、『女子一人じゃ危ないだろう?』にっこり笑った先輩。優しいなぁ、そんなところも好きだ。訂正しよう、私は源田先輩自身が好きだ。多分、きっと。

『まゆこ?』
「は、い」
『手…その、』
「あ、すいません。離します」
『いや、構わない』
「え」
『このまま帰るか』
「え」

戸惑う私ににっこり笑って立ち上がる先輩。私は引かれるままに立ち上がり先輩に着いて行く。部室の鍵を閉めて職員室へ。校舎には人は居ないと言って良いほど少なかった。人が少なくて良かった。源田先輩と手を繋いでいるなんてファンに見られたら大変なことになる。

『じゃぁ、行ってくるから此処で待ってろ』
「あ、はい」

先輩は失礼します、と言って職員室へと入った。私は職員室と向かい合って壁にもたれかかった。先輩の手が離れていった私の手は既に先輩の手の温もりを失いつつあった。手、暖かかったなあ。まだドキドキしてる。
握ったり開いたりを繰り返していると手に影が落ちた。

「…先輩」
『待たせたな。行こう』
「はい…って、え?」
『ん?どうした?』
「…いえ」

先輩、手、握って…何で、かな。下駄箱で離れてもまた握ってくれた。良いのかな、私が先輩と手なんて繋いじゃって。まあ、私は嬉しいから良いんだけど、ね。

『此処、だよな。まゆこの家』
「はい。わざわざ有り難う御座いました」
『いや、当然だ』
「ほんと、有り難う御座います」
『気にするな』

じゃあ、と先輩が踵を返す。

『…まゆこ?』
「す、すいません…」

先輩の手を見て私は手を離せなかった。いや、離したくなくなった。何だか私にぽっかりと、穴が、空きそうで、怖くなって、無意識だった。先輩、困ってるだろうな…


『いや、うん。もう少し、此処にいても良いか?』
「え、」

もう少しだけ、お前の傍に居たくなった、からと先輩が笑う。





離したくない、離れたくない





最後の訂正。私は源田先輩が好きだ。多分じゃなくて、確実に。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -