今日は良い天気だなあっ陽射しはぽかぽかあったかいし、風は…ちょっとだけ強いけどあったかい。確か最高気温は19度…だったかなあ?良いあったかさ!それに…それに春の匂いがする。春の匂い…私大好きなんだよねぇ、落ち着くって言うか何て言うか…。マフラーもコートもいらないし!今日は良いことありそうだ!

『…なのに、』

なのに…、手、ちょうつめたい。足先も。はぁあ、もう、ほんと冷え症ってやだ!こんなにあったかい良い天気なのに、私の手と足は冷たい。触らなくても分かるくらい。あーあ、なんかこれだけでテンション下がる!毎日ちゃんと生姜紅茶飲んでるのに!全然冷え症治んない!もうほんとにい…

「何道の真ん中突っ立ってんの?危ねえよ?」
『…土門』

私が名前を呟くとよう、と言われたので私はおはよう、と返した。『今日は一之瀬くんと一緒じゃないんだ』、と頭に浮かんだ事をそのまま口に出すと土門は「あいつ熱出して寝込んでるらしくて」と答えた。

『ふうん、せっかく良い天気なのに、残念だね』
「な、こんなに良い天気なのに」

少しの間止まっていた土門が歩き出したので私はそれについていく。土門の方が足が長いので当たり前に歩幅に差が生まれた。その差を埋める為に少し走ると土門はさりげなく歩くスピードを緩めてくれた。こいつが地味に、地味に(大事な事なので)モテるのも分かる気がした。女の子はこう言うのに弱いからなぁ…うんうんッ!やるなぁ、ども「でさぁ、」いきなり出された土門の声にびっくりして返事が裏返った。

「ふ…おま、お前、さ、ふ」
『おい、何笑ってんだ』
「や、わら、笑っ、て、ね、よ、」
『しっかり顏が笑ってますよお兄さん』
「気、にすんな、よ……ふう、お前さ、」
『そんな面白い声出してないのに……何、』
「さっき、何で止まってたわけ?」
『…ああ、』

私は返事と同時に自分の手を見て開いたり閉じたりを繰り返した。…まだ、冷たいなぁ。

『手がね、冷たくて』
「…て?」
『手。冷え症でさぁ、こんなにあったかいのに手だけ滅茶苦茶冷たいの!あ、足もだった』
「冷え症、ねぇ」

そう呟くと土門はぴたりと立ち止まった。え、もう学校目の前だし校門のど真ん中なんですけど。と思ったけど私も立ち止まった。

「わ、まじだ。超冷てぇ」
『…ッ…!』

び……ッ……くりッしたぁ!ちょ、ちょっと!何!もう!何!?アメリカ式!?アメリカってこんなさらりとやっちゃうの!?それとも私が慣れてないだけ!?ちょッ!にぎにぎしないで!恥ずかしい!どきどきする!

『ちょ、ども』
キーンコーンカーンコーン
「やべ、これ予鈴?本鈴?」

チャイムに反応した土門が携帯を見て慌てる。

「うわ本鈴じゃん!急ぐぞ井上!」
『え、ちょ、わ、手……!』
「ん?良いじゃん、このまんまで」
『や、私生粋の日本人だしアメリカ行ったことないしこんな…』
「アメリカでも中々こんなんしねぇよ!」『え、…は!?』
「お前にしかやんねーよ!」
『……!?』
「ああ、告白と受け取ってくれて良いから」

そうにやりと笑い土門は私の手を強く握って放さなかった。熱い、手も顏も。





暖めるのは君。





あ、手ぇあったまってんじゃん
…ッ…!……ばぁか(一之瀬くんいなくて良かったかも)


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -