心臓が煩い。まだ春だと言うのに暑い。汗がだらだらと背中を流れている。隣には原因の拓人くん。静かに流れていく時間。

いつもはこんなに緊張しないのに…いや、するのはするけど、嬉しい気持ちが先に出るし…。汗をかくまで緊張するのは初めてだ。どうして、なんて言いたいけれどそんな理由だって分かってる。私の左手と、そわそわしている拓人くんだ。 拓人くんが何度も周りを見渡しているのは分かっている。 多分、手を、繋ぎたい、ん、だと、思う…多分。 でも繋げない。 緊張しているから。だけじゃない。

私の左手だ。私の左手が、制服のポケットに入っているから。拓人くんが手を繋ごうにも繋げない。そもそも繋ぐ手がないんだもん。

今すぐ手を出せば終わる話なんだけど、なんだけど…緊張と、ポケットの中で暖まってしまった所為で、私の手には汗が滲んでいる。から、出したく、ない…。

でも、でも、この手を出せば私は拓人くんと手を繋げる。早くしないと家に着いちゃう。拓人くんだって頑張ろうとしてるんだから、私だって!


『…まゆこ、?』

ごしごしと手をスカートで拭いた。拓人くんが隣で不思議そうに私を見ている。すう、と深く息を吸ってゆっくりと息を吐く。よし





指だけ、そっと





…っ…まゆこ!?
(あとは、きっと拓人くんが…!)


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