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 だらり、ぶら下がったネイガウスの手を雪男がそっと撫でた。指先でそっと、熱を分けない程度に軽く優しく、ごつごつとしたその甲を撫でれば、雪男の戯れに気付いた彼と目が合う。しかし、それきり何も言わず好きにさせるネイガウスに甘えて、雪男の手遊びは続く。
 形、大きさ、柔らかさ、温かさ。彼の手の全てを記憶に留めようと、するすると指を這わせる。甲から指へ、指先から爪を経由し手のひらへ。しわの深さ、長ささえも忘れず辿り終えれば、次は指を1本ずつゆっくりとなぞりあげ余すことなく触れた。


 ほぅ、と知らず詰めていた息を吐き出す雪男にネイガウスはくつり、喉で笑うと、役目を終え下がろうとした雪男の手を掴み、彼がしたように殊更優しく雪男の白い手に触れていく。ほんの少しだけ柔らかさを残した子どもらしい手は、銃を握るが故の硬さと不思議な共存を果たしていた。そこに彼が背負う重さを垣間見た気がして、胸に込み上げる感情は、憐憫かそれとも愛情か。はたまた憎悪だろうか。
 ふと、視線を感じてネイガウスは雪男を見た。

「……くすぐったいですよ」
「先にしたのは君だろう」
「そうですけど。――どうせ触るならしっかり触ってください」

 貴方に触れた僕の手を忘れないように。

 ふわり、と笑う雪男は年相応に見えて、その実ひどく大人びた対応をとる。ネイガウスは束の間呼吸を忘れた。咄嗟に白い手を握り締めて、思い出したように息を吸う。
 そんなネイガウスに気付いた雪男が、そっと彼の手を握り返した。



手遊び end


* * * * *
我が家のネイ雪は、肝心なことは何も言わないのです。いつか離れることを覚悟してる雪男とそれでも放したくない先生。

2011/09/06

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