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学校の帰り。
「あ…!」
大通りの人混みの中、こちらに向かってくる長身、金髪の人に狼狽えた。
「あ、あ……」
どうしよう、とキョロキョロと辺りに目をさ迷わせる。
「あ…りゅ、がみね…?」
前を落ちていく何かを目で追う。
軽い音を立てた、吸いかけの煙草を捕らえた僕の目は見開き、そして勢いよく顔を上げた。
視界いっぱいのその人。
先程まであった50mの距離は1m程になっていた。
「あ…と…こん、に、ちは…静雄さん…」
「あー…おう…」
鞄の紐を握りしめる手に力を込めた。
何てぎこちない挨拶だろう。
相手もそう思ったらしいく、微妙な顔をして両手をポケットに手を突っ込んでいる。
暫くの沈黙。
「あー…久しぶり、だな…」
「っ、そ…そうです、ね…」
先に口を開いたのは静雄さんだった。
そして僕は、それにだんだん顔を俯かせて答えた。
避けてた、なんてとても言えない。
心中で呟いて一度、ギュウッと目を瞑った。
目をパッと開けて顔を上げると、こちらに手を伸ばす静雄さんと目が合った。
「…あ…あー…」
宙に浮いた手がゆらゆらと揺れる。
見ているとゆっくり握られ、引かれていき、彼の頭を乱暴に掻いた。
静雄さんの顔はやっぱり微妙だ。
だから、何となく思った。
今、僕の頭を撫でてくれようとしてた。
今まで、みたいに。

「しずお、さん…僕…」
僕は静雄さんの、特別な存在になれたのが確かに幸せだった。
でも、どうしたらいいかわからなくて、何だか恥ずかしいのも確かだった。
だから今までみたいに出来なくて、静雄さんを見つけるとすぐに隠れたりして…。
こうやって話すのだって、すごい緊張してる。
「ぼ、く…」
っだあぁぁ…!」
急に静雄さんが大きな声を出すから、僕の頼りない身体はひどく大きく揺れた。
心臓も忙しない。
静雄さんはガシガシと髪をかき混ぜながら、長い足を膝でカクンと折ってしゃがみこんでしまった。
僕は目を瞬かせて、え?とかあの、とかオロオロと声を掛ける。
「竜ヶ峰!!」
「ふ、ぁい!?」
俯いたままの静雄さんが言った。
何となく背筋を伸ばして、きっちり気を付けをしてしまった。
大きな声を出し合う僕らを、人々が不思議そうに流し見ていく。
小さくなっていた静雄さんが、スクッと立ち上がる。
僕は自然とその目を追って見上げた。
「っ俺は、お前のことが好きだ…!」
「っうぇ…!?…あ、はぃ……」
まさかの2度目の告白に顔が熱い。
そろそろと目を逸らしながら、コクリと1つ頷くのが精一杯だった。
「だ、だから…よ…」
静雄さんも恥ずかしかったのか、差し出された手が震えている。
僕は手を見たあと、静雄さんの顔を窺い見た。
サングラスと逆光の所為で、表情はわからない。
「よろしく、な」
でも、笑ってくれた気がして、僕も目を細めた。
握った手は大きくて筋張ってて暖かい、いつも僕の頭を撫でてくれる、優しくて大好きな手だった。
「よろしくお願いします…!」


ホワイトピュアロマンス


ふわりと、頭をもう片方の手で撫でられ、嬉しくてびっくりしてカァと顔に熱が集まった。
「わ、悪ぃ…!」
慌てて手を引く静雄さんの声が少し上擦ってて、僕は更に顔が熱くなるのを感じた。



(曖昧きす)




* * * * *
相互記念として、小羽さんからいただきました!
意識しすぎて緊張してしまう静帝なんて面倒なリクエストをしてしまいましたが、大変ニヤニヤさせていただきました!
ありがとうございました。これからも宜しくお願いします!


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