drrr!! | ナノ

※静帝/not池袋/パロ
 出演2人/しっとり傾向
 年齢操作/2人共に学生設定




 早春、冬から春へと変わり始める頃。
 先週から徐々に暖かくなり始めた。先の週末は寒の戻りで名残の雪が降り、休日にも関わらず家に入り浸った。そして今日、春めいた天候が戻り、春一番と思しき強風が吹き荒れている。
 明日はまた冷えるかもしれない。少年は思った。
 春一番の翌日は、冬型の天気になりやすいらしい。先日卒業した中学の先生が、いつかの授業中にそんなことを言っていたような気がする。
 生ぬるい風を全身で受け、少年は丸太で段差だけがつけられただけの階段を登る。ほとんど人の通らないこの道が獣道にならないのは、おざなりにもつけられた階段のおかげだろう。所々腐りかけている階段に気をつけながら彼は慣れた足取りで歩を進める。

 少年が卒業する頃、梅が咲いた。
 次は、桜だ。

 ほとんど人が訪れることのない丘の上に、ひっそりと桜が立っている。たった一本だけの桜は、けれど老齢で十分に風格のある古木だ。
 そろそろ蕾がついている頃だ。
 足を止めた少年は息を吐き、未だ見えることのない桜を思う。
 彼は毎年この時期になると、1人で桜を見るために、神社の裏山にある小さな階段を登っている。通い慣れた道ではあるが、やはり山道だ。家にこもりがちになる冬の間に鈍った体には重労働以外の何者でもない。
「あと少し、頑張ろう」
 息が落ち着いたところで、少年は再び歩き出した。

 少年が毎年、丘の上の桜へ足を運ぶのには理由がある。
 今からちょうど9年前。彼が小学校へ入学する年の春休みにした約束を果たすためだ。
 約束といっても、相手の名前は覚えていない。顔はおぼろ気に覚えているが、成長期における9年だ。約束の人の面影を残しているか分からない。
 根本的に、この約束が9年経った今でも時効でなく、約束として機能するのかも分からないのだ。
 約束を果たすには、絶望的な条件である。けれど少年は毎年、約束を果たさんがために山道を登り続けていた。
 9年も経てばもう年間行事のうちの1つのようなもので、渦中の桜が好きな少年にとっては何の苦にもならないらしい。
 今年こそは会えるかもしれない。
 そんな希望を胸に登り続けるのだ。



桜に誓った小さな約束

(子供だったからこそ、破れない)


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -