drrr!! | ナノ

相互記念です。
大好きなルルン様に捧げます!
リクエストは「門帝」だったので、ちょっとお砂糖多めにしたら大変なことになりました。





 人通りの多い道を、人を掻き分けながら走る帝人。肩がぶつかる度にすいません、ごめんなさいっと声を掛けながら、それでも足を止めることなく走り続けた。
 急いでいる時に限って、こうも賑わっているのはどうしてだろうか。自分の地元なら、自転車ですぐなのに!
 帝人はあれほど憧れていた池袋という街を嫌いになってしまいそうだった。
 それというのも、待ち合わせに遅れそうなのだ。いや、既に間に合わないだろう。さっき見掛けた時計が約束の時間を指していた。それでも少しでも早く着くようにと走っているのだが、人が多く思うように進めずにいた。
 少し遅くなるとメールを入れたから心配をかけることはないはずだ。それだけが帝人にとっての救いだった。
 額に浮かんだ汗が流れ出した頃、待ち合わせ場所が見えた。街頭にもたれかかっているニット帽が見える。
「お、遅くなってすいません…!」
 帝人は駆け寄り、叫ぶように声を出す。はぁはぁと息を吐きながら首を伝う汗を拭い、京平を見上げた。
「おう、まぁそんなに待ってねぇよ」
 京平はにっと笑い、帝人の頭を撫でる。ニット帽の下から見える目は優しかった。
「…でも、10分も待たせてしまって」
「10分ぐらいどうってことないさ」
「……すいません、門田さん」
 続けざまに大丈夫だと言われ、更に申し訳なくなってしまった帝人は謝ることしかできない。
 何もなく許されてしまうのは、ひどく居心地が悪いものだ。許してくれるならそれでいいと割り切ってしまえば楽なのかもしれないが、少しくらい責められた方が帝人にとっては有難い。例えそれが帝人の自己満足だったとしても。
 まったく厄介な性格をしていると自分でも嫌になるのだが、それが自分なのだから仕方ない。
 眉を垂れ下げ俯く帝人に何を思ったのか、京平は少し考えて言葉を発した。
「じゃあ今日は京平って呼べ」
「へ?」
 一体何がじゃあなのだろう。思わず間の抜けた声を出してしまった帝人は、それにも気付かず首を傾げる。その様子に苦笑しつつ、京平が付け足した。
「今日ずっと名前で呼んだら許してやるって言ってんだよ」
「はい、分かりまし……、えぇ!?」
「決まりだな」
 こくりと頷きかけた帝人が大声を上げる。しかし京平はお構い無しに話をまとめた。その表情はとても満足そうだ。
「よし、じゃあ行くか」
「ちょ、待ってくださいよ門田さ…!」
 何事もなかったように歩き出した京平に帝人が慌てて声を掛けたが、名前を言い終わる前に足を止めた京平が帝人へ向き直る。
「京平、だろ?」
「……き、京平さん」
「その調子で頑張れ」
 とてつもないプレッシャーに負け帝人が名前を呼ぶと、京平は帝人の頭を撫で嬉しそうに笑う。
 そんな嬉しそうな顔をされたら、何も言えなくなってしまうじゃないか。
 居心地悪そうに身動いだ帝人の手をとり、京平は再び歩き始めた。
 帝人は赤くなった顔が見られないように俯いて、ついて行くしかなかった。


 京平は優しい。
 買い物を済ませ2人で京平の家へ帰る時も、歩道のない道では何も言わずに車に近い方を歩いた。
 もちろん荷物だって重い方を京平が持ち軽い方を帝人に渡してくれたし、歩調だって帝人に合わせていた。
 それら全てが自然で、気付きにくい。ただ意識して見れば思い当たる節は多く、帝人を大切にしているのがよく分かる。
 帝人は、京平の優しさを感じる度にくすぐったい気持ちになる。それと同時に、自分もしっかりしなくてはと思うのだ。これ以上迷惑はかけられないと。
 それでも、少しだけワガママが言いたくなるのはいけないことかな?
「京平さん」
「どうした?」
 今みたいにリビングで寛いでいる時、幸せだと思った時、少しだけ欲張りになるのは仕方ないと思う。
 帝人の隣でテレビを見ていた京平が帝人と目を合わせる。
「…京平さん」
 ただ名前を呼ぶだけの帝人を、京平は抱き締める。ふわりと香る優しい匂いに目を細めた。
「京平さん」
「何だ?」
 京平の腕の中で、それでも帝人は彼の名前を呼び続けた。ワガママは言いたくないから、でも気付いて欲しいから。何度でも、気付いてくれるまで名前を呼ぼうと思った。
「京平さん…」
「好きだ、帝人」
「……ッ、僕もです」
 京平が帝人の耳に口を寄せて、囁いた。その言葉に一瞬息を詰めた帝人は、京平に抱き着いて言う。
「京平さん、大好きです」


 望んだものより多くをくれる貴方が、誰よりも優しい貴方が、大好きです。



ワガママは言いません

(だって貴方は気付いてくれるから)




誰だろう(爆)
えーと、結局お互い名前を呼んで欲しかったとかそういう話のはずなんですが←
ミクの名曲「ワールドイズマイン」を聞きながら書いたら、何故か真逆の話になってました(笑)
ルルン様のみお持ち帰り可。書き直せやぁ!という意見も受け付けますので、はい。すいませんでした。


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