『こねこにリボン』のちはね様に、相互記念としていただきました!ありがとうございます。
リクしたのは静双子帝で『双子がどうでもいいようなことでシズちゃんの取り合い』です!
双子の妹は♀帝人ですのでご注意ください。
竜ヶ峰家には二人の兄妹がいる。
竜ヶ峰帝人。
竜ヶ峰みか。
共に16歳の高校生。
来良高校に通う双子の兄妹だ。
「みか、帰るよー。」
「待って!みか兄ちゃん!今行くから!」
性別、髪型、制服が違うだけで二人はよく似ている。
もちろん双子だからかもしれないが、その言葉を抜きにしても二人が纏う雰囲気はよく似ている。
きっと同じ服を着て後ろ姿だけを見たら、どっちがどっちだか皆目検討がつかないだろう。
「みか兄ちゃん、帰りにスーパー寄らなきゃ。今日は“戦の日”だし!」
「気合い入れないとだね。あ、あと、スーパーの後に文房具屋よってもいい?ボールペンなくなっちゃったんだよ。」
「え、ボールペンの替えもうなくなっちゃったの?…あのストーカー、相変わらずマゾなんだね。」
「女の子がそんなにはっきりとした単語を言わない!…まぁ、否定はしないけど。」
「はぁい。でもみか兄ちゃんも大概ひどいよねー。」
笑いながら話してはいるかよくよく話を聞くと内容は真っ黒だ。
しかしそれを周りに気付かせる事なく二人は廊下を行く。
二人は容姿以外にも似ている所がある。
ずばりそれは『可愛い顔して毒舌家』という点だ。
しかし、彼らの親友はこう言う。
「本人達にはそんな自覚、全くない!」と。
**
池袋の街に沈みかかった太陽の残光が広がって、様々な形の影を生み出している。
その中で帝人とみかも互いに足から細長の影を生やしながら、周りの雑踏に倣いゆっくりと家路についている。
「今日も凄かったなぁ…。やっぱり僕、どんなに大人になってもおばさんには勝てない気がするな。」
今日は二週間に一回あるスーパーの特売日。
この日はいつも人が疎らなスーパーも様々な人でごった返す。
普段は人混みを嫌う二人だが二人暮らし、そして切り詰めた生活をしているため、月に二回ある特売日へは必ず兄妹揃ってスーパーへ向かうのだ。
「みか兄ちゃんは押しが弱いんだよー!もっと突っ込んでいけばきっと勝てるよ?」
お目当ての物をたくさん買えたのか、ニコニコ顔のみかと少しだけ疲れた顔をした帝人の手に大きなビニール袋が三つある。
一つは帝人の右手に。
一つはみかの左手に。
最後の一つは帝人とみかを繋ぐように二人の間にそれぞれ握られている。
「みか、そっちの袋の方が重そうだけど、こっちのと取り替える?」
「そんなに重くないから大丈夫だよ。ってかみか兄ちゃんこそ、私より腕力ないんだから無理しないで!」
「う…、みかっ!そ、それは言わない約束だろっ!」
からかうようにそう言ったみかへ帝人が真っ赤になりながら反論した瞬間、二人の間に腕が伸びて二人の間にあったビニール袋が宙に持ち上げられた。
「おー、今日は特売日だったのか。随分買い込んだなぁ、お前ら。」
それと同時に耳へ響く優しいバリトンに二人は同時に振り向くと、一瞬顔を見合わせてから嬉しそうに微笑んだ。
「静雄さん!こんにちは!」
「よぉ、みか。相変わらず元気だな。」
「静雄さん、もうお仕事終わったんですか?」
「あぁ帝人。今日も悪い大人からたくさん金をぶん取ってきたぜ。」
双子の懸け橋をしていたビニール袋を手にし、いつの間にか後ろに立っていたのは静雄だった。
そして静雄は双子の手にまだ握られている二つの大きな袋の存在に気が付くと、強引にそれらを奪い、双子へ笑いかける。
「いつも飯食わせて貰ってっからよぉ…その礼に今日も荷物持ちしてやるよ。」
帝人とみかはその言葉にもう一度、顔を見合せるとくすぐったそうに笑った。
**
学生カバンを持つ双子に挟まれながら、食材でパンパンに膨れた袋を片手に持ちつつ静雄はゆっくりと歩く。
「今日は私が静雄さんに卵焼きを作るの!」
「みかは昨日も静雄さんに卵焼き作ってあげただろ?だったら今日は僕が作る!」
もっと正確に表現するなら、静雄は困ったと言うように眉を下げながら、今日の食事当番を巡って喧嘩をする双子の間に挟まれながら歩いていた。
「みか兄ちゃんだって先週、二回連続でご飯作ってくれた時あったじゃない!」
「それはたまたまみかがセルティさん達とご飯食べに行った時と重なっただけだろ?!それにその次の日はみかがわざわざおやつ作ってくれたじゃないか!」
「だってみか兄ちゃんのダシ巻き卵美味しかったんだもん!」
しかもお互いを気遣っての喧嘩なのか、静雄を巡っての喧嘩なのかがいまいち掴めないから対応に困る。
静雄は空いていた手で頭を掻くと自分を挟んで睨み合っている双子(しかし静雄から見れば子犬の戯れあいに見えて、ちょっと微笑ましい)に声をかけた。
「あー…みか、とりあえず落ち着け。帝人も、な?」
その言葉に双子はほぼ同時に目を潤ませながら顔をあげると、いきなり両側から抱きついてきた。
「静雄さんはみか兄ちゃんの味方するんですかっ!静雄さんは女の子には優しいってみか兄ちゃんが言ってたのに酷いですっ!」
「静雄さんは…僕の料理…嫌いなんですか…?確かにみかの料理は美味しいから食べたくなるのわかるけど…。」
左からは無意識に押し付けられた柔らかい感触と共に怒号が飛び、右からは微かに香るお日様の匂いと共に弱々しく鼓膜を刺激する震えた声が聞こえてくる。
「あ、みか兄ちゃん!静雄さんにそうやってウルウル目で攻撃するのずるい!可愛いって分かっててやってるでしょ!」
「かわ、可愛い?!可愛いって男に言う言葉じゃないだろ!」
左右からキャンキャン響く喧嘩のようで喧嘩じゃない、ただの言い合いはこのまま放っておくときっと収拾がつかなくなるだろう。
静雄は心の中で溜息をつきながら決心を固めると、片手にまとめていた荷物をそっと地面に置いた。
「うん、話はわかった。つまりお前ら二人はまとめて…」
いきなり荷物を置いて話し始めた静雄に、帝人とみかは口論を止めると高い位置にある静雄の顔を見上げた。
自分を見つめる二つの幼い表情を見つめながら、静雄はふと口元に笑みを浮かべる。
周囲の人間はこぞってこの二人を「よく似た双子」と言う。
だが、静雄からしたら帝人とみかはそっくりなようで全くそっくりでないと思えるのだ。
もちろん、双子だから顔立ちなどはよく似ているが、二人を知れば知るほど性格、表情など細かい所があまり似ていないと分かる。
そしてそれを知る人間なんて、この世の中にほんの一握りしかいないだろう。
静雄は自分がその『ほんの一握り』側の人間である事にこっそりと優越感を覚えているのだ。
「俺に何か作ればいいだけの話、だろ?」
そう言ってから静雄は荷物を置いたお陰で空いた両手を使い、帝人とみかの頭をグリグリ撫でた。
すると我に還った二人が慌てふためきながら声をあげる。
「わぁ!静雄さん!折角セットした髪の毛めちゃくちゃになっちゃう!」
「し、静雄さんっ!僕、身長縮んじゃいますっ!」
「…お前ら本っ当に可愛いよなぁ。」
静雄に髪の毛を掻き混ぜられた帝人とみかは不満げに頬を膨らませたが、互いに顔を見合せると噴き出す。
「…みか、今日は中華風にしよっか。カニ玉の素あったよね?」
「うんっ!…あと私、みか兄ちゃんの作ったスープが飲みたいな。」
「帝人、俺は肉が食いてぇ。」
「静雄さんはそう言うと思ってましたから…みか、酢豚を作ってくれない?」
「おっけー!腕によりをかけちゃうね、みか兄ちゃんに静雄さんっ!」
再び歩きだした三人を赤い夕陽が照らす。
ただし先ほどと違い、両側にいる帝人とみかは真ん中にいる静雄の腕に自身の腕を絡めてとても幸せそうだ。
もちろん真ん中にいるサングラスで目元を隠した静雄も幸せそうですがね!
池袋に伸びる三人の長い影。
その歪な形の影は優しい空気に包まれながらやがてくる夜の闇へ溶けていった。
END
エンキの感想。
もう何という可愛さ。想像以上に双子が可愛すぎて悶え死ぬかと思いました(←)勿論シズちゃんも禿げるほど可愛かったです。幸せです^^
ちはね様、ありがとうございました!