しあわせ計画 「やっぱり日が良くあたる部屋がいいと思うんだけどなあ」 「僕はどちらかというと暗いほうが好きですけどね」 「物凄く不健康な発言だね」 「三食マシュマロの貴方に言われたくはないですね」 そう言って少し温くなった紅茶を啜りながら、骸は小さく苦笑した。 「あとさ、お風呂は絶対広いほうがいいよね!」 「まあそれは同感ですが」 「骸クンといちゃいちゃしたいからね!」 「……最悪ですね」 「むしろ最高と言ってほしいね、僕は」 一緒に住もうと言ったのは白蘭だった。別にお互いに十分な広さの家があるのだから、わざわざ部屋を新しく借りなくても、どちらかの家に住めばいいと考えていたのだが。白蘭はせっかくだから新しく部屋を借りようといった。二人で選ぶから意味があるらしいが。 お互いの部屋の好みがバラバラ過ぎてなかなか物件が決まらない。 「まあ実際どんな部屋でもいいんだけどね」 「散々条件出しておいてそれですか」 半ば呆れつつ、何かいい物件はないかとページをめくる。日当たりがよくて風呂が広い、結局白蘭の好みの部屋を探してしまっている自分に苦笑する。 「骸クンがご飯作ってくれるの楽しみだなー」 「僕が作るのは決定事項なんですか」 「キッチンも広い方がいいね!」 「……はあ」 「寝室には大きいベッド置こうね!」 「……そうですね」 終始笑顔で話す白蘭を見ていると、何だか此方まで絆されてしまう。調子が狂う。普段自分のペースを乱される事は嫌いだが、何故かこの男にだけは不快感を感じないのだ。 結局の所、自分はこの男が好きなのだな、と思う。 「たまに二人でご飯作って、一緒に洗い物して、天気の良い日は洗濯もして、掃除したり、雨の日はソファーに座ってDVD見たりさ」 「疲れそうですね」 次々に紡ぎ出される言葉の一つひとつがどれもキラキラしたものに感じる。まだ先の話なのに、目の前にその光景が想像出来てしまうのだから不思議だ。 「あとはー、帰ってきてさ、おかえりって言ってもらえるのって嬉しいと思わない?」 「お帰り、ですか……」 「そう」 例えば疲れて帰ってきて、「お疲れ様」って声をかけてもらえるのって嬉しくない? そう言って微笑んだ白蘭を見て思わず「そうですね」と頷いた。 わざわざ部屋を探して二人住む事の意味が何となく理解出来たような気がした。 「骸クンと一緒ならきっと、どんな部屋でも毎日楽しいよ」 こんな事をさらっと言ってしまうこの男を何とかして欲しい。早くなってしまった心臓を落ち着かせる方法があるのなら是非教えて欲しい気分だ。 「ねえ骸クン」 「何ですか」 「楽しみだね」 「……ええ」 白蘭の言うそれが日常になる日が来るのだと思うと、なんだかこそばゆい感覚がして、すっかり冷めてしまった紅茶をいっきに飲み干した。 (2011/11/14) back main ×
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