そっと届けてもかまいませんか? | ナノ


 ずっとずっと、考えるのはキミのこと。

 「お疲れ様です! ねぇセンパイっ、今週のは読んでくれた!? オレトップで特集組まれちゃって――ってぇ!」
 「うっせぇ馬鹿黄瀬! しばくぞ!」
 「もうしばいてるじゃないっスか〜!」
 「黙れっつってんだよ外周してこい50周!」
 「鬼っ!!」

 笠松に怒られて、涙目になりながらもきちんとノルマをこなしてくるキミ。

 「なぁ黄瀬、やっぱり、オレは運命だったと思うんだよね」
 「既に過去形じゃないっスか」
 「オレと彼女は出会うべくして出会った。最高のパートナーだった筈なんだ」
 「聞いてないっスね」
 「けど、彼女は優しすぎたんだ。もしかしたら自分の所為で、オレが満足にバスケが出来なくなるんじゃないかって、そう思って――だから残酷にも運命は、彼女からオレに別れを告げるよう仕向けたんだ。オレから離れるより彼女から離れた方が、きっと彼女の傷は小さくて済むからって」
 「要はナンパして振られたんスね」
 「その方が、彼女は傷付くとも知らずに…っ!」
 「センパイは一旦現実を見た方がいいっスよ」

 森山の馬鹿話に付き合わされて、興味なさそうに、それでも最後まで話を聞いてあげるキミ。

 「黄瀬ー! おえが合図したあそえこっちにくえうか?」
 「は? 何スか?」
 「だかあおえが合図したらそえこっちにくえって」
 「いや、わかんないっス」
 「だかあー!」
 「ちょ、ま、怒んないで早川センパイっ!」

 早川の聞き取り辛い言葉も、懸命に拾おうとしているキミ。

 「黄瀬、ちょっと確認したいことがあるんだけどいいか?」
 「いいっスよー」
 「このフォーメーションになったときなんだけど、」
 「あ、そんときはオレはこっちで受けて、」
 「オレの場合はこの方がいいと思ってこっちで」
 「あ、ならオレもそれで試してみるっス!」

 中村と同じポジション同士、真剣に話し合って練習に臨むキミ。

 「」



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