頂き物 | ナノ




昼休みの廊下で、若松は見知った姿を見つけた。周囲より頭1つ抜き出たその高身長の後ろ姿に遠慮なく声を掛ける。
「諏佐さん!!」
廊下の幾人かが自分の大声に驚く中、諏佐がぴたりと足を止め振り返る。手には財布と教科書。若松が駆け寄ると眉をひそめて注意される。
「そんな大声を出さなくても聞こえる。あと廊下は走るな」
「うっす、次から気をつけます!あ、今から俺食堂行くんすけど、諏佐さんもですか?」
「あぁ、一緒にいいか」
「モチロンすよ!」
諏佐と、というよりは先輩と学食に一緒に行くなんてことは滅多にないから大歓迎だ。
食堂に行き、若松はどのメニューにするか悩む。日替わり定食にするか丼物にするか。諏佐は既に決めていたのか、迷いなく定食の列に並ぶ。無難にその後ろに若松は並んだ。
注文して料理が出てくるまで2人とも無言だが、若松は諏佐との沈黙は別段辛くない。桜井だったら無言にあちらが耐えかねて謝りだし、それに苛ついて怒鳴るという悪循環。青峰はそもそも無言を耐えるような場面に遭遇せず、桃井は向こうから話題を提供してくれる。今吉に至っては無言の笑顔が別の意味で恐ろしい。
そうは言っても会話もせずにただ食事するだけは味気無い。若松は何か話題を探すが、ふと相談したいことがあったのを思い出す。
「そうだ、諏佐さん!」
「ん?」
「諏佐さんって去年クラスで劇しましたよね、文化祭」
「やったな。それがどうかしたか?」
分厚く切られたトンカツを掴みながら、諏佐は顔を上げた。
「文化祭で俺らのクラスは劇やるんすよ。で、背景とかどういう風に作ったのかなぁって思って」
新学年が決まって初夏にはもう文化祭が始まる。わからないことは聞くのが1番だ。部員数の多い、つまり先輩が多い部活は何かと学校生活において助かる。
「あぁ、それは…」
「なぁー自分ら何してんの?」
諏佐が口を開くと同時に、のしっとブレザーの腕が彼の首に巻き付いた。見上げずとも分かる言葉のイントネーションに、彼は隠すことなく眉をひそめる。
「今吉、苦しい」
「なぁなぁ、2人で何話してたん?」
「えっと、諏佐さんに…」
にっこりと訊ねられ若松は答えようとするが、諏佐に目配せされて口を閉ざす。
「諏佐がどないしたん?」
「俺たちは今昼飯食べてるんだ。通路が狭くなるからどっか行け」
「えー?てか諏佐がどっか行くから、ワシ1人で食べてんで?寂しかったわあー。で、若松。諏佐がどないしたん?」
「若松、答えなくていい。味噌汁冷めるぞ」
目の前で繰り広げられる会話に若松は戸惑う。今吉はにこにこと微笑んでこちらを見てくるし、諏佐は今吉の腕をいなしながら悠然とトンカツ定食を食べている。板挟みでどちらの先輩に従うか躊躇したが、滅多にないほど厳しい眼差しの諏佐の言う通りに、湯気の少なくなった味噌汁に手を着けた。
そうする合間も諏佐と今吉の攻防は続く。
「いいわ、もう聞かへんけど。それ早く食べて監督ん所行くで」
「俺も呼ばれたのか?」
「ワシだけ」
「なら行かない」
「なんで?行こうや」
「若松と話すから行かない」
その言葉に若松は今吉から睨まれた。眼鏡のレンズがいい具合に光で反射して恐い。
「若松を睨んでも無駄だぞ」
「えー?いつも付いてきてくれるやろー」
いつも付いて行ってあげてるんすか。というかどうして見えていないのに、主将が睨んだことがわかるんすか。それらは空気を読んで心中でツッこむ。未だに突き刺さる視線は無視を決め込んだ。
「暇だったら行ってやるけど、先に若松に誘われたから無理だ」
その後もぶつくさと言い合いをしていたが、若松はやはり無言でご飯を掻き込む。
後は付け合わせのキャベツのみとなったところで、ようやっと今吉が折れたようだ。渋々諏佐の首から腕をどけた。
「わかったわ、ほんなら五時間目な。若松はちゃんと授業起きとくんやでー」
そう言い残し食堂を後にする。諏佐は解放された、といった顔で食事を再開した。
「話が途中だったな」
「いえ、それはいいんすけど…」
「あいつは放っておけ。いつものことだから」
はぁ、と諏佐は頬杖をついて嘆息した。鬱陶しそうに今吉をあしらっていたが、あまりそうは思っていないような気がする。現に、本当に嫌そうな顔ではなく、苦笑のような、複雑な顔で彼はトンカツを摘まんでいた。
「……なんか、夫婦みたいっすね、主将と諏佐さん」
そう呟いた瞬間に諏佐が箸を落としたのだが、ドレッシングに手を伸ばした若松は気付かなかった。





―――
はーちゃんことはつかさんより頂きました今諏佐あああ私書けないよ今諏佐あああ(煩い。

もうね、冷静な妻と妻が大好き過ぎる旦那だよね、けど迫られると焦っちゃったり?おどおどしちゃったり?キャーもう諏佐さんあんた可愛いじゃな!い!か!!
あと天然若松ほんと天使。さらっと夫婦とか言っちゃってね、目の前で諏佐さんギクッとしてるのに気付かないとかね、もうなんなの。ほんとなんなの。

素敵な作品をありがとうございました!はーちゃん大好きだよ!!!そして私は諏佐さんのトンカツになりたい(意味不




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