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名前を付けましょう

※本当にくだらないです。



 「ん?」

 真ちゃんと二人、並んで近所のスーパーへ買い物に行ってきた帰り道。行きしなには死角となっていた曲がり角に、ダンボール箱が置いてあるのに気が付いた。

 「どうした」
 「いや、あれ」

 オレが指を指すと、真ちゃんはその先を辿る。ダンボール箱を見ると少しだけ目を見開き、そしてゆっくりとそれに近付いていった。

 「何だった?」
 「……犬が入っているのだよ」
 「犬?」

 真ちゃんにならって中を覗き込む。そこにいたのは、くりっとした瞳でオレ達を見上げる一匹の子犬だった。

 「うっわ何これ、すっげ可愛いじゃん!」
 「馬鹿、触るな!」

 あまりの愛らしさに抱き上げようとしたオレの腕は、鬼みたいにおっかない顔をした真ちゃんに叩き落とされていた。

 「っ、何だよ痛ぇな!」
 「よく見ろ、高尾」
 「は?」

 怒りを滲ませた真ちゃんの言葉に、もう一度じっくりとその犬を見る。が、真ちゃんの言ったことの意味はさっぱりわからない。

 「……いや、何だよ」
 「わからないのか」
 「わかんねぇけど」

 眉根を寄せながら首を傾げると、真ちゃんは犬を睨み下ろしながら忌々しげに呟いた。

 「見ていると、無性に腹が立ってくるのだよ……!」
 「は?」

 本日二度目の間抜け声。というか、本当に何言ってんのこの人。

 「ただの犬だろ? 何、もしかして真ちゃん、犬が苦手、とか?」
 「オレに怖いものなど、あるわけがないだろう」

 嘘吐け、とか思いながら、オレはしゃがんで犬と目を合わせる。じっと見つめ合っているうちに、一つの違和感に気が付いた。

 「あれ…何でだろ、初めて会った気がしない」
 「それはアイツに似ているからだ。雰囲気から漂わせる空気まで何もかも!」
 「アイツって……」

 ――あ。もしかして。

 「黒子のこと?」
 「間違ってでも拾って帰る、などとは抜かすなよ」

 そっか。そういえば真ちゃん、黒子のことあんま好きじゃないんだっけ。
 そう思うとなんか笑えてきて、よし、とオレは心を決めた。

 「今日から、お前はオレん家の子だからな」
 「高尾っ!!」

 言いながら、犬の頭を撫でる。隣で真ちゃんが喚いてるけど……まあ、放っておこう。

 「よし、決まーりっと。名前は黒子に似てるからテツヤ……2号で」
 「勝手に決めるな! あの家の住人はお前一人ではないのだよ!」
 「いいじゃん、コイツ何か可愛いし。真ちゃんもきっと気に入るって」

 テキトーなことを言って、2号を抱き上げる。真ちゃんの制止に耳何か勿論貸さず、軽い足取りでオレは再び帰路に付くのだった。




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