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飼い方を調べましょう

 黒子そっくりの犬を飼うことが決まった。それはいい。が、ここで一つ、ある問題に気が付いた。

 「おい涼太。そういえばお前、犬の飼い方なんか知ってんのか?」

 ぽつりとオレがその疑問を口にすると、2号と楽しそうに戯れていた涼太の笑顔が固まった。暫しの沈黙の後、一度静かに瞼を下ろした涼太。そして、ゆっくりと開かれた瞳には自信が湛えられ、そのままオレに向けられる。涼太は綺麗な笑顔を浮かべると、毅然と言い放った。

 「知らないっス!」
 「無駄に期待させるような尺取んじゃねぇ!」

 美しく決まったオレのボディーブローによりうずくまった涼太を放置して、オレは2号に目を向ける。オレの視線を受けた2号は、何か察したのか立ち上がって歩きだした。向った先にあったのは――

 「パソコン?」

 首を傾げるオレに頷くように一つ鳴くと、2号はオレを促しているのかパソコンとオレを順に見比べた。

 「ネットで調べろ…ってことか」

 オレの言葉を聞くと、2号は嬉しそうにすり寄ってくる。
 ここでオレが確信したことを二つ述べておこう。まず一つは、2号がかなり賢いということ。そしてもう一つは、涼太が2号より馬鹿だということだ。

 「ま、それが一番手っ取り早いよな。サンキュ」

 言いながら2号の頭を撫でてやっていると、不意に背後から恨めしげな視線を感じた。面倒事は避けるに限る。心中呟いて、無視を決め込もうとしたのだが……

 「幸男さん。オレと2号、どっちの方が好きっスか?」

 いつの間に近付いたのか、オレの身体は二本の長い腕に捉えられていた。反射的に振り返ると、少し潤んだ瞳と視線がぶつかる。予想外の表情に、不覚にもドキリとしてしまって。

 「……わざわざ言わないとわかんねぇのかよ」

 顔を背けながらぼそりと告げると、涼太は驚いたように息をつめてから笑みを零し、「はいっス」と嬉しそうに答えて腕の力を強めた。その温もりに何となく愛しさを覚え、身を任そうか、なんて血迷っていたら。

 「痛っ!」
 「は?」

 突然涼太が声を上げ、オレから離れた。見ると2号が涼太に体当たりをしたようだった。

 「わ、悪い2号。今はお前のことが先だよな」

 慌てて謝ると、オレ達は満足気な2号と共にパソコンへと向かうのだった。




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