――首元には死神の持つ、重苦しい鎌。
その鎌は、常に死と隣合わせだと言う事を私に示した。
嗚呼、哀しい。
だけどそんな哀しさは何故か心地よくて…、同時に生きていると言う事を私に示した。
センチメンタル「君は優しすぎる」
「そうかしら」
白い手を太陽に翳し、どこか疎ましそうに目を細めた彼女、ななしにため息が出る。
なに、とでも言いたげに此方を見てくるななし。
「嫌なら嫌と言えばいい。
僕は、そんな君が嫌いです」
諭すように言ったのに眉をひそめ、悲しそうな顔をするものだから罪悪感に駆られて額に手を置く。
ちらりと手の隙間から見えた彼女は今にも泣きそうで、
「僕に嫌われてる位でなんなんですか?」
「哀しいよ」
「理解し難い」
嗚呼、でももし君に嫌いだと言われたらきっと僕も。
――泣きそうになるかも、しれない。
「私、生きてるんだよ」
「ええ、知ってます」
「死ぬんだよ」
「それは、そう…ですね。」
「私思うんだ」
「?」
「人間、いつでも鎌を首に突きつけられて、いつでも試されてるんだ」
「……」
「私の解釈だから」
「……」
「それでいて、生きる目的…否、覚悟を失った瞬間死神は命を斬るんだ」
「面白い考え、ですね」
一瞬、彼女の背後に死神が見えた気がして、馬鹿らしいが背筋が凍った。
泣きそうなのは何故だろう。
何故泣きそうになっている?
「…骸は私が嫌い?」
「自分の足に錘をわざわざつける君が嫌いです」
今度はじゃらりと重たい鎖の音。
「錘なんて」
「?」
「…錘なんて、君が辛いだけだ」
「…」
あぁもう、何故だろう。
泣きそうで泣きそうで泣きそう。
ななしも僕も泣きそう。
「錘はもう、重たくなりすぎて私には外せなくなってしまったの」
「僕が外せばいいでしょう?」
「きっと貴方にも重すぎる」
「クフフ、僕を舐めないで頂きたい」
優しすぎる君には重すぎた枷。
君を雁字搦めにしていたそれらは、もう僕が引き受けましょう。
何故かなんて今更で、君が好きだから。
ほらでもやっぱり僕等は泣きそう。
end
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