「しばらく、会えません」

「…………ん」

「クフフ。心配せずともすぐに戻ってきますよ」

「…うん。待ってる」






手を伸ばして

(手を伸ばして)

指先を重ねた

(指先を重ねた)

彼女は凛とした笑みを浮かべ

(彼はいつものような笑顔で)

僕を信じてくれた

(私の額に唇を添えた)






「犬と千種、それからひとりばかり女の子が増えるのですが……。
お願いしますね」

「わかった」

「クフ…、ありがとうございます」




言葉の裏にはきっと、

(それらの願いは重いでしょうか?)

居場所を、帰ってくる場所を守っていてって事だと、彼の瞳を見て思う。

(でも貴方はいつだって、僕のお願いを約束に変えてくれる)

重いのは心地いい。

(重いでしょうに)

君の重さなら尚更に

(それでも君は笑う)

嬉しいの、愛しいの

(嗚呼、なんて愛おしい)






「いってらっしゃい、骸」

「ええ、いってきます。ななし」























目を開ければいつもの天井。

額に残る温もりに手を当て、私は昨夜つくっておいた料理をタッパーに詰めて向かう先は黒曜センター。

骸は、犬と千種、それからひとり女の子を私に頼んでいった。

どこかに姿を消した犬と千種だけど、骸がああ言ったのだからきっと居る。

迷いはなかった。

強いわけじゃない。

ただ、信じられる。

彼は帰ってくると言ったから。
いってきますと、言ったから。




 end



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