ほら、よく言うじゃない?
現実はマンガのように素敵で甘くはならないって。
好きな子と両想いならまだしも、イケメンと両想いは難しいし、ましてやイケメンの男の子から奪いあわれるなんて素敵なポジションが世の中存在するとは思えない。

それに、女嫌いな人が女の子を好きになるなんて難しいし、ましてやそんな子と会話なんて奇跡に近い。

いきなりなにって、私の話よ。

少しだけ変わってるその子は女の子が近づけば怒鳴り散らかすし。

ほら今日も。



「獄寺く〜ん、これもらって!」

「いらねえ!近寄んな!」

「キャー!カッコイい!」



…、…ぶっちゃけ女の子はあれ少し頭があれじゃないかと思う。

不機嫌な獄寺の顔はお世辞にもカッコイいとは言えない。
綺麗な顔だから多少歪めても綺麗だけど、かっこよくは…ねぇ…?



「……くだらない」



獄寺をみて顔は赤くならなくなったものの、ふとした瞬間に心臓が痛んだりするようになった。

母に言ってみたら、答えは花や京子と同じで「恋」なんてふざけた答え。

年に似合わずキャピキャピしはじめた母は放置でとりあえず壁に頭を打ちつけた。



「あっ、##NAME2##!」



ぼーっとしてた所に沢田。

珍しいじゃない。あんたから話しかけてくるなんて。自然と口から出たそんな私の言葉に少し困ったように笑った沢田。



「実はお願いがあってさ…」

「なに?」

「今日だけでいいから放課後の掃除、変わって欲しいんだけど…」

「いいけど」

「ありがとう!##NAME2##!」



嬉しそうに笑う沢田は素直に可愛いと思う。

ダメツナダメツナ言われてるしモテないけど、不細工じゃないし、優しいしダメンズ好きがこの学校に居るなら…

まぁダメンズ好きじゃなくても沢田を好きな子は2、3人居てもいい気がする。











ガタン

掃除道具を手に、適当に教師の床を掃く。

窓からはグラウンドで部活活動に勤しむ生徒の姿。時折、キーンとする清々しい音と弧を描くボールを見せるのは山本。

やっぱり凄いな、あいつ。

なんて頭を休めずに一生懸命に何かを考え床を掃くのは、もうひとりの掃除当番。

獄寺隼人。

そんな、ありがちな展開に吐き気(衝撃的すぎて)がしたが自分の掃除が増えるだけだから我慢した。

別に獄寺が居たからじゃない。

そして今は無言で掃除をこなす。


オイ獄寺そわそわするな顔赤くするないや夕陽の所為だよね?気のせいだよね?
てか沢田クンなぜ私に掃除当番頼んだんだよ理由聞き忘れたよ。
沢田大好き獄寺隼人、なぜ沢田にひっついて帰らないんだ。
なんで今日に限って此処に居るんだ。



「…、あー…のさ、獄寺」



びくりと反応。



「…掃除、終わったけど」

「…おー…」

「あー…、…私…帰るね?」



一歩、二歩、

よしこの調子。
話しかけないでくれよ、獄寺。

三歩、四歩……



「あ、のよ…」



ピシッと固まる私に気づかず、わずかに近寄る獄寺。

ちょっと待ってなによなによ。



「……俺、お前が」



ドキドキしすぎてめまいがして倒れそうになった時、勢いよく教師に入ってきたのは山本。

少し、残念……え?なんだと?残念?
イヤイヤ。ちっても残念じゃないね。
寧ろナイス!山本!



「山本のバカ!」

「…え、沢田?」

「げっ」

「掃除当番私に押し付けてなにしてんだお前」

「いや、これはその…」

「よ!##NAME2##!
教室にいんの見えたから来てみたんだけど、本当にいたのな」

「え?あ、うん?」

「や、山本…」



言葉の通りオロオロする沢田。



「ん?掃除か?」

「もう終わったけどね」

「だったら一緒に帰ろーぜ!」

「部活は?」

「あ…、はは!忘れてたのな!」

「…山本…」

「んの…、んの野球馬鹿ぁぁぁあ!」



顔を真っ赤にして山本につかみかかる獄寺。
ちょっと待ってよ今視界に入らないで。

私はたまらずバックをひっつかんで駆け出した。
















だって好きって言うの
聞こえちゃったんだもの













 end



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