ほら、よく言うじゃない?
現実はマンガのように素敵で甘くはならないって。
好きな子と両想いならまだしも、イケメンと両想いは難しいし、ましてやイケメンの男の子から奪いあわれるなんて素敵なポジションが世の中存在するとは思えない。
それに、女の子が嫌いな子が女の子を好きになるなんて難しいし、ましてやそんな子を好きになるなんて、会話するなんて奇跡に近い。
だって話さないなら好きになりようがないし。
って友達の花と京子に話したらクールねと言われたけど。
まぁとにかく、少しだけ変わってるその子は女の子が近づけば怒鳴り散らかすし。
元はといえばクラスメートの山本とそこそこ仲が良くて…って山本は誰とでも仲がいいわけだけど。
…とりあえず、それで確か沢田とも話すようになった。
沢田と言えば本当の意味でのダメツナを脱出してきてて…逃げなくなった、って言うのかな。
それを沢田に言った時、はじめて、だった気がする。獄寺と話したのは。
10代目は素晴らしいお方なんだ、当たり前だろーが馬鹿女。
そう言われた。
あれ、私、沢田を褒めたよな?
そう自問してから
え、何、あんた。日本語わかってる?
素で聞いた。
わかるに決まってんだろ!馬鹿女!ちょ、止めなよ獄寺くん!
いいよ沢田。帰国子女なんでしょ?
いいよ、別に。……意味分かってんなら殺すがな。
可笑しくて笑顔で言えばひぃ、と小さく悲鳴をあげる沢田とやんのかと身を乗り出す獄寺の顔面に教科書叩きつけてしまったのを後悔するのは、えっと、確か後日ファンの女の子に手をあげられた時かな。
沢田は恐がるようにガタガタと震えて、獄寺は怒りにガタガタふるえていた。
ぐわっ、と胸ぐら掴まれた時は一瞬ビビったが、それより顔が、近くて。
キモい近寄るなキモい
なっ…!?
キモいと言った事に後悔するのは、えっと、確かファンの女の子に泣きながらなにか語られた時。
その瞬間ガバッと獄寺が離れた、山本の手によって。
はは、わりーな
いや別に
…##NAME2##ってクールだよね…
そうかな?
このっ糞女!
覚えとけよ畜生!
山本に引っ張られ、沢田に宥められて向こうに姿を消す獄寺。
数日後、なんとなく獄寺を見るようになり気づいた事は沢田にだけ見せる表情。
笑顔。笑顔。笑顔。
心の底から沢田が大好きで、敬愛してる、尊敬してる、そんな笑顔。
タバコを吸うときは目を僅かに細めて、煙を吐き出す。
山本が来たときは、嫌そうな顔。
女の子が近づけばもっと嫌そうな顔。
ああ、なんで私こんなに獄寺を見てるんだろう、馬鹿馬鹿しい。
弱点さぐってやろうって見てたんだ。
弱点見つからなそうだからもう見てなくてもいいじゃない。
いや、もう少し、もう少し。
かれこれ5回目のこの自分とのやりとり。
「……馬鹿馬鹿しい」
「どうしたのよ、恋する乙女みたいな顔しちゃって」
「……はっ、馬鹿馬鹿しい」
「なにがよ」
つぅ、と額から頬に流れるのは急激に出てきた汗。
恋する乙女?は、ナイナイ。そんなありがちな!
「ナイナイナイナイナイナイ!」
「うるさいわよ、あんた」
「うるさいのは花だよ畜生!」
キャラ崩壊?しらねぇよ畜生。
ちらりと獄寺を盗み見れば、急激に熱を持ち始める顔と痛い心臓。
「ナイナイナイナイナイナイ!」
そんな、ありがちな!
end
prev × next