A子さんの盤上遊戯 | ナノ
胡散臭い遭難から数日、私は流されるように立海の仮マネとして此処にいることになった。
他人の面倒なんてみられないわよ!
という私の主張は幸村の前ではサッパリとスルーされたのだけれども…
他校も一緒に面倒をみないといけないってどんな拷問なの?
「山田ちゃん、ドリンクー♪」
ゴロニャンと懐いてくる猫こと菊丸英二に私の顔が引き攣った。
中学三年男子が猫語って痛いわー
しかもウザイけど見目が良いのでむさ苦しくないのが唯一の救いっちゃーそうなのかもしれない。
「ドリンクとタオルならベンチに置いてあるでしょう。」
ビシっとベンチを指差せば、持ってきたばかりの冷えたドリンクと綺麗なタオルが置いてある。
私はスコアを付けるので精一杯なのだ。
これ以上この糞猫は何を望むというのか?
「こらこら、英二。山田さんを困らせたら駄目だよ。」
メっと叱る姿はどこのオカンだ!
立海も中々濃い奴等ばかりだけど青学も負けてはいないと思うの。
「ごめんね、山田さん。」
人の良さそうな笑みを浮かべる姿に苦労が滲み出ているのソレは立海の苦労人ことジャッカルを彷彿とさせた。
学校に一人ぐらいはいるよね。
「別に彼が私に迷惑を掛けているのは今更なんだし、ゆで玉子君が気にする事はないのよ。」
フォローしたつもりが、何故かガックリと肩を落とされてしまった。
コテンと首を傾げれば
「ふふふ、山田さんって面白いね。全然フォローになってないよ。」
幸村と同じ属性の不二が居た。
ビックリした。
ビックリしたよ!
全然気配が無いんだもん。
おねーさん、ホラーを体験した気分になっちゃう。
嘘だけど。
「ごめんね、玉子君。私ってば疲れてるのよ。ほら、マネでもないのに立海のお馬鹿さん達とナルシー君の陰謀に巻き込まれて此処に来ちゃった被害者なんだし、別に私の貴重な夏休みを返せよゴラァ!とか、思っているけど君は悪くないのよ。ただペットの躾はきちんとして欲しいなって思うだけで。」
ニコニコと笑えば
「酷いにゃー」
菊丸が大石に泣き付いた。
といってもこの会話を楽しんでいる節がありありと分かるのだけれど、言われた本人は胃が、胃が、と胃痛にでもなっている様だわ。
ご愁傷様。
「ねぇ、もう一人のマネは何してんの?」
クイクイっと服裾を引っ張ってくる越前少年に私はウンザリとした溜息を吐いた。
いやいやアレは溜息しか出てこないわよ??
少し離れたコートで練習そっちのけで取り合いされている逆ハー少女。
少女なんてものじゃない。
幼女って言っても過言じゃないと思うの。
あの体系で中三ってどうみても小学校低学年にしか見えないわ。
「あいつら何しに来てるんスかね?」
ポツリと呟かれた言葉に
「さぁ?遊びに来てるんじゃないかしら?」
南国の島だしと付け加えれば、心底嫌そうな顔をされたわ。
「あんなのに恋愛感情で構っているならアイツ等皆ロリコンだね。」
爽やかに幸村と同じ毒を吐く不二に私は聞かなかった事にした。
「はいはい、どうでも良いから練習してきなさい。私にも仕事があるんだから邪魔しないで頂戴。」
散った、散った、と彼等を追いやれば各々練習に戻っていった。
ある意味仕事だけれども無料奉仕なんて聞いてませんが??
しかも四天王寺のアレと一緒に仕事って何の拷問かしら?
というか、彼女が仕事をした覚えはないのだけれど!
空になったペットボトルと汚れたタオルを拾い、キャイキャイとじゃれ合う四天王寺諸君とロリータを尻目に私はコートを後にした。
後にロリータが私の領域に踏み込んで怒りを買う事になるのだけれども、ね。
あーあ、お家に帰りたいなー