A子さんの盤上遊戯 | ナノ
-SIDE 栄子-
南国の海に行く前に嵐に吹かれて沈没って何か企んでませんか?
こんにちは、栄子です。
晴天だったのに嵐ってよっぽど頭の御目出度い子じゃないと引っかからないと思うの。
救援ボートから脱出するまで私は幸村に担がれながら思った事だ。
救援ボートで目指したのは遠くに見える小島だった。
ぶっちゃけ胡散臭せぇーと思う。
というか、何考えているんだアホ部!
私を巻き込まないで貰いたいんだけれども、この俺様!
心身共にグッタリしている私を幸村はヒョイっと担ぎ上げて砂浜を歩く彼の後ろに真田と他校の見たこともない子がいた。
「なーなぁ、兄ちゃんと姉ちゃんは此処が何処か知っとんの?」
関西弁を喋る頭が派手な小猿っぽい子が声を掛けて来た。
「無人島じゃないかな?」
ニッコリと胡散臭い笑顔で適当な事を言う幸村に真田までが頷き肯定した事で目の前の餓鬼はパーっとキラキラとした眼で
「探索しに行っても良え?」
聞いて来た。
こう躾されているのは良い事だと思うのだけれども、聞く相手が違うんじゃないかしら?
「別行動したいならしても良いけれど、迷子になっても責任は持てないからね。今は、君と一緒に来てた奴等もいるんだからそっちを探す方が賢明だと思うよ?」
要約すればテメーが勝手に迷子になって遭難しても俺達責任取らないよって事だね、幸村。
「なぁ、姉ちゃんもそう思う?」
キューンキューンと子犬が鳴く様な顔をする少年を一般の女子生徒だったなら可愛い!
とか思うのだろうけど、私は範囲外なので
「一緒に来ていた人の安否を確認しない事にはお勧めしないわね。」
一緒に同行するようにそれとなく促した。
この小猿ちゃんの世話をするのは真田かな。
私も幸村も小猿ちゃんの世話をするつもりないもの。
小猿ちゃんを赤也だと思って頑張れ!
「俺は四天王寺の遠山金太郎や!」
キラキラと眩しく元気に挨拶する小猿ちゃんに
「私は立海の山田栄子よ。」
「僕は立海男子テニス部の部長の幸村精市。」
「俺は立海男子テニス部の副部長の真田弦一郎だ。」
各々と自己紹介をしていく。
その後、私は幸村から解放され本日の簡易宿で奴等が採って来た山菜と海の幸で飯を作った。
包丁とか無かったからね。
久々に食したサバイバル(漢)料理に私が生きていた頃を思い出した。
こうしてA子さんの災難の一日目が幕を上げた。
-SIDE 赤也-
いやいや有り得ないんじゃね?
いくら先輩達から色々と馬鹿にされる事が多いけど、これは異常だろ!?
此処にジャッカル先輩か柳生先輩のどっちかが居てくれたらこの異常に突っ込み入れてくれてると思うんだ。
事の発端は、俺達が乗っていた豪華客船が嵐で難破して救命ボートでたまたま見つけた無人島に打ち上げされた事だろう。
てーか、晴天だったのに嵐って何の設定?
関西弁を話す小学生と俺とドSそうな眼鏡と金髪と菓子パンコロネ頭している奴等で俺は前途多難という言葉を意味を知った。
栄子さん、俺そっちが良かったっす。
「うちの名前は竜胆柚妃(りんどうゆき)。四天王寺中の3年やで。あんたらは?」
小学生にしか見えない餓鬼が中三って初めて逆サバみました!
先輩達もサバよんでんじゃね?
って思ってたけどコイツよりはマシかもしれない。
寸胴体系にアホ丸出しの面に可愛そうなお頭ぐあいに俺は
「へー俺は立海中二年の切原赤也。そっちの三人さんは?」
スルーした。
だって関わったら何だか面倒臭い事になるに決まっている。
俺は自分の頭は信じてないが、勘だけは信じているからな!
あの濃っいメンバーの下っ端をやってるのだ、ミクロ系が文句を言う前に不思議三人組に声を掛けた。
「やー等本国ぬちゅーやたんぬか。(お前等本国の人間だったのか。)」
「まぁ、本国ぬ奴等と合同合宿するんやくとぅいるやんやーしが、まさかなまくまで会うとや思わねーらんたんぜ。んかいしても本国ぬ奴等や舐めてんぬか??合宿んかい餓鬼を連れてちゅーさなよ。(まぁ、本国の奴等と合同合宿するんだからいるだろうけど、まさか今ここで会うとは思わなかったぜ。にしても本国の奴等は舐めてんのか?合宿に餓鬼を連れて来るなよ。)」
何を言ってるのかサッパリ分からねぇー
「アンタ等が何を言ってるんかよう分からへんわぁ。標準語喋りぃ」
急に仕切りだしたミクロ系に俺を含め不思議三人組の顔が引き攣った。
「そういう貴女も標準語で喋ったら如何です?」
無表情に淡々と切り返されたミクロ系は憤慨とばかりに
「いつうちが聞いてて分からん言葉を話したんや!」
ギャンギャンと噛み付いる。
そんなミクロ系を適当に捌き
「私は木手永四郎、帽子が甲斐裕次郎、金髪が平古場凛です。本当に不本意ではありますが、私達以外の漂流者を探しましょう。」
不穏な自己紹介を済ませた。
跡部主催だから豪華な合宿だと思ってたのにサバイバルってやってられねぇ…!!
しかもこのメンツで栄子さんに会う前、大丈夫だろうか?
こんな嫌な招待のされた南国の島で「ようこそ」はいらない。