転職 プログラマー A子さんの盤上遊戯 | ナノ

うちは山田栄子を彼等から離して人気の無い場所でソイツを睨みつけた。

「アンタがおるから!」

蔵達が離れていってしまったんや!

山田栄子を睨みつける。

許せへん。

見目を良くしたミーハートリップ女やろーに!!

「自分の魅力の無さを私のせいにするのって女としてどうかと思うわよ?」

心底馬鹿にした眼で私を見る山田栄子。

「容姿を変えて、逆ハー補正まで付けて蔵達を惑わすなんてサイテーや!」

非難するうちに山田栄子は

「頭大丈夫?」

と宣った。

馬鹿にして!

「どうせアンタもうちと同じようにトリップしてきた癖に言い訳か!?見苦しーっちゅうねん。うちだけが皆を幸せに出来るんや。選ばれた人間やねん。」

落ちていた空の瓶を山田栄子に投げ付ける。

山田栄子の額に当たって割れた瓶にうちは満足した。

額から流れる血に青やなかったんか、と嗤った。

だってそうやろ?

人の心を玩ぶ悪魔みたいな魔女の血なんて青いに決まってるわ。

「傷害罪ね。一歩間違えれば殺人未遂罪かしら?」

流れる血を押さえながらうちを見下したように嗤う山田栄子。

「アンタみたいな出来損ないトリッパーを処分するのに罪になるわけないやん!目障りや!早よ、死に曝せや。」

苛々をぶつける様に叫べば

「良いのかしら?」

愉しそうに嗤う山田栄子。

「頭の悪そうなアンタのことや。戸籍すらあらへんのやろ。そんなんに人権なんてあるわけないやん。」

うちは、フンと鼻で笑ってやった。

「ふーん、君は彼等を幸せにする使命を帯びて次元を超えたんだ?って事らしいよ、王子様諸君。」

クツクツと嗤う山田栄子の呼び掛けに蔵達が姿を現した。

見られてた?

「栄子、大丈夫かい?」

心配そうに山田栄子を見て、私を睨み付ける幸村達。

甲斐甲斐しく傷の手当てをしている。

「次元を超えたストーカーかよぃ。」

ポツリと呟かれたブンちゃんの言葉を皮切りに

「いやいや電波は勘弁して欲しいっすわ。」

まるでうちを痛い子みたいな目で見る謙也達。

「寧ろイエローピーポー呼ぶ必要があるんじゃないっすか?」

何でなん?

「ソイツはミーハーなんやで!うちはストーカーやない!ソイツの逆ハー補正に引っ掛ってるんや!」

そう!

そうに決まってる!

うちが彼等に嫌われるなんてあって良い筈がないんや!

うちを罵倒する言葉もきっと山田栄子に言わされた言葉なんやろう。

「ふっ、あはははは!君の思考は手に取るように理解出来るよ!そんなにモテたいなら貴女の望みを叶えてあげるわ。」

高らかに嗤う山田栄子の宣言は、魔女の宣告のようだった。