転職 プログラマー A子さんの盤上遊戯 | ナノ

-SIDE 白石-




山田栄子。

心惹かれていったんや。

容姿は極上やけど性格に難有りな難攻不落な女。

絶対に性質悪い奴やと解ってんのに俺は山田栄子を求めた。

逆に今まで可愛えと思ってた柚妃がミーハーに見える。

どっちも計算して俺等に接してるんやろうけど、山田栄子は底が見えへんねん。

「なぁ、栄子ちゃんって立海ではどんな感じなん?」

ニコニコと目の前の立海の部長に尋ねた。

まぁ、俺のこと射殺しそうな目で見てるんのは知ってるんやけどな。

「気になる?」

幸村の言葉に

「おん」

是と答えればニヤリと奴は笑って

「教えないよ、ばーか。ロリコンでも構ってれば?」

ズケズケと毒を吐いた。

コイツの腹の中は真っ黒なんやな。

でもそんぐらいやないと灰汁の強い輩を纏めるんには苦労するやろう。

「あんなんもう不要(いら)へんわ。アレで良ければくれてやんで?」

寧ろ押し付けてやりたいわー。

そんな俺の言葉に幸村が顔を諌めた。

「僕達だってあんな宇宙人不要(いら)ないよ。栄子の邪魔ばっかりするし、纏わり着くし、キモイ。」

バッサリと言い切る幸村に数名うんうん同感とばかりに頷く奴等。

「あ、栄子さんや。」

金太郎の声に一斉に視線が彼女に移った。

「比嘉中の奴等だね。珍しー」

本土の人間は敵とばかりに威嚇して馴染まへん奴等が栄子ちゃんには笑顔で接している。

その後ろで鬼のような形相で栄子ちゃんを睨んでいる柚妃に幻滅した。

こんな奴やったんかー

ってな。

「栄子ねーちゃん!!」

ダダダダダと止める間も無く山田ちゃんに一直線に走っていきおった金太郎は、ご主人様を見つけた犬のようや。

ギロっと睨まれる俺は溜息を吐いた。

ほんま、モテ過ぎとちゃう?




-SIDE 謙也-



ほんまに栄子さんは面白いわ。

あの糞女の居場所を宣言通り分捕りよった。

嫉妬に孕んだ視線を送り続ける竜胆を余所に栄子さんは、そ知らぬ顔だ。

アホマネは段々とキャラ崩壊している事に気付いてへんのやろうか?

崩壊した姿に幻滅して今では無い存在として扱われてんで。

「栄子さん、アンタ鬼やな。」

アホマネが覗き見しとるのを承知の上でイチャイチャする栄子さんと俺。

「鬼で結構よ。自分が一番って思ってる子が壊れる瞬間が一番好きなの。」

ウッキウキと愉しそうに語る栄子さんは綺麗や。

普通こんな性悪やったらドン引きするんやない?

ってぐらいに性格は最悪。

「あははは、睨んでるよ。宛らサルの子のようね!もっと歪んだ顔が見てみたいなー。」

花満開ですとばかりに綺麗な笑顔を浮かべる栄子さんに見惚れてしもうた。

悪辣非道な栄子さんが一番綺麗やねん。

愛とか恋とかそんな甘いもんやないわ。

執着って言葉が一番やないやろか?

だって栄子さんは、誰のモノにもならへんねんで?

そりゃ、欲しいって執着するわ。

男のプライドやね。

直ぐに靡く女よりも難攻不落な方が燃えるやろ?

俺は栄子さんを抱きすくめキスを繰り返した。


それはまるで心移る蝶の如く