何ていうか予想通りノーウェットとシャルドゥの令嬢の手料理は悲惨だった。
俺でももう少しマトモな料理を作るよ。
リボーンなんてトンズラしたからな。
俺発案、企画リボーンで料理対決はマリアの圧勝だった。
まぁ、そうだろうね。
でもさ、まともなのはマリアの料理だけ。
しかしマリアは三人分しか用意していない。
自分とメイドと誰か誰か俺ってことだろう。
この課題、一見普通の料理対決に見えるが食材=人材として考え人を使う技量を見る為の試験でもあった。
ノーウェットとシャルドゥの令嬢の令嬢は料理もだが課題すら理解していないのだろう。
ボンゴレとなればそれなりに大きな組織となるんだ。
その夫人となれば夫の補佐をする立場的存在なのだからこれぐらい汲み取って欲しいもんだよ。
それに引き換えマリアは申し分ないね。
その分、競争率も高そうだけど…案の定、骸が
「ボンゴレ、僕はマリアさんの手料理を頂きますので彼女達のを食べて差し上げたら如何ですか?折角、君の為に作ってくれた食事ですしねえ。」
マリアの手料理を狙っていた。
お前、極度の女嫌いだったじゃねーか!
と突っ込みを入れるが
「えぇ、あんな低俗な女は嫌いですよ。その点、マリアさんは面白い人ですね。彼女こそ僕に相応しいと思いませんか?」
などと戯言を抜かしやがって。
マリアのご飯を誰が食べるかと揉めていた時に
「ポーカーでも」
とマリアがニッコリと提案をした。
眼が笑ってない。
此の料理自体が適正を見る試験だった事を思い出した。
レナがカードをマリアに渡し、それをニッコリと微笑んで手に取る彼女の後ろに般若が見えたような気がする。
二人の令嬢達もマリアの殺気に軽く引きつつテーブルに座った。
マリアはレナ・アナッシュを見て
「カードを配りますね。レナ、貴女も一緒に参加なさい。」
私の代わりに此の勝負を受けろと命令を出した。
余程、レナ・アナッシュの事を信頼しているのだろう。
レナ・アナッシュもそれを分かっているらしく表情は、どのメイドよりも誇らし気だった。
カジノのディーラーよりも綺麗なカード裁きに見惚れる俺達。
配られたカードで役を作っていく。
ランボがフルハウス。隼人はワンペアで、令嬢達はスリーカード。骸がフォーカードを出した。
俺?
愚問だよ。
俺はストレートフラッシュを出した。
此の勝負は俺の勝ちだなと確信した時
「マリア様、上がりました。」
良い笑顔でカードを広げるレナ。
見事にロイヤルストレートフラッシュを完成させていた。
運も実力の内だと散々リボーンに言われ続けて来たが、レナ・アナッシュと云うメイドほど強運の持ち主はいないんじゃないか?
そんな彼女が跪くのはマリア唯一人ってことか…面白い。
勝負は決まったと云うのにKYがいた。
言わなくても分かるだろう?
ノーウェットとシャルドゥの令嬢だよ。
「怪しいですわ。」
マリアを睨みつけるように口々に文句を言う彼女達。
レナ・アナッシュがギっと令嬢達を睨み付けた。
咎める気はサラサラないよ。
だって非は彼女達にあるじゃないか。
マリアが何も言わない事を良い事に
「そのメイドに良いカードが行くように如何様(いかさま)したに決まってますわ。」
言掛かりを突き付けた。
馬鹿じゃないか?
怒り心頭なレナ・アッシュを
「レナ、落ち着きなさい。お二方は私がレナを組んで如何様(いかさま)をしたと仰りたいのですね?」
絶対零度の微笑みで彼女達を見据えた。
正に蛇に睨まれた蛙状態である。
マリアは俺に
「そうですか…ドン・ボンゴレ、申し訳ありませんがカードを切って頂けますか?彼女達もそれで納得出来るでしょう。」
有無を言わさないと暗に告げてカードを手渡した。
俺はカードをシャッフルし、彼女達に配る。
シャルドゥの令嬢は余程良いカードを引いたのか
「単なるカードゲームでは面白くありませんわ。身に付けている金品を賭けましょう。」
と言い出した。
そんな言葉を聞いてもマリアは動揺する事なく笑顔で
「それは楽しそうですね。では、ベットで。」
ピアスを外しテーブルに置いた。
勝負は過熱しテーブルの上には貴金属で溢れかえっている。
得にマリアの身に着けていた物は一級品だといえた。
惜しげも無く賭けの景品として提示していく彼女は最後の中指を飾っていたアンティークの指輪をテーブルの上に置き
「レイズ」
と掛け金を増幅させた。
最初は余裕でマリアに勝つつもりだったシャルドゥの令嬢が不安そうな顔をする。
それもそうだろう。
マリアは次々と高級品ばかりを提示したのだから。
俺が見ている中で二人は各々装飾品をテーブルの上に置いた。
結果は聞かなくても分かるだろう?
マリアの圧勝だったよ。
彼女はダイヤのロイヤルストレートフラッシュを出したのだからさ。
金品はレナ・アッシュが回収し、晴れてマリアの身の潔白は証明されたわけだ。
「ドン・ボンゴレ、申し訳ありませんが後30分程お時間を頂けませんか?」
マリアはチラリと簡易調理場を見た。
俺達の分も用意してくれると云う訳か…何処まで優しいのだろう。
「お二方も一緒に如何ですか?皆で作った方が楽しいでしょう?」
決して手柄を独り占めしないように申出する彼女に二人は頷く。
その様子を見てマリアは花が綻んだように笑った。
どれだけ魅了すれば気が済むのだろう。
それから?
うん、マリアが令嬢をフォローしつつ食べられるご飯を作ったよ。
皆で食卓を囲んでご飯を食べたけどね。
あーあ、マリアの手料理を独り占めしたかったな…なんて言えるわけないよね?
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