沈黙の太陽オマケ | ナノ
-SIDE マリア-
グランコクマの一室…
大詠師モースは失脚し、六神将も捕縛され、世界滅亡を望んだヴァン・グランツは死去し世界に平和が訪れたかと思われた。
が、瘴気が噴出し世界中し人類滅亡までカウントダウンとなる。
これがゲームだったらルークが瘴気中和するんだろーなって思うんだけどな…
このままこの世界にいる俺にとっても死活問題なわけで、かといってルークに瘴気中和なんてさせたくないわけさ。
ローレライを召喚するには大譜歌が必要不可欠となるが、肝心なヴァン・グランツは死亡しているし、ティア・グランツに関してはローレライを呼び出す程の力はない。
ユリアの子孫であろうが、象徴すら分からない彼女には無理だろう。
さて、どうしたものか…
あーもう、何で俺がこんなに悩まなきゃならんのじゃー
半分八つ当たり気味に壁を叩いた。
ガコンと音がしたかと思えば地下に続く階段が見付かった。
「何でこんな所に隠し部屋?」
俺は未知なるダンジョンなんて行く気はないぞ!
「マリア、何してるんだ?」
ヒョッコリと顔を見せたルークに俺はビクっと身体を強張らせた。
お、驚かすんじゃねー
と心の中だけで叫ぶ。
「ルーク…」
俺はバクバクと脈打つ心臓を深呼吸で静めた。
どこかキラキラとした眼で怪しい隠し部屋?に続く階段を見ている。
めっちゃ嫌な予感しかしねぇー!!
そんな俺の予感は的中し、あれよ、あれよとばかりにルークに引き摺られ怪しい部屋へ連行された。
口から魂がアロハーと飛んでいるぜ。
しかも電波ことローレライは俺の身体を乗っ取りやがってルークにローレライの鍵を与え、解放を約束させる始末。
解放したら絶対に消し炭にしたるわーと決意した日だった。
-SIDE ルーク-
マリアって奴は優しいんだ。
仲間達からも見捨てられた人間でもない愚かな俺を“生まれがどうであれ卑下する必要なんてないのですよ。貴方は貴方しか成り得ないのですから”と俺を一人の人として接してくれた。
マリアを中心に世界は変動していく。
アクゼリュスを滅ぼしてしまった俺に“罪だと謂うのならば一緒に償う方法を探しましょう”と言ってくれた。
その言葉がどれだけ嬉しかったか…
見下され、蔑まれるだけの彼等と違いマリアとその周囲の人達は俺を認めてくれた。
それはとても幸福な事だと俺は知る。
だから俺はマリアに強力するんだ。
グランコクマの一室で見つけたプラネットフォームにも匹敵する創世記次代の一室は神秘的と言えた。
まるでマリアがこの部屋に来る事を予想していたように…
「ルーク?」
考え込んでいた俺を気遣うような表情(かお)をするマリアに俺は大丈夫と笑う。
俺が笑えばマリアはホッと安心したような顔をした。
「此処は何なんだ?」
「ローレライ召喚の為の部屋なのかもしれません。」
俺が見たことも無い譜陣らしき物を見てマリアは怖じける事もなく譜陣の中に歩いて行く。
譜陣の中心にマリアが立った時、マリアがオレンジ色の焔に包まれた。
決してその焔はマリアを傷付ける存在(もの)ではないと思うけれど心配なのには変わりない。
ローレライと言葉を交わしているのか、俺にはマリアが発する言葉が分からなかった。
ただ、彼女の異質な力を俺は怖いと思わない。
《我が完全同位体…ルーク…》
いつもなら頭痛に悩まされる謎の声もこの時ばかりは頭痛が起こらなかった。
「誰だ?」
《人は我をローレライと呼ぶ…ルーク、異界の女王よ…我を解放して欲しい……》
「何で俺なんだ?アッシュだってお前の完全同位体じゃねーかっ!」
俺にそんな価値はないんだと叫べば
《アッシュ…あれは人で言うなれば我のコピー……惑星消滅を阻止する為に造られた者なり…》
驚愕の真実を述べた。
混乱する俺に
《人より我により近しい存在である“ルーク”お前こそ我の完全同位体なり………アレは罪を犯し過ぎた…最早、我の手を離れている…》
ローレライは哀し気に告げる。
《ルークよ、異界の女王の下へ……》
ローレライの言葉に俺はマリアを見た。
マリアは淡く微笑み俺を安心させる。
ユラリと揺らめくオレンジ色の焔は、俺をマリアの元に導くように光の壁を作り出した。
「ルーク…」
不安な俺の気持ちを察したマリアはユックリと俺の方に歩み寄る。
マリアに手を引かれ譜陣の中に立つ。
マリアが纏うオレンジ色の焔は螺旋を描いた。
《ルーク…ローレライの鍵を……》
ローレライの言葉と共にマリアの焔が増して行く。
美しく形成されていくローレライの鍵に俺は見惚れた。
美しく輝くローレライの鍵は俺の手の中にある。
ローレライの解放…本当に俺に出来るだろうか?
俺の不安を読み取ったマリアは、さり気無く手を握ってくれた。
ホンワリと温かな気持ちが込み上げる。
きっと上手く行く。
ローレライの解放…それが俺の役割。