転職 プログラマー 沈黙の太陽オマケ | ナノ
-SIDE アスラン-



親善大使のルーク様はレプリカだという。

ルーク様の力でアクゼリュスが崩落したのは事実ではあるが、崩落させたのはヴァン・グランツだ。

何故、カーティス大佐達はそれが理解出来なかったのか?

実年齢が七歳の子供と変わらないルーク様を責め、ユリアシティに置き去りにした。

王命で和平の使者としてのプライドはないのだろうか?

正直失望した。

怯えるルーク様を慰めたのはマリア様だった。

この美しい女性(ひと)の護衛を勤められる事に私は誇りに思う。

アクゼリュス崩落から世界は変革していった。

穏やかな一面しか見せて無かったマリア様が怒りを露にするのは初めてだ。

「英雄気取りですか…」

クツリと冷徹に微笑む彼女の眼は笑っていない。

「英雄気取りって失礼ですわよっ!!」

キムラスカの王女の言葉に失笑を浮かべるマリア様。

「それにそこに居る“ルーク”は罪人なのよ!早く捕まえなさいよぉー」

子供特有の甲高い声に私は眉を諌めた。

ビクリと肩を震わせ元同行者に怯えるルーク様を庇いマリア様が一歩前に出る。

「王命に逆らった逆賊姫、公爵家襲撃犯、暗殺を目論む使用人、タルタロス襲撃を手引きしたスパイ、導師誘拐にタルタロス襲撃隠蔽に加えルーク様に対し不敬三昧の上任務放棄した軍人、キムラスカとマルクトに対し襲撃をした犯罪者、ルーク様と違いセフィロトに何があるか理解して扉を開けた導師様…全員犯罪者ですね。」

クツクツと嗤うマリア様は心底怒っていらっしゃるのだ。

そんな彼女の怒りの深さが分からない彼等は口々にマリア様とルーク様に暴言を吐いた。

「大地降下したのも住民の避難をしたのも全てルーク様が行った事です。貴女方がした事はヴァン・グランツを倒しただけでしょうに…それの何処が英雄になれると言うのです?」

心底不思議そうな顔をするマリア様に

「俺達がヴァンを止めなかったら世界が滅んでいたんだ!」

と出来損ないの使用人が叫んだ。

まだ自分がガルディオスの人間だと思っているのだろうか?

マルクトは彼を見捨てたというのに…

「お前達が手を下さなくてもお前達よりも優秀な者達で討伐する事が議題で上がってました。勝手に行動を起こして迷惑を被ったのですよ。」

マリア様の指摘に次々と罵詈雑言を吐き捨てる彼等に抜刀しかけた。

マリア様の手で制されてしまったが、切り捨ててやりたいとどれ程願った事だろう。

「英雄とは人が後に称号として贈るもの。お前達はオールドラントの罪人!粛々と罰を受けなさい!」

初めて出逢った時に見たオレンジ色とは別の色の炎が彼等を取り巻いた。

私には分からないが彼等が悶え苦しんでいるのは確かだ。

ただ何か幻覚を視せられているようではあるが…

炎が収まった時には彼等は気絶していた。

私は兵に彼等を捕らえる様に命じる。

心優しいマリア様があそこまで怒りを見せるとは…



英雄…その言葉が酷く心に引っ掛った。