私の第一印象?
よく優等生っぽいよね、とは言われる。
口を開けば幻想が崩れるらしいけど…
別に突出した何かが私にあるわけでもないし、勉強だってギリギリ平均ってとこだ。
顔が良くてスタイル抜群で頭が良い女になりたいとは思わない。
だって色々と面倒臭そうなんだもん。
愛の告白からストーカー、同性の嫉妬に始まってセクハラと痴漢は女が枯れるまでお友達でいなければならないだろうし。
そんな私の学校にはアイドル顔負けの集団がいたりする。
男テニだ。
これがモテるんだ。
何でモテるのか理解に苦しむが、私としては恋愛対象外というか大気圏外なので問題はない。
そんな平穏な日常は、一人の電波的なお姫様の登場によってブチ壊れた。
「イギリスから来ました姫宮かなです。宜しくお願いします!」
平均よりは少し可愛い感じの転校生の自己紹介にパチパチと疎らに拍手が起こる。
転校生こと姫宮かなは少しだけ不満気な表情(かお)をするが、一瞬で特大の猫を被った。
猫はきっと妖怪の猫叉だ。
実はこのクラスに転入してくる転入生は何故か多い。
大抵一月足らずで他の学校に転校して行くのだから誰も彼女を歓迎していなかったりした。
どうせ彼女も一月ぐらいで転校するだろうと思うから。
転校生に対し恒例の質問攻めも無く、生徒達は無言で教師にサッサとしろよと目線で訴えた。
他のクラスより授業の進行が遅れているからだ。
進学校なのだから学問のレベルは高い。
それ故に他クラスと差が開き過ぎればテストの時に困った事になるのだ。
「…あー姫宮は空いている席に座ってくれ。」
ポツンと空いている席に姫宮かなの瞳が肉食獣の如くギラリと光る。
きっと私がその場にいたらこれが噂の肉食女子って奴だね、と笑っていたことだろう。
嬉々として丸井の隣であり、仁王の前の席に座ろうとした。
一瞬で彼等の顔が不快に歪む。
心なしかクラスの空気も2〜3℃ぐらい下がったような気がしたらしい。
「私、姫宮かなっていうの、シクヨロ!」
パッチンとウィンクを二人に向かってかます彼女にイケメン二人はウンザリとした表情で適当に返事をした。
「…ねぇ、そこ私の席なんだけど……」
私は堂々と遅刻して自分の席を占領しようとする無礼者に声を掛ける。
「はぁ?」
ギロっと睨む鬼の形相を媚びていた彼等にも見えている事に気付いていないのか…
面倒臭い奴が来たもんだと私は溜息を吐いた。
「転校生さん、そこ私の席なんだ。君の席はあっち。」
クラスのど真ん中にポツンと空けられた席を指す。
さっさと与えられた席に行けば良いものを何を思ったのか転校生は
「じゃあ、席を替わってよ!もう荷物も置いちゃったし、平凡そーなアンタよりも私の方が嬉しいに決まってるもん。」
痛〜い発言をかました。
スッゲー!
転校生の発言に丸井と仁王の端整な顔が歪む。
どこからその自信が出てくるんだ?
私としては別に席を替わっても構わないが、私に突き刺さるクラスメイトの視線に
「うん、荷物撤収して自分の席に戻れ。迷惑だ。」
クラスメイトの心を代弁してやった。
オオー勇者と呟いた馬鹿の声が私に聞こえてんぞ。
そんな私の言葉が気に入らない転校生は
「私が可愛いからって嫉妬しないで!!」
頓珍漢な台詞をぶっ放す。
続くマシンガントークは、まるでスポットライトを浴びた落ち目アイドルのようだ。
一段落着いた所で担任から転校生に注意が飛ぶ。
強制的にクラスのど真ん中の席に移動させられた彼女は、憎々しいとばかりに私を睨み付けた。
えー
お門違いじゃね?
と思っても相手にするのは面倒なので、私はこれから大変な目に遭うだろう丸井と仁王に昆布キャラメルを握らせた。
超不味くて有名な菓子だ。
「ありすちゃん、酷いなり…」
「不味いのを寄越すんじゃねーよ、ありす。」
ステレオで五月蝿いので私は教科書を盾にして寝た。
ねぇ、お姫様。
君は試されたってことに気付いたかな?
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bkm