夫婦になった兄弟 | ナノ


▼ 5 初夜 ※

常夜灯が並ぶ橋を渡り、森の中の離れへと着いた。
だが兄ちゃんに抱っこされたままの俺は、信じられないものを目にする。寝室の蚊帳の前に、二人の屈強な男が座っていたのだ。

うやうやしく礼をされ、唖然としつつ中に入る。室内は煌々とロウソクが灯り、お香の良い香りに満たされ、いかにもな雰囲気作りに頭がぐらついた。

兄ちゃんは俺のことを、天蓋付きのベッドの上にふわりと下ろした。
すぐに怯えて後ずさる俺に、膝を乗り上げて迫ってくる。

「なぜ逃げるのだ、ユータよ。俺のそばに来てくれ」
「に、兄ちゃん、あの……外にいる男の人達なに? 叫んだら助けてくれるの?」

話題そらしと牽制のために尋ねると、兄は目を丸くした。

「あれは伽の見張り番だ。俺達夫婦の交わりは、自然の神々に報告する義務があるのでな。それに助けなど他に要らんだろう、お前は俺が守る」

凛とした表情で宣言する兄に戦慄する。
俺は今目の前でギラついている人から助けてほしいんだけど。
それに報告ってなんだ、この部族はどんだけ性に対しておおらかなんだ。

「恥ずかしいのだろう? お前のことはもう分かってきたぞ。だが案ずるな、奴らは聞き耳を立てているだけだ。可愛いお前の姿は、俺にしか見えん」

微笑みを浮かべた兄は着物の帯を取り、男らしく全てを脱ぎ去った。
見惚れるほど筋肉質な小麦色の裸体はまあいい、問題はその下だ。

「わああぁっ兄ちゃん、なに、はやく、しまえって!」

すでに反り立った大きなものに目を剥いた。家族だから一緒に風呂に入ったことはあるが、身内のそんなあられもない姿を見る羽目になるとは。
俺のとは全然違う、あまりに立派な存在感に言葉を失う。

「ふふ。そうじっくり見られると、俺も照れるぞ、ユータ」

兄は自信ありげに言い放ち、俺の両脇に手をついた。
全裸の男にワンピースの上を弄られている。これは何の悪夢だ。抵抗しようにも、腰を膝でがっしりと固定されて動けない。

「や、やめ、変なとこ触んな……!」
「今日はお前の全てに触れる。そう決めている」

勝手に決めてんじゃねえッ。
23才のマッチョな男に、16才運動歴なしの俺なんか敵わないって分かってる。
フルパワーで押しやろうと唸っても、あっという間に服を剥かれてしまった。

羞恥に全身が熱くなる。兄が俺の胸に手を這わせ、感嘆の声を漏らす。

「傷一つない白肌だな……ああ、想像よりもさらに綺麗だ。お前が俺の妻だとは……神に感謝せねばならんな」

恍惚と述べ、覆い被さってきた。身長差はかなりあるし、分厚い胸の下に挟まれたら、もう身動きがとれない。
腰が重なったまま、ぎゅっと抱きしめられ、少しずつ揺らされる。

「あ、んぁ、兄ちゃん、離れて」
「なぜだ……? お前のもこんなに昂ぶっている……感じているのだろう?」

男なのだから、擦り合わせたらそうなってしまう。
上体を起こした兄は俺の首筋を撫で、大きな手を髪に潜り込ませた。指でそっと梳きながら、首に舌を這わせてくる。

不快感よりもなぜか全身がびりびりと痺れ始め、力が抜けていく。

「はぁ、あぁ、兄ちゃん、んあぁ」
「お前は本当に敏感なのだな、体が細かく震えている……可愛くてたまらん」

腰を浮かせた兄の手が、俺の下腹部へと伸ばされた。刺激のせいで勃ってしまった自身に指が絡まり、ゆるやかに扱かれる。

いつもは力強く強引な兄ちゃんなのに、優しく気遣うように触れてくる。
こんな事誰かにされたことない、恥ずかしくて死にそうだ。

「もうやだ、兄ちゃん出ちゃうよ、触んないでっ」
「いいぞ、俺の手に全て出せ、ユータ」

二人の息遣いが響く中、欲情をはらむ褐色の瞳に見つめられる。
俺の限界はすぐにやって来た。だいたい隣の部屋で寝ている兄のせいで、この島に来てからというものの、一人でする暇もあまりなかったのだ。

「あ、ああっ、ん、イク……ッ」

兄に抱きついたまま腰を震わせ、達してしまった。
なんでだ。こんな屈辱、ありえない。
羞恥のあまり俯いていると、瞳を覗き込まれ、額に軽くキスされた。

「気持ちが良かったのだろう? 自然なことだ。恥じる必要はない。……それに俺は、今からもっとお前を気持ち良くしてやるつもりだ」

目を細めて微笑み、膝を割って足の間に入ってきた。
兄の手が俺の体の上に翳され、何やら真剣な顔で呪文を唱え始める。

急激に嫌な予感がした。我に返り「何やってんだヤメロッ」と抗おうとすると兄は「お前に痛い思いをさせたくないのだ」と優しい声音で説き伏せてきた。

まずい。
いくら別人になってるとはいえ、それだけは駄目だ。今ならまだ一時の過ちで済ませられると、俺は兄の腕を無理やり掴み、涙ぐんで訴えた。

しかし兄の決意は固く、俺の尻に容赦なく手が這わされる。兄が触れると、なぜかそこはとろりと濡れだした。
異常な事態に固まる俺に「力を抜け、ユータ」と声をかけながら、徐々に太い指が中へと押し入ってくる。

「んっ……ああ、兄ちゃん、やだっ抜いて!」

聞きたくもない水音が響き、探るように惜しみなく指が動かされる。

ある場所をぐいぐい押され、下腹がビクンッと跳ねた。
短く息を吐いて兄を見やると、満足げに目尻が下がった。

「ここが良いのだな? 分かった。じっくりと解してから、もっと良いものをやろう」
「や、だぁっ、んあぁあっ」

その行為は俺がいくら懇願しても、手加減なしに続けられた。
感じたくなんかないのに、どんどん体がおかしくなっていく。

やがて指が抜かれ、腰が引き寄せられた。さらに硬く張り詰めて見える兄のモノに、身震いする。

「なに、して、だめだよ兄ちゃん、俺達兄弟なんだよ……っ」
「ユータよ、お前は俺の妻であり、いわば俺の半身だ。だからこそ夫婦とは、こうして時折、ひとつにならねばならんのだ」 

もっともらしい事を甘く囁くように言い聞かせた瞬間、大きな質量をもつそれが、俺の中へと侵入してきた。

「う、あっ、んああぁッ!」

正面から抱き込まれたまま、熱いものが奥まで達してくる。痛みはない、けれど圧倒的な異物感に苦しくなる。

信じられない、本当に繋がってしまった。兄弟なのに、許されないことをしてしまったのだ。

「ああ、ユータ、やっとお前を……俺のものに出来た」

うっとりと見つめ、俺の唇を塞ぐ。結婚式の時とは違い、きつく舌を絡めとられ吸われる度に、じんじんと頭の先まで痺れていく。

抵抗しなきゃいけないのに、なんで俺は、兄ちゃんのキスに力が奪われていくんだ?

「ふ、あ、ぁ……にいちゃん、もう、やめて…」

訴えるけれど、兄は全く聞き入れる様子がない。
それどころか激しく唇を重ねながら、腰の速度を速めてくる。

「ユータ、俺の名を呼んでくれ、今だけでいい、頼む」

切なげな表情で見下ろされ、一瞬意識が奪われる。

俺は今までずっと、あえて兄と呼んできた。別人みたいなこの男を、認められなかったからだ。

でもこんなこと、本当の兄ちゃんはしない。
だからこれは俺の兄じゃないんだ。

「ああっ、んあぁっ……ケージャっ」

俺が苦し紛れにその名を呼ぶと、安堵したような笑みを向け、再び唇を重ね合わせてきた。
さらに揺さぶられ、訳が分からなくなってくる。確実に体内でうごめく快感に翻弄される。

「だめだ、もう、変になる、兄ちゃん!」
「……ッ、俺も、これ以上はもたん、いくぞ、ユータ……!」

勢いよく奥を突かれ、びくびくと体がのけぞる。下腹部がきゅうっと締まると同時に、波打つようなうねりが広がっていく。

ああ、これは一体なんなんだ、気持ちがいいーー。

初めての感覚に意識が途切れそうになるけれど、すぐに中で大きく脈打つものに引き戻された。

逞しい腕にぐっと抱かれたまま、体の奥に何かが注ぎ込まれていく。
熱をもったそれがじわりと染み渡り、肌が小刻みに震えてしまう。

「ん、あ、あぁぁ……」

その時、兄の腕輪の宝石が、一瞬ぼうっと光った様に見えた。
力なく見つめる俺の耳元で、息を整えようとする兄の呼吸が、忙しなく聞こえる。

「ああ、素晴らしかったぞ、ユータよ」
「……兄ちゃん……動かないで、まだ……」
「待て。今お前を楽にーー……っく、良すぎて腰が立たん」

そう呟くと、兄は突然どさっと力を失ったように、俺の胸にのしかかかってきた。

悲鳴を上げた俺が重い体をどかそうとするけれど、まるで石のように動かない。

どうしたんだ、寝たのか?
混乱していると、兄の肩がぴくりと動いた。

「大丈夫か……? 兄ちゃん」

途端に胸騒ぎがした俺は、肩を少しずつ揺すった。
するとしばらくして、信じがたい言葉が俺の耳に届いた。

「……あー……優太。俺のこと、起こしに来てくれたのか……」

聞き覚えのある寝ぼけた声で、短い髪が頬にすりすり擦りつけられる。
明らかな口調の違いに、俺は目を見開いた。

どういうことだ。まさか、冗談だろ。

「ん……なんか、いつもと抱きごこちが、違えな……」

上半身をのっそりと起こし、顔を上げた兄と視線が交わる。
兄は目を白黒させ、下腹部と俺の顔を交互に見やった。

そして再び、石のように固まる。

「……あ? なんで俺、お前ん中に……入ってんだ」

震える声で呟いた兄の顔が、みるみるうちに真っ青になっていく。

それは、こっちが聞きたい。
反論する余裕もなく、二人の間の時が止まった。

よりによって繋がっているときに、兄ちゃんの記憶が戻ってしまったのだ。



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