セラウェ記憶喪失編 | ナノ


▼  39 二回目の初めて ※

転移魔法で戻った先は、クレッドの執務室兼、寝室だった。
任務はまた翌日の午後から行われるため、夜も更けた今は就寝時間のはずだ。

光の粒が消え、俺はすぐに奴が眠るベッド脇へ歩み寄った。上半身裸で、うつぶせの弟の広い背中が見える。どきりとしながらも寝息に近づき、一瞬考えた。

弟の意識がない今、記憶を読む術をかける絶好のチャンスだ。これならエブラルにもらった薬を使わずに呪術を試すことが出来る。
しかし、俺はその気がなかった。なによりもまず、弟に伝えたいことがあったからだ。

「クレッド、起きてくれ」

きっと任務の疲労もあるだろうに、眠る男の肩を掴み揺らした。低く唸るクレッドは、感触と気配に気づいたのだろうか、やがて体をビクッと強張らせ、ゆっくりと目を開けた。

そして視線が合ったあと、失礼なことに飛び起きてシーツの上で後ずさった。  

「……あ、兄貴……何やってるんだ! なんで、戻ってきてーー」
「悪い。お前の気持ちを無視したのは分かってる。でも、どうしても、戻りたかったんだよ」

両膝をついて真剣に告げると、クレッドは薄明かりを映す蒼い瞳を揺らめかせた。
一歩前に出ようとすれば、また背をのけぞらされてしまう。まだ呪いの症状が治まってないのだろう。

「全部聞いたよ、アルメアから。だからもう、気にすんな。俺は大丈夫だから。な?」

手を伸ばすが、取ってはくれない。もうどっちが危ない立場なのか分からなくなってきた。

「聞いたって……じゃあ、尚更来ちゃ駄目だろう…! 兄貴は分かってないんだ、今の俺の状態が……ッ」

言ってるそばからクレッドがふーふー言い始める。やはり俺が対象なだけあって、接近すると顔は紅潮し息も上がる。兄として、心配になった。

「いいか、よく聞けよ。俺には記憶がないが、呪いは二人の問題で、その後お前と付き合い始めたのは俺の強い気持ちがあったからだと思うんだ。俺はブラコンだしお前が好きだけど、じゃなければ実の弟とそんな関係にならねえよ。……だから、自分の責任だって考え過ぎるのはやめろ。お前が今発情してんのも、それを受け止めるのも絶対に俺ら二人ですることなんだ。……大体な、兄としても恋人としてもお前が一人で苦しんでるときに、そばにいられないのは嫌なんだよ。だから諦めて俺を受け入れろ、クレッド。分かったか?」

主張を全て詰め込み、言い切ったあとはすっきりした。弟は俺を信じられないものを見るかのように大きな瞳で見つめ、動かないでいる。
駄目押しで奴に近づき、腕を伸ばして抱き締めた。なんだか前にも同じようなことがあった気がするが、それでもよかった。

「……兄貴……俺、兄貴が抱きたい……」
「ああ。いいよ、抱けよ」

耳元で強まっていく弟の呼吸を聞きながら、ふと漏らされた言葉にまっすぐ答える。
すると背中の服をぐっと掴まれた。正直何が起こるのか戦々恐々としていたが、こいつは小さいときから知っている弟なのだ。

「本当は、もっと、優しくしたいんだ」
「いや優しくはしてくれよ。俺初めてだからな、心は」

素直に頼むが俺を抱き締める力はまるで弱まらない。大体ここは自宅でもなく本当はこんな事をしてはいけないのだが、クレッドの理性は明らかに離れ始めていた。

互いに座ったまま、俺は弟の足の間に腰を下ろし、抱き抱えられていた。体を離し、やっとクレッドと真正面から見つめ合う。不思議と胸の中は落ち着いている。もう、そばにいてもいいのだと安心したのだ。

しかし安心するには全然早かったかもしれない。

「んっ、んんっ」

俺は次の瞬間、口を塞がれて、執拗な愛撫にさらされた。

尻をわし掴まれ、揉まれる。体が密着したまま、色々な箇所をまさぐられる。その無遠慮さがいつもの優しい弟の手つきではなく、激しさにうち震えた。

「クレッド、ぅあっ」

服をはだけられ、鎖骨からその下にクレッドの唇が触れる。痕をつける勢いで吸い付いてきて、赤らんで息を吐き興奮している姿が、まるで知らない男のようで鼓動が加速する。

手が腰からズボンの中に入ってきた時、さすがに体が強ばった。俺も知識だけは豊富な為いきなり出来る場所ではないと、知っているのだ。

「ま、まて、クレッド」
「……ん…?」

顔を上げた鋭い目つきの弟に、急いでポケットから取り出したものを見せる。「アルメアからもらったんだ」とその潤滑油らしきものを渡すと、一瞬停止した奴の目の色が変わった。

「兄貴、後ろからでもいいか」

尋ねるその声は、質問ではなく確認だったようで、俺の体は次の瞬間、奴に向きを変えられ、シーツの上に押し倒された。呆気にとられる上半身が、背後から屈強な体に覆い被せられる。

「んあ!」

弟の腕が俺の腕を押さえ、大きな手が俺の手の甲を握る。
うそ。まさかこのまま犯されてしまうのか?優しくしてくれって頼んだのにーー。

身震いするものの体格の差がありすぎる騎士に敵うはずもなく、俺は上の服を剥ぎ取られてしまった。熱い唇が、首筋から背中へと這っていく。押さえつける手の力は強いのに、口づけは異常に優しい。まるで壊れものに触れるかのように。

そして俺は、奴の顔が見えず後ろから覆われたままなのに、何故かあまり恐怖を感じなかった。背後にクレッドがいることに、どういうわけか満たされていたのだ。

「あ、あっ、ま、待ってくれっ」

しかしズボンを脱がされると流石に緊張した。下着の上から俺のを撫でながら、同時に少しずつ下にずらしてくる。

「兄貴、勃ってるな……触られるの、気持ちいいか?」

すぐ後ろから尋ねられ、返答に困る。勃起しているということは図星なんだろう。でも素直に答える余裕がなかった。
黙っていると、下着を全部下ろされてしまった。

「あっ、んあぁっ、……い、痛くしないで…っ」

男のくせに情けない本音がつい漏れる。後ろで小瓶を開ける音がし、いよいよ尻に触れる時がきたのかと息を飲む。
クレッドは俺の近くに体を寄せて、「大丈夫、兄貴を傷つけたりしないよ」と囁いたのだった。

その一言で安心した単純な俺は、次の瞬間ぬるっと濡れた指が入ってきたことに衝撃を受けた。そんな所はノータッチだったためすぐに「んあぁぁあ」と変な声が出る。
我に返りそうになると、またふわふわした感覚が戻ってきた。

「ひ、あ、ぁ、ん、んぅ」

な、何をやっているんだ、こいつは。
長い指の動きがまるで全てを知ってるかのように中を動かしている。その度に俺は声が止まらなくなる。

初めてなのに、初めてじゃない。それぐらい的確に気持ちのいいところを指の腹で押し付けられ、ビクビクと腰が揺れてしまった。

「あっ…あぁ…や、…やめっ…な、にしてっ」
「痛くない…だろ?」
「……な、い…けど、ん、んあぁ」
「じゃあ、俺の、入れていいか? 兄貴」

一応尋ねてくれるのか…そうほっとしたのも束の間、その突然のメインディッシュ発言が重くのし掛かる。しかもクレッドは俺の返事を聞く前に指を引き抜き、シーツの上に体ごと寄りかかってきた。

え、このままもうするのか。入っちゃうのか、弟のモノが。

ぴたりと先っぽが尻の間にあてがわれた。ぬぬっと入り、前に進んでくる。
そう、普通に挿入が行われていった。

「ん、ああぁぁぅっ」

衝撃に叫ぼうとすると、口をやんわりと手で塞がれる。後ろにはクレッドがいて、「大きな声出しちゃダメ」と色づいた声で言われた。
すぐに反省するもののお前は大き過ぎるもん入れてんだろうがと文句が出かかる。

「う、ぅぁ、なに、してんだお前っ」
「……ああ、入っていくんだよ、兄貴、やっと俺の……」

俺にとっては初体験だがこれは奴との久しぶりのセックスのはずだ。なのに何故だろう、全く痛くない。薬のせいか、弟の手際がいいせいか、俺が何の拒否も示さず感覚的に覚えているせいかーー。

クレッドの胸板が背にくっつき、俺はシーツに寝そべり腰まで密着させられた。奥に入ってくるのが分かる、あいつのモノがやらしい音を立てて引き抜かれ、また慣れさせるように中へと侵入してくる。

「ん…んあっ…だ…めっ……や、あ、あ…っ」

抜き差しが繰り返されてやがて挿入したままになり、そこからが本当の始まりだった。弟は俺の上半身を後ろからぎゅっと抱き締め、腰を動かしてきた。ぴたっと合わさった腰同士が揺らされ、さらに声が止まらなくなる。

「あ、あ、あっ」

まさか最初からバックでこんな風に突かれるとは。俺は男だからこんなの初めての体勢だし、何より感じたことのない快感に翻弄されていた。

「やめっ、やめ、やめろぉっ」

くちゅくちゅ尻の中が濡れたちんぽに擦られまくり、始めから気持ちよくなりすぎて怖くなる。しかしクレッドの腰はまったく止まらず、勢いが増していた。

「もう止められないよ、兄貴、だって、まだ抱き始めたばかり、なんだぞ?」

俺の胸に回される手の力が強まる。奴の息づかいは荒くなり、これでも興奮を抑えてると言わんばかりに首筋や頬をもどかしくなぞり、時おりキスをしてくる。

「ひぅ、う、うぁ、あぁ」

自分もおかしくなってきた。中をぐちゃぐちゃ掻き回されて長いものに奥をずんずん突かれていると、たまらなく疼きがせり上がってくるのだ。
前だってずっとシーツに押し付けられて、もう出そうだった。後ろの感覚は分からないが、とにかくこのまま突きっぱなしだったらやばい。

「クレッド、だめだっ、なんか、……い、イクかも、しんねえっ」

後ろを向こうとしたが、捕まっている体をぐっと容赦なく封じ込められる。
……え? なんでそんなことするんだこいつ、少しぐらい俺の意見を聞いてくれても…

「駄目だよ、我慢しないでイッて」

弟が上体を起こし、一旦離れるのかと思われた。しかし奴のものは出ていかずに体勢を変えただけで、もっと大きな反動で律動が始まった。

「んっ、あ、あぁっ!」
「ああ、気持ちいい? 俺はすごく、いいよ」
「……ん、んぁ、い、いぃ……っ」
「本当に? 可愛い……」

初めて甘い言葉を言われてドキリとした。ずっと後ろからだからなんとなく距離を感じ始めていたのだ。そういやこいつの表情も全く見えてない。

「クレッド、起きて、してくれ」

俺が頼むと奴の動きが止まる。一度ぺニスが引き抜かれた。「んぅっ」と声を上げれば、体がまた奴の腕に引っ張られる。
今度は座った弟に優しく抱っこされる形になった。

「寝てするの嫌なの? 寂しかったのか、兄貴」

顎を撫でられ、頬をなぞられてゾクゾクする。クレッドの顔が近づき、唇が重ねられる。
柔らかくて熱いキスが続き、俺は気持ちよさにぼうっとする。
寂しかった、と聞かれ、ようやく俺はその気持ちを理解した。

「そうかも、しんねえ…」

呟くと目を見開いた弟に、また唇を奪われた。今度は勢いが強く余裕が感じられない。
膝の裏をもち、両足を開かされた。おいそのポーズはさすがに羞恥を煽られすぎて無理だと抵抗する。

「や、やだっ、やめろってばぁっ」
「動かないで、大丈夫だよ、俺がここにいるから」

だからお前の視線を感じて恥ずかしくて死にそうなんだろうが。
俺に構わず後ろからの座位で下から突き上げられた。クレッドの手がぺニスに伸ばされ、優しく握って擦ってきて、刺激に我慢ができない。

「んあっ、やぁ、これ、やだ、あぁっ!」

下にいる弟に足を持たれて二人の腰がぐわんぐわん揺れる。ベッドが軋むが声は我慢しないといけないのに。弟の突き上げのせいで完全に自由を失う。

「……兄貴、すごい、いいよ、……あぁ、兄貴…ッ」

片腕が腹にぐっと回されて、律動が激しくなる。中がきゅうきゅうして限界が近づく。前もそうだが後ろはまさに感じたことのない絶頂が来ようとしていた。

「クレッド、クレッド、もういく、いっちゃうって!」
「うん、イク? いいぞ、一緒にいこうな、兄貴、……ぐっ!」

ビクビクっと弟のぺニスが脈打ち、敏感な俺は自然に中を締め付けた。

「んああぁぁあっ」

きゅんきゅんと奥から震え、腹に自分の白濁液がかかる。そしてそれ以上に異常さを感じたのは、自分の中に弟のものがたっぷり射精されていくことだった。

「ん、ぅ、あ、ぁ、んぁあ」
「……っ、あ、兄貴、まだ、で、る……ッ」

出しきるために腰をぐっ、ぐっと入れてくる弟により言葉を失う。中出しって、こんな感覚なんだーーそんなことを遠退く意識で感じながら、俺は次にさらなる異常事態に見舞われた。

「……ん、んあ……あぁ……っ、あ?」
「…………どうした、兄貴…」

まだ足は開きだらんとクレッドの膝の上に乗っている。奴は俺の腹をいとおしそうに撫で、もうひとつの手で頬を自分のほうに向かせた。
興奮した顔で口を近づける。行為が終わり、再びキスをしてくれた。軽いものだが唇の表面が痺れて気持ちいい。

しかしーー。

「な、なに……? 中が変だ……」

自然に目がじわりと潤む間も、クレッドの指に唇をなぞられていた。

「ん……?」
「……だって、もうイッた…のに、んぅ、あぁあ……」

どういうことだ。ケツでいくとこんな風に刺激が持続するのか?
いや、単なる刺激なんて可愛いものではない。これは一体なんなんだ。じわじわ広がる快感につられ、腹が上下に細かくしなる。

「あっ…あっ…あぁっ」
「……兄貴、気持ちいいの…?」
「く…っ、クレッド、……きもち、いっ…」

そう告げた瞬間、さっき達したばかりの弟の腰が、また下からぐっと腰を入れてきた。

「ああぁ!」
「本当に? 今も、いい……?」

静かな声で耳元で囁かれ、俺は耐えきれず何度も頷いた。クレッドは俺の腰を持ち上げ、ずぼっとぺニスが引き抜かれる。シーツに膝をついた俺は訳もわからず呆然とし、振り返ろうとした。すると弟がまた俺の体を反転させ、自分と向き合うようにした。

「あ、あぁ…」

恥ずかしい液が股の間をつたっていく。クレッドは赤らむ顔で呼吸をし、それを指先でつつ、と辿った。俺の腹だって濡れてるし、こんな姿を直視されて何もかもか恥ずかしくなる。

「やっ、やめ」
「兄貴、気持ちいいのか、俺が……出したやつ」
 
うっとりした顔で尋ね、座る自分の胸板に抱き寄せてくる。俺はとっさに奴の首に掴まり、抱き抱えられた。

「……ああ。なんでだ…? 俺、おかしくなった…?」

そう言いながら自分から体を近づけ、弟の口に引き寄せられるように、キスをしてしまった。
すぐに背中に腕を回され、力強く抱き締められる。
やがて見つめ合った弟の瞳は潤んで見えた。

「おかしくない。俺も愛してる、兄貴のこと」

そう言ってまた唇を重ね合わせる。答えには嬉しくなったが、状況はよく分からないまま必死にキスに応えた。だが尻の後ろに硬いものを感じ、俺は背をのけぞらせた。

「あ、クレッド、お前の、またっ」

そんな早い復活があるのかと驚愕するが、奴の瞳はこちらをまっすぐに見つめている。

「兄貴。俺は、射精する度に……発情が強まるんだ」

衝撃の事実を告げられ、しかし自分も中で渦巻く快感の波に囚われ、聞く余裕がなかった。

「へ? あ、ああっ! ま、待って、中、だめだって!」

前から抱き締められて再びクレッドの腰が動き出す。座ったままだから、すぐ目の前に弟の顔があって恥ずかしくてたまらない。

「あのな、これ、気持ちよくなっちゃうやつだよ、俺のこと、好きだって思ってくれていると、中に出した精液が快感に変わるんだって」

……え、えええーっ!

俺は弟に揺さぶられながら、その話に必死に耳を傾けた。なんでもこれは上書きされた呪いの効果によるものらしく、弟が両思いの人間には射精時に快楽が付与されるのだという。

「う、うそだろっ、信じ、らんねえっ、ばかかっ、こんな、気持ちいぃのっ」

半分恨み節で乱れに乱れてしまってる俺が叫ぶと、反対にクレッドはこれまでの鋭利な目つきから、目元を柔らかく変化させ、いつもの優しい表情を垣間見せた。

「ああ、兄貴、嬉しい……今の兄貴も、俺のこと、好きなのか?」
「ひっ、う、あぁ、んあっ、……す、すき、だからっ、……ま、まて、ちょっとっ」
「俺も好きだ……大好きだ、兄貴……どんな兄貴でも一生、愛してるよ」

硬くなったぺニスに奥をずんずん突かれながら、クレッドによる愛の言葉が降りそそぐ。
それは本当に嬉しいのだがこの弟、段々様子が変わってきた。正直最初はちょっとひりついてて怖かったのに、興奮と甘さがさらに増しているように見える。

「ま、待てってば、クレッド、俺、初めてだから、す、少し休ませて、くれっ」
「そんなの無理だよ、だって、もう二ヶ月近くしてないし、しかも、兄貴にこんなに発情してーーああ、好きだ兄貴、好きなんだ……」

股がってる俺にやや下の目線でうわ言のように繰り返す。その間も容赦なく大きなぺニスに中を擦られまくり、俺は何度も変なイキ方をしてしまう。終わりがなく、まるで永遠に続くかのようなイキ地獄だ。

「あ、また、やばい、いく、イクって、クレッド!」
「またイク? 可愛い、兄貴……今日はたくさんイっていいよ」

こんなの夢よりもやばい。内壁が狂おしげにうねり、弟のを締め付け、ビクビク震えて達する。後ろに倒れそうになる体をがしりと逞しい腕に支えられ、また抱いて密着させられる。

「ん、兄貴、すごい、イッてる……ッ」

眉根をよせたクレッドが、自らも腰を痙攣させ、俺を強く抱き寄せた。

「ダメだ、俺も、また出すぞ」
「……えっ? むりむり! やめろぉっ」
「無理だよ、もう、兄貴の中に、出す……ッ!」

嘘だろ。
ただでさえ濡れまくった所をぐちゃぐちゃ掻き回され理性が飛びそうになっていたのに、こいつはまた俺の中で出すのだという。どうなってるんだ?
自分の弟がこんなに絶倫だなんて、聞いてないしーー。

また大量の精液が注ぎ込まれ、今度こそやばいと思った。頭がぐらぐらする。
力が抜け、もともと体力のない俺は弟の上にくたぁっと全身を預ける。

クレッドは俺を抱いたままゆっくり後ろに背を倒した。シーツの上に横になり、俺は繋がったまま奴の上に寝ていた。

おい。なんか自然に騎乗位みたいなことになってんだが。
どうしようと焦っていると、そのままぎゅっと抱き締められる。

そうか、二発出したし、ようやくこの発情も翳りを見せてくれた……と安心しそうになった時。

「兄貴、気持ちいい……」
「……あ、ああ。俺も、だ」
「本当か……? ごめんな、全然、思ったように……できなくて」

えっ?鬼気迫る感じながらもかなり気持ちよくしてもらった思いがあるのだが、じゃあこいつのプランは何だったのかと冷静に考えようとする。

「いいよ、だってお前発情しちゃってたんだし。でも全然俺、大丈夫だったよ。だから気にすんな」

達成感を滲ませながら、本当は中の疼きをこれ以上悟られたくなくて、兄らしく微笑んで伝えた。
すると弟は感極まった表情で、また蒼い瞳を潤ませた。

「……兄貴……ッ。よかった。そう言ってくれて、ありがとう。……まだ最初だから、出来る限り抑えてみたんだけど、今度はもうちょっと、優しく、気持ちよく、出来ると思う」

決心を滲ませるクレッドはそう言って上体を起こした。挿入したまま、俺はごろんと横のシーツに下ろされてしまう。
まばたきをする俺に、恍惚とした表情をして、大きな手で頬を包み込み、キスをする。
ねっとりと情熱的で愛情を感じるキスには、俺もうっとりした。
 
でもちょっと待てよ。今度って、なに?

「ま、まてまて待て! また硬くなっちゃってるぞ、どうしたおい!」
「……えっ。だって、俺、発情してるんだぞ。まだまだ終わらないよ」

ちゅっ、と軽い口づけをして弟の美しい笑みに見下ろされた。
そのまま腰が動き始める。口では拒否してもその瞬間に自分の下半身が喜ぶのが分かった。
こいつの肉体なのかちんぽなのか、もはや俺にぴったりなその代物には、すでに抗えないのだ。

「あっ…ああ! なんで…きもち、いいっ…やぁっ、クレッド…っ!」

正常位でゆっくり腰を振られる。「俺もいいよ」とかその度に言ってきて、甘い言葉とぺニスの気持ちよさと精液の快楽に思考が飛んでしまいそうになる。

「兄貴、……兄貴、かわいい、ああ、俺の兄貴」

揺れる筋肉質な裸体が、やがて上にのしかかってきた。力を失う俺の足を持ち、何度も腰をいれ、これでもかと俺のことを気持ちよくしてこようとする。

前の俺は、これほどまでの愛情と快楽を、弟から受け取ってきたのか。
凄すぎだろ……と我ながら尊敬した。

しかし俺も負けてはいられない。
自分でもちょっとおかしいのかとは思うが。今この瞬間も、俺は幸せを感じていて、身も心も満たされていたのだ。知らないはずなのに、足りないものが戻ってきた感じとでもいうのだろうか。

前から腕を回して、弟にじっと視線を合わせた。

「クレッド、お前が好きだよ、なあ忘れないでくれ、……今の俺も、お前のこと……愛してるんだってこと」
「……え? あに、き……?」

愛なんて言葉、誰にも言ったことがない。ああ、そうだ、こいつ以外には。

「本当だよ、今の俺が断言してやる。お前が初めてだ、こんなに好きで、愛してんの。薄々感づいてたけど、完全に分かったよ」

そう言って顔を近づけ、キスをねだった。するとクレッドは、少しの間の後、俺にその日一番の熱い熱い口づけをしてくれた。

「兄貴、俺も愛してる。兄貴のこと、一生大切にする。だから、俺に全部……任せてくれ」

突然言われたその台詞が、ぶわあぁっと全身を駆け巡った。
今のは完全にプロポーズみたいだった。きっとこいつは、俺のためにももう一度伝えてくれたのだろう。

「……ああ。任せるよ。お前がいないとたぶん、駄目なんだろうな俺。……なんとなくそう思う」
「ああ、全然だめだよ兄貴は」
「おいっはっきり言うなっ」

今、こんな状況なのに、何を普通に会話しているんだ。
くすりと笑う弟の体は熱いままで、やはりまだ熱は抜けていないのだろう。頬に手を添えても微かに肩を震わせ、何か大きなものがまだ燻っているようだ。

でも、これは二人の呪いだからな。それこそ愛情と同じく、一生ものの。

「……っ、あ、あぁ、やべ、また来たっ、……なあ、クレッドっ」
「なに?」
「発情してるからって、今言ったこと、忘れんなよ!」
「……そんな、忘れるわけないだろう、俺はどんな時でも、兄貴とのやり取りは全部、覚えてる」

愛おしそうに顔をなぞって告げられる。
こいつ、本当にそんな感じだからすげえ。

素直に感心しながらも、また弟の強い気持ちを知った俺は、その後もしばらくクレッドに身を任せ続けていた。



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