騎士団員おいしい。 | ナノ


▼ 19 ふたりの約束

寝室のベッドへと連れられた俺は、騎士の厳しい瞳に晒されていた。
足を閉じて大人しく座るが、これから起こることを想像して、じりじりと体の奥底が開いていく感覚がする。

ベリアスはゆっくりとシーツに手をついて、俺のほうに迫ってきた。
ふいに耳元に唇を近づけられ、びくん、と肩が震える。

「俺の好きに抱くぞ、いいのか」

低い声音で囁いてくる。
ああ、まだ触れてもないのに、吐息から騎士の昂ぶる熱が伝わる。

「いいよ、きて……」

俺は甘い交接など求めていない。むしろ激しく乱暴に抱かれたい。
しかしどんなやり方だとしても、この男から与えられる交わりは、最高のものに違いないのだ。

「うつ伏せに寝ろ」

命令口調にぞくりとする。
言われた通り枕に顔を乗せて、手を置き、ベッドに寝そべった。

バサリ、と服の脱げる音がする。振り向きたいのを我慢し、腰をわずかに浮かせる。
すると下腹部にぐっと衝撃が襲った。
騎士が俺の上に馬乗りになり、下半身が強く押さえつけられる。

重い体重が心地よい。
後背位で犯されるのは好きだが、今起こっている光景は仰向けで望みたかった。

「んあぁ……ベリアス……」

尻をもみながら、ゆさゆさと腰を動かし、振動を与えてくる。
シーツについた俺のチンポが擦れ、すでに危うくなる。

「だめ、あぁ、動かないで、出ちゃう……っ」
「出せばいいだろ、ほら」
「やだぁ…! まだイキたくない……中も、触って……」

ベリアスはぴたりと動きを止めた。
背中を指先で撫でながら、もう片方の手で尻を弄りだす。
ぐちゅぐちゅと濡れた場所に太い指を挿し入れ、擦り上げるように抜き差しする。

「う、あぁ、んんぅ」

この男のペースに合わせていると、前戯が丁寧すぎる。
もっと最初からガンガン突いてくれるかと思ったら、やっぱり焦らされてしまう。

「ああ、指じゃ足りない、もうあんたの入れてよ……」

体重をかけられているため、腰を上げて淫らに誘うことも出来ない。
抑圧された状況で限界が近づいていた。

俺は顔のそばにあったベリアスの手をぺろっと舐めた。
一生懸命舌を這わせ、唇で吸うように愛撫する。

騎士の動きが止まり、指が引き抜かれる。
どすっと重みが増し、胸板が背中にピタリとくっつけられた。

「俺にどうして欲しいんだ? ルニア」

すぐ後ろで囁かれ、首筋を手のひらで覆われ、喉元をするりとなぞられる。
肌が近いのは気持ちいい。
けれどもっと、これ以上ないぐらいに、この男と繋がりたい。

「あ、あ……あんたのおっきいので、たくさん、奥……突いて……ほしい」

途切れ途切れに請うと、突然体が軽くなる。
次の瞬間、騎士の硬く張りつめたモノが、内壁を押し上げながら中へと侵入してきた。

「んああぁぁ!」

俺が望んだ通り、奥深くまで一気に貫いてくる。
シーツを掴んだ手を、上から覆い握りしめられる。

「ああ、ルニア、お前の中は良いな……柔らかいのに、きつく締めつけてくる」

腰を打ち付けながら、淫らな囁きを止めない。
俺は身じろぐこともできず、一方的にベッドに押し付けられ、快感を享受するだけだ。

「……ん、ぅ、だめ、いく……前も、出る……っ」

訴えると、騎士の動きが速まった。
荒い息遣いとともに尻が強く打ち付けられ、ひりひりと痛みが走る。
それ以上の快楽が全身に伝わり、内側から揺さぶられていく。

「んぁ、あ、ベリアス……い、いっちゃう、もっと、して」

さらに激しい動きに擦られた自身がビクビクと痙攣した。
堪えきれず全てを吐き出し、シーツに濡れたものが伝わる。

「あぁッ、奥、もっと、ん、んぁ、あぁぁッ」

きゅううっと中が締まり、何度も内壁が収縮する。
俺が達した後でも、騎士の逸物は激しく前後に挿入を繰り返し、深い快感を与え続けてくる。

「ベリアス、んぁあっ、もう、あんたの出して、早くぅ……ッ」

欲しくて欲しくてたまらない。
この男の精液を体の奥で飲み干したい。

「……駄目だ、ルニア、中にはやらねえ」

騎士は低い声で呟き、急に俺の体内から自分のものを引き抜いた。
短い喘ぎとともに、生温かい液体がビシャッと尻のあたりにかかる。

何が起きたか分からず思考が止まった。

「……はぁ、はぁ、なんで……」

俺は震える声で呟いた。
嘘だ……あり得ない。

この男、俺の体外に出したのか。

騎士が体を少し浮かせたのを見計らい、俺は疲れも無視してすぐに起き上がった。

「ひどいぞ、あんた、どうしてそういう事するんだ」

悔しくなり涙声で問いかける。
騎士は額を薄っすらと汗で滲ませ、濡れた金髪を煩わしそうに掻き上げた。
未だ欲情を匂わす色めいた瞳に、じっと見つめられる。

「俺の好きに抱くと言っただろう」

……ふざけるな、こんなの抱いたうちに入るか!

怒りの余り言葉が出てこない。
ベリアスはベッドの上にあぐらをかき、俺の腕を引くと、そのまま抱き寄せてきた。

「やめろ、嫌だ……ッ」

せめてもの抵抗として動かずにいると、大きな腕の中に包まれ、強引に体を抱き上げられる。

「怒るなよ、ルニア。またお前が気を失ったらどうするんだ? 俺は心配なんだ」

そうやって優しい言葉をかけて、またぐちゃぐちゃと心を乱してくる。
俺の気も知らないで。

「だからってこんなの、あんまりだ……俺はあんたが欲しい、我慢できないんだよ、ベリアス……」

悲しい。
こんなに求めているのに。どうして分かってもらえないんだ。

うつむいた顔を上向かせ、唇をそっと重ね合わせられる。
ちゅ、ちゅ、と音を立てて優しく愛撫される。

「んぅ……」

軽いキスなのに気持ちよさに力が抜けていく。
けれどそんなので騙されると思ってるのか。

「もう一回してやるから。それでいいだろ?」
「……今度は中に、出してくれる?」
「それは駄目だ」

この頑固な野郎ッ。
このままじゃ精気どころか心も満ち足りず、翻弄され、すり減っていく。

もういい。
俺の最大の締付けを発揮して、こいつを中でイカせればいいだけだ。
この驕り高ぶった騎士を屈服させてやる。

腰を揺らし、騎士のモノを尻の谷間にすりすりと擦りつける。
不意を突かれたのか、ベリアスが小さな声を漏らす。

この騎士は出したあとでもすぐ硬くなり、復活が早い。
大きさもさることながら、あらゆる面で俺を満足させてくれる男なのだ。

「はぁ、はあっ、んん、入れていい……?」
「ルニア」

少し低い位置から俺を見上げ、浅く息をついている。
今しかない。
俺は腰を落とし、もう一度騎士の逸物を受け入れた。

対面座位でさらに圧迫感を募らせる大きなモノに、身がぶるっと震える。
前後に動かし、はしたない声を上げ続けてしまう。

「あっあっ、ベリアス、やぁ、あぁ」

騎士は俺を見つめながら、腰に回す腕の力を強める。
今度は何も言わなくても、下からゆさゆさと揺らしてくれる。

肩にしがみつき、互いに動きを合わせる。
汗がべっとりついた肌の温かさが、しっとり心地よい。

ベリアスは俺の鎖骨に口を這わせた。
優しく吸いつかれ身悶えてしまう。

ああ、舌も唇も、指も手も、何もかもが俺の好みなのだ。
この男の全部を自分のものに出来たらーー

揺さぶられ夢想していると、ベリアスは俺をきつく抱きしめてきた。

「ルニア……俺はお前の気持ちよさを、他の誰にも味わってほしくないんだ」

二人の息遣いがせわしなく響く中で、穏やかに言葉を紡ぎ出す。

「お前はどうだ、俺にこうされるのは、気持ちいいか?」
「……んっ、んぁ……きもちいい、ベリアス……あ、あんたの、好きだ……」

大きな体に掴まりながら、自然と湧き出た思いを告げる。
すると頭に手を添えられ、視線を合わせられた。
上気する騎士の顔が、どこか恍惚として見えた。

「俺が好きか、ルニア」

真剣な表情に、心臓がどくどくと音を打ち鳴らし始める。
どうしたのだろう。瞳から目を離せない。

「俺はお前が好きだ。お前以外、抱きたいとは思わない」

眼差しと同じくまっすぐな思いに、胸を撃ち抜かれる感覚がした。
それは、俺の知らない感情だ。

こんな優れた体躯をもつ立派な男が、俺に向かって切々と思いを伝えてくるなんて。

「俺だけ……?」
「ああ、そうだ。お前だけだ、ルニア」

騎士は心からそう思っているようだった。

「……じゃあ、あんたは、俺のものになってくれるの?」

俺は騎士の頬に手を触れ、気になったことを尋ねていた。
心臓がうるさいぐらいに鳴り響く。

「お前がそう望むなら、お前のものになるよ」

騎士は俺の手を上から握り、甘い仕草で柔らかく笑う。
どうすればいいのか分からなくなった。

「俺……そんな事を言われたのは、初めてだ、ベリアス」

けれど、嬉しいと思った。
俺は所有されるばかりで、何かを手に入れたことは無かったからだ。

そっと唇を寄せ、騎士に口付けをする。途切れさせたくなくて、思いのままにキスをする。

「……そうか。そうだったのか、お前」

静かに呟いた騎士の瞳が、なぜか揺らめいている。
困ったような、優しい瞳で見つめられた。
俺も気恥ずかしい気持ちになり、再びどうしていいか分からなくなる。

「じゃあ俺をお前の好きにしろ、ルニア。それでいいか?」

ふっと笑いかける騎士を、ぼうっと見返す。
今までずっと自分のものになれとしつこかった男が、自らを捧げようとしているのか。

この騎士は、俺に何でも初めてのものをくれる。
浮足立つような、得も言われぬ喜びが溢れ出してきた。

「ベリアス……俺も、あんただけに……するから……」

俺は淫魔なのに、何を口走っているのだろう。
けれど何故か、柔らかな笑みを浮かべる騎士を見て、言わずにはいられなくなったのだ。

「本当か? ルニア」
「……うん。受け入れるのは、あんただけにする。それでいい?」

俺の言葉に、ベリアスは一瞬怪訝な顔つきをした。
これは俺にとって、かなりの決意を込めた宣言なのだが。

騎士は納得したのか、俺にまた口づけしてきた。
ふわふわと夢見心地の気分に落ちていく。

その夜、俺は何度も騎士の腕に包まれ、惜しみない愛を得ることとなった。



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