騎士団員おいしい。 | ナノ


▼ 15 幸福と災難

「なあ、誰だ。ルニア」
「んっ…ふ……ぁ……あ」
「……お前は誰と、こういう事をしたんだ?」

ベッドの上で裸で向き合っているというのに、ベリアスは容赦なく凍てつく眼差しを送ってくる。
この騎士のしつこさは、悪魔の俺でも引くほどの異常さに満ちていた。
延々と俺の口を貪りながら、じりじり快感と言葉で追い詰めてくるのだ。

「はぁっ、ん、あ、ベリアス……っ、してくれたら、教える、からぁっ」
「駄目だ。お前が先だ」

尋問さながらの厳しさで言い捨て、俺の両足を膝で割り、そのまま股間をぐいぐい押してくる。

「ああぁぁッ」

我慢出来ずにベリアスの上半身にしがみつき、足を腰に絡ませた。
下から腰をすり寄せ、必死に欲しいモノを貰おうとねだる。

「……入れて、くれないの? じゃあ、俺の体、舐めて……」

限界を悟り、少しでも刺激が欲しくなった俺は、浅く息づきながら懇願した。
この間のように焦れったく舐め回されるのを我慢すればーーあわよくば繋がれるかもしれない。

騎士の動きが一瞬止まり、金色の瞳が何かを言いたげに見下ろしてくる。

ベリアスは体を起こし、大きく舌を打った。
俺の足を曲げさせ、太ももをがしっと掴む。開脚した状態で全てが晒され、自然と息が上がる。

程なくして、腿の内側に生温かいものが触れた。
ぬるっとしたものが股間へと降りていき、俺のチンポに舌が這わされた。

「あ、あぁ……っ」

まさかーー嘘だろう?

ベリアスが勃ち上がった俺のモノを口に含んでいる……
焦らしプレイが続くと思いきや、なんというご褒美だ。

「はぁ、あ、んぁ、んぅ」

キスの時に感じる舌の動きと全く違う。
もっと大きく上下に動き回り、竿全体を巧みに吸いあげられる。

この男、何から何まで気持ちいい。
想像以上の快感が襲い、一秒たりとも我慢できない!

「っは、ああッ、ベリアス、だ、めっ……んあぁ!」

口内で波打ち、自制する余裕もなく吐き出してしまった。

騎士は眉間に強く皺を寄せた。けれど次の瞬間、ごくりと喉を震わせた。
無言で口を拭う。明らかに好んでした事じゃなさそうだ。

「なんで……?」

ぽーっと余韻に浸る中、放心状態で尋ねた。

「あんた、そういう事……したことあるのか?」
「あるわけねえだろ。お前が出したから飲んだだけだ」

恐る恐る尋ねた言葉に、ぶっきらぼうに返された。
兄上ですら俺のを飲んだりしないのに。
自分の快楽に関係ないことをするとは……

俺はベリアスに体を寄せ、そっと抱きついた。
もたれかかるように胸板を押し、ドサっとシーツの上に二人で倒れ込む。

「あんたの口、すごく気持ちよかった。俺、嬉しい……」

素直な気持ちを告げ、唇を指でなぞり、自分からキスをする。
大きさの違う舌を絡め取り、一生懸命吸い上げる。

この中で、俺のを愛撫してくれたーー
口元を見つめながら、内側から欲求が湧き起こってくる。

「ベリアス……あんたのも、舐めていい……?」

囁くように尋ね、俺は後ろに下がり身を屈めた。
騎士を見やると、わずかに眉を上げて、ぴくりと腹筋を動かした。

ああ、もう勃たせている。
いつ見ても圧倒的存在感を放つ逸物を、両手に大事に包み込む。

そうだ。もっと早くこうすれば良かったんだ。
交接よりは控えめだが、精気だって直接もらえるのだ。

今こそ俺の性技で、メロメロにしてやるーー
この頑なな男も、ぐだぐだ言うのをやめて観念するに違いない!

「ふぅ、ん…む……っ」

ぺろぺろと先っぽを舐めた後、口をすぼませ、一気に咥えこんだ。
中がすぐに一杯になってしまうほど、さらに質量が増していく。

「んっ、く……ん、んぅ」

人間のを口淫するのは初めてだった。
なぜか含むだけで、全身に充足感が染み渡る。

「ルニア」

ベリアスの掠れた声が届いた。
呼応するようにきつく吸い上げると、騎士は突然上体を起こした。
前屈みで一生懸命しゃぶっている俺の背中に、手を這わせ、首の辺りまで撫でてくる。

ん?
こいつは、何をしているんだ。
また俺は騎士の一挙一動に心が乱される。

「上手だ」

優しげな声音に表情が気になり、顔を上げる。
舌を這わせた口を離すと、微かに吐息が聞こえた。

「あんたも気持ちいい? ベリアス……」

気になり尋ねると、顔を頷かせる。明らかに欲情をはらんだ目つきに、奥が疼いて仕方がない。

「ああ。お前にされるのは、すごく良い」

素直に告げられ、優しく髪を撫で、そっと掻き上げられる。
些細な仕草でも、触れたところが敏感に反応する。

顔が熱くなるのを感じ、すぐに目線を下にやった。
頭上からふっと笑い声が聞こえ、動揺しながらも口の動きを続けていると、今度はおかしな事を言い始めた。

「なあ、誰がお前に、こんな事を教えたんだ?」

ぴたりと止まりそうになるのを堪える。
そんなの、兄上に決まってるだろう。
次に執事だ。

正直に言うとまた怒られると思い、あえて黙っていた。
今は、この男の肉棒を味わうことに専念したいのだ。

時折上目遣いで見やると、ベリアスは次第に息を荒げ、眉を寄せていた。

「……ッあ」

わずかに喘ぎを漏らす。
まるで初めてこいつを襲った時のような、色づいた男の声だ。

じわりと自分のがまた濡れてくる。
ああ、何故こんなにも胸がざわめき立つんだ。
咥えているだけでこんな風に、感じたことがない。

追い上げるように勢いを強め愛撫していると、中でビクビクと大きくうねりだした。

「……ッ、出すぞ」

頭を撫でられ、手のひらで耳に触れられる。
動きを速めて吸い上げた。

ベリアスの短い喘ぎと共に、精液が吐き出される。
濃さは変わらず喉に絡みつくように美味さが広がる。

体内に受け入れても、口内から取り入れても、良すぎるなんてーーなんという幸福。
やはりこの男は特別だ。

恍惚に揺らめいていると、一瞬頭がぐらついた。
起き上がろうとした体が、ふらっとよろめく。

「……おい? ルニア」
「はぁ、はぁ……あんたの、すげえ美味しい。……ねえ、やっぱり口だけじゃ嫌だ、ここにも入れて……」

抱きとめられた胸に縋りついて、矢継ぎ早に述べる。
なぜか精飲した途端に、ほわほわと夢の中に落ちたように、自我が揺らぐ感覚がした。

精気の美味さが、それほど衝撃をもたらしたのだろうか。

俺をどこか心配げに見上げ、ベッドに座る騎士の上に跨がる。
淫紋を見せつけるように、腰を浮かせた。

「ほら、ベリアス……これはあんたの印だ。俺はあんたのものだから、いいだろ、してよ……」
「……お前、様子が変だ。どうした?」

頬を親指でなぞられ、びくりと背中が仰け反る。
ああ、入れてほしくてたまらない。
俺はベリアスの肉棒に手を触れさせ、優しく撫でた。

「すごい、もう硬い……あんたも俺が欲しいんだろ? はやく、欲しいって言って……」

尻に先っぽを充てがう。ゆっくり腰を落とし、受け入れていく。
さっきまで頑なに拒否していたのに、ベリアスは俺を凝視したまま、好きにさせている。

「……ッ、おい」

腰をぐっと掴まれた。また貫くような視線だ。
俺は騎士の短い金色の髪に触れ、顔を近づけた。
文句を言われる前に、ちゅっと口を塞ぐ。

「んぅ、ふ、……ぁあ……ベリアス、動いて、お願い、下から突いて」

一方的に腰を揺らし、懇願する。
頭のぐらつきを必死に無視しようと、肩にしがみつこうとした。
すると脇腹を押さえられ、ぐいっと引き剥がされた。

「俺を見ろ、ルニア」

視線を合わせると、まっすぐに俺を見つめる男の顔があった。

「俺はお前が欲しいんだ。体だけじゃなく、いずれは心も欲しい。言っている意味が分かるか?」

心……?
頭の中が混乱を極める。
この男の気持ちというのは、好意を持った俺への、単なる所有欲じゃないのか。
ぼうっとしていると、頬を大きな手で包まれた。

「お前に魅せられたんだ、ルニア」

「どういうわけか、気になって仕方がない。お前を俺以外の奴に、触れさせたくない」

連続して紡がれる言葉を考える前に、唇を奪われた。
息をつく間もなく情熱的なキスを与えられ、同時に深く腰を入れられる。

「……あ、あぁッ、ベリアス!」

さっきまでの静けさが嘘のように、下から激しく突き上げ始めた。
中を騎士の大きなモノに占められ、ぎちぎちに満ちたまま上下に挿入を繰り返す。

「んぁ、だ、だめ、あぁぁ! 気持ちいい、やあぁっ!」

必死に突き上げを受け止めようと、抱きつく体を揺さぶられる。

「ルニア、俺のものになれよ、何でも好きなだけ、お前に与えてやるから」

頭に手を添えられ、また口づけを施される。
中できゅうきゅう締付けが起こり、騎士に内壁を擦られる度、何度も達してしまう。

「ベリアス、もう、ちょうだい、あんたの出して……!」

気持ちよくて頭がおかしくなりそうだ。
何が起きているのか分からず、懇願することしか出来ない。

やがて騎士の精液が中に吐き出される。
二度目の味は変わらぬ濃厚さで、俺の全身に染み渡っていく。

ああ、今日はなんて幸せな日なんだ。
こんなにたっぷり極上の精気を与えられるとはーー

しかし、恍惚とする俺の体に、突如異変が起きた。

「……んっ……ん、く……あ、ああ、ぁ……」

体がガクガク震え出し、頭の芯がぐらりと回る。
肩の力が抜け、腕もだらんと下がった。

なんだ?
さっき精飲した時よりも、強い目眩が襲ってくる。
それに下腹部が、焼けるように熱い。
目線を落とすと、淫紋の刻印が薄っすらと消えかかって見えた。

「おい、ルニア」

異変を感じたのか、ベリアスの低い声が耳に鳴る。

「あ、ああ、変だ、なに……中が、熱い……」

力なく呟いて、騎士の胸に倒れ込む。
目の焦点が合わないまま、肩越しにぼうっと見つめる。

「どうした、ルニア、しっかりしろ!」

珍しくベリアスが焦っている。
騎士の大きな声を遠くで聞きながら、俺は意識を手放した。



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